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スーパーフォーミュラ岡山ラウンドで起きた中嶋一貴のグリッド間違い、その真相と“腑に落ちないオフィシャルの対応”

9月10・11日に岡山国際サーキットで行われたスーパーフォーミュラ第5戦。そのレース1で珍事が起きた。ポールポジションを獲得した中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)がスタート直前にグリッドを間違えるという珍事が発生した。ポールポジションがグリッドを間違えるというのは過去にほとんど例がなく、またチャンピオン経験者が想像もつかないミスを犯したとあって、ネット上には様々な原因の憶測などが上がった。今回はなぜ間違えてしまったのか?について詳しく振り返っていこうと思う。

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

大混乱となったRace1スタート

今回は予選と決勝が1日で行われ、それを土・日の2レース制として開催するという変則的なスケジュール。ドライバーやチーム、またそれを取材するメディアやレース運営に携わる関係者にとっては大忙しの週末となった。

10日朝に行われたRace1予選で一貴が今季初ポールを獲得。意外にも2014年の最終戦以来の久しぶりのポールポジションだった。

通常通りのスタート進行からフォーメーションラップに向かった一貴だが、その後に問題が発生する。

スーパーフォーミュラ公式映像より

本来なら右端のグリッドにつかなければいけないが、行き過ぎてしまった(スーパーフォーミュラ公式映像より)

普通にグリッドに戻ってきたのだが、本来の1番グリッドを越えたところで停車してしまい、2番手の国本雄資、3番手のストフェル・バンドーン、5番手の塚越広大もつられてグリッドを行き過ぎてしまった。

これにより、スタートディレイのボードが出され、手順仕切り直しになるはずだったが、なぜか一貴はもう一度フォーメーションラップへ向かう混乱が発生。次に全車が戻ってきたところでエンジン停止の指示が出され、手順やり直しという流れになった。

一連の混乱を作った一貴は最後尾に回され、改めてスタート5分前からフォーメーションラップ、スタートへと向かっていった。

 

原因は「一貴のミス」

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

国内トップフォーミュラでも2度タイトルを獲得し、F1も参戦。現在はWECでも活躍している一貴がグリッドを間違えるはずがない。

この光景を見ていたファンは、サインガードで待機しているコースオフィシャルが持っていた停止ボードの出し方が悪かったのではないか?など、運営側への批判がネット上でも飛び交っていた。

しかし、実際に一貴に話を聞くと「完全な自分のミス」だったという。

「グリッド行き過ぎちゃいました。いつもの通りの感覚で行って、スタートラインが目に入っていたので“そこら辺かな”と思いついきました。最後のバーンアウトが終わってグリッドについたら、いつもとグリッドの形が違うなと感じで“あれ?俺どこにいるんだ?”と、そこで行き過ぎたと気づきました」

写真はレース2のもの。スタートラインから1番グリッドまで、これだけ距離がある

写真はレース2のもの。スタートラインから1番グリッドまで、これだけ距離がある

確かに、この岡山国際サーキットのポールポジショングリッドは少し特殊な位置にある。通常ならスタートラインと呼ばれる白ラインのすぐ手前にグリッドがあるのだが、ここはスタートラインの真上にシグナルがあるため、それを確実に見えるようにするためスタートラインから少し離れた場所からグリッドが始まっていく。

さらに、岡山国際サーキットの場合はSF用(スタンディングスタート)の前にスーパーGT用にグリッドがいくつかある。その印も残ったままとなっており、一貴が間違えて止まる原因になってしまったと考えられる。

あと、サインガードでそれぞれの止まる位置を示す看板をオフィシャルが持っていたというのだが、一貴は「ちゃんと看板を見ていればよかっただけなのですが…正直見ていませんでした。自分のミスなのでヘコむことはなかったですが、チームには申し訳ないです」とのことだった。

さらに状況を説明していく中で、こんなことも。

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

「言い訳をすると、ここはグリッドに番号が書いてなくて、看板を見ていないと(グリッドの位置が)分からないといえば分からないんですよね」

この取材後に確認してみると、実際には数字は書かれているのだが、ペイントが削れて視認が難しい状態になっていた。そのためドライバーの目線からでは「書いていない」と認識してしまっていたのかもしれない。

いずれにしても、原因は「一貴のうっかりミス」ということで、ネット上で懸念されていたオフィシャルの看板対応などに問題はなかった。

 

問題なのは、その後の対応

これで、一連の流れは納得いただけたかもしれないが、私が問題視しているのはその後の対応だ。

一貴がグリッドを間違えた際、シグナルタワーからスタートディレイのボードが出されるが、これと同時にイエローフラッグが振られていた。実はこれは間違いで、正解はレッドフラッグを提示しなければならない。これはレギュレーションにも記されている。

2016スーパーフォーミュラ統一規則 第31条 10.

車両がフォーメーションラップ終了後にスターティンググリッドに着いた時点で何 らかの問題がある場合には下記の処置がとられる。

1)まだレッドライトが点灯していない場合は、赤旗が示され“START DELAYED”(スタート遅延)ボードがスタートラインに掲げられる。 スターターはイエロー(またはオレンジ)ライトを点滅させる。

本来なら、これで全車エンジンを停止する流れになるのだが、イエローフラッグが出てしまったため、もう一度フォーメーションラップがスタートしてしまうという混乱を招いてしまった。ちなみにF1の場合は、何か問題があってスタートディレイになった場合「エキストラフォーメーションラップ」と言って、すぐに再スタートすることになっているが、スーパーフォーミュラでは完全に手順からのやり直しとなる。

スタートディレイボードの横で赤旗ではなく黄旗が振られている

スタートディレイボードの横で赤旗ではなく黄旗が振られている(スーパーフォーミュラ公式映像より)

もし赤旗が出されていたのであれば、この混乱はなかっただろうし、レースも余計に1周減算されることはなかった。

さらにやり直しのフォーメーションラップ再スタート時にも問題が。

原因を作った一貴は最後尾に回される。その方法は全車がグリッドを離れた後、最後尾からスタートして、隊列の一番後ろにつくというものだ。

本来なら一貴のマシンの前にオフィシャルが立ってイエローフラッグを両手に持って、彼の出発を止めることになるのだが、実際には斜め前のところで、イエローフラッグを振動提示していた。これも間違いで、逆に一貴が誤ったタイミングでスタートし、さらなる事故を招く可能性もあったのだ。

これらに関しては、正直「対応がお粗末ではなかったのか」と疑問が残る点だった。

まとめ

Photo by Tomohiro Yoshita

Photo by Tomohiro Yoshita

ドライバーも、チームスタッフも、コースマーシャルも全員同じ「人間」

そうである以上、やはり失敗してしまうことがよくある。その一つの例が今回の一貴だったと言えるかもしれない。

しかし、今回のマーシャルの件については、単なる失敗だけで済ませて良いものではない気がする。

これが1項目だけだったらまだしも、2項目以上あるということは「ルールや、その時の対応方法をちゃんと把握していない」と周りから見られてもおかしくない。

今や、国内トップフォーミュラというだけでなく、F1ドライバーやル・マン優勝経験者も多数参戦し、海外からも注目されるようになり始めているスーパーフォーミュラ。

だからこそ、こういった細かいところ、荒いところは全て潰していってもらいたいというのが、週末を取材しての正直な感想だ。

確かに簡単なことではないのかもしれないが、それを100%にしていくことが、今後の同カテゴリー、そして日本のモータースポーツの真のレベルを世界に証明していくことになるのだから。

Writer Introduction
Tomohiro Yoshita

フリーのモータースポーツジャーナリスト。サーキット取材は2011年からスタートし、最近ではSUPER GTスーパーフォーミュラを全戦取材。この他にもF1をはじめとする海外レースや、2輪レースもカバー。レースに関する記事だけでなく、サーキットに来場するファンに役立つ情報発信も展開しています。

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