頼れる期待の若手、松井孝充の成長

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

今シーズンの25号車の活躍を語る上で、“松井孝充の成長”という部分も欠かせない。

昨年から25号車のドライバーとしてデビューし、今年で2年目だが、着実に存在感を増してきているドライビングを披露している。

彼の活躍を象徴するのが第4戦SUGOでの予選Q2。激化するポールポジション争いは1分18秒の壁を破る戦いに。その中で1分17秒9を記録するライバルを尻目に、松井はなんと1分17秒499をマーク。これにはピットで見守っていた土屋も驚いていた。

これで終わりかと思われたが、さらにアタックを続行。自らのタイムを0.006秒上回りポールポジションを勝ち取った。

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

決勝では昨年の優勝での再現を目指すべく最後までトップ争いを繰り広げたが、#31TOYOTA PRIUS apr GTとのバトルに破れ2位フィニッシュ。それでも、昨年までは土屋が引っ張ってきている印象だったが、特に今年に入ってから松井の速さが際立っているのが随所で見られた。

これについて松井は、SUGOの前の週に開催された全日本F3選手権(Nクラス)にスポット参戦し見事クラス優勝。結果もそうだが、その参戦自体がきっかけになったという。「今の自分を何か変えなきゃという思いで無理して参戦しましたが、その経験が走りもそうだし色々な面で勉強になって、自信にもつながりました」という。

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

また、松井の育成という面に関して土屋は「彼には今越えるべきハードルというものを設定して毎回戦っています。その先にはGT500へのステップアップやプロのレーシングドライバーになるということも見据えています。今回は予選のアタックを見ていて“これはもうGT500で通用するだけの速さは到達しているなと感じました。あとは、それを常に発揮できるかというのと、決勝での強さとかですね。今回彼は追い抜きはできたけどブロックができませんでした。ただ、今回のレースで彼も学んだと思うので次回までに修正してくると思います。その辺の修正能力はすごいですからね」と、まだできていない部分があると言いつつも、彼の実力をしっかり認めて信頼しているなというのが感じられるコメントだった。

先日の第5戦富士では、66kgと重いウェイトを積みながらも予選ではQ2に進出。決勝はポイント獲得とはならなかったが、トップから3ポイント差でランキング2位をキープ。十分にチャンピオンも狙えるポジションにつけており、この後のレースも目が離せない。

 

「技術を継承していく」…その熱い想いがチームの団結力に

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

チームを再び立ち上げ、わずか1年半でチャンピオン争いに絡む活躍を見せているVivaC Team TSUCHIYA。

もちろん、レースをしている以上は結果にこだわることは当然だが、チーム代表である土屋武士は一貫して大事にしているコンセプトがあるという。

それが「次の世代の職人を育てる事」だ。

その一つが松井の成長であり、またチームスタッフ全員の成長。そこで築き上げられた少数精鋭の集団で大所帯のワークスチーム、トップチームを打ち勝っていく。これが彼らがSUPER GTに参戦している真の理由のひとつ。

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

エンジンパワーなど面でみればマザーシャシー勢は劣っている部分が多いが、そこは知恵を振り絞り、職人たちが持てる技術をフルに生かしてマシンをより良いものにしていく。

その取り組みが今のレースに合っているのか、そうでないのかは、ここでは答えは出ないのかもしれない。

しかし確実に言える事は、その積み重ねが、今のランキング2位という「結果」が示している。

 

まとめ

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

ここ数年の結果を見ても分かる通り、近年のGT300クラスはFIA-GT3マシンの方が有利と言われている。実際にストレートスピードなどを見ても、欧州勢の方が優っているのが一目瞭然だ。

でも、そんなマシンで戦わずに、挑戦することを重要視するのが、このチームの最大の特徴。

確かに、戦闘力のマシンを用意すればもっとチャンスは出てくるかもしれない。でも、それで勝利を手にするよりも、日本の自動車産業を支えてきた「技術屋集団」が腕と知恵を振り絞って作り上げたマシンで、「強い強い」と騒がれているメーカー直系チームを打ち破る。

その方が、携わっている側もやりがいがあるし、観ている側もワクワクする。

そんなレースを、今年も彼らは魅せてくれているのだ。

レース後、土屋武士のもとに取材に伺うと「自分達がやれることを精一杯やるだけ」と話してくれるが、その奥にはシリーズチャンピオンへの秘めたる闘志を燃やしているのは確実だ。

いよいよ今月末の鈴鹿1000kmから始まる後半戦。シリーズチャンピオン獲得に向け、もっと熱い走りを見せてくれることだろう。

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita