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国本雄資、待望のスーパーフォーミュラ初優勝!Race2快進撃につながった「2つの言葉」とは?

今シーズンは毎戦優勝ドライバーが異なるという、異例の接戦となっているスーパーフォーミュラ。第5戦岡山のRace2を制したのは国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)だった。この週末は走り始めから他を圧倒するような速さはあったものの、決して順風満帆とは言えない2レースの流れだった。その中で掴み取った初優勝。そこに行き着くまでには、彼の原動力となった「2つの言葉」があった。

©TOYOTA

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Race1での「残念」

Photo by Tomohiro Yoshita

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いよいよ後半戦となる第5戦岡山。国本のレースウィークは「残念」の言葉から始まっていった。朝のフリー走行では調子よくトップタイムをマーク。このまま予選にも期待が高まった。

今回は1レース目のグリッドを決める予選で、20分間の計時予選。途中に赤旗中断もあったが、最後は激しいタイムアタック合戦となりトップ18台が1秒以内という接戦。国本も好タイムを記録するが、わずか0.112秒届かず2番手だった。

Photo by Tomohiro Yoshita

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「非常に残念です。朝から感触がよくて、予選は(ポールを)狙っていたし、一番のチャンスだったのですが…」と、フロントロースタートでも1番ではなかったということに対する悔しさが伝わって来る記者会見だった。

今回は予選も決勝も1日で行い、それを2日続けて2レース行うという変則的なもの。わずか数時間後には決勝グリッドについた。

ここで、国本にとっては一つラッキーなことが発生する。ポールポジションの中嶋一貴がグリッドを間違えるというミスを犯し、最後尾スタートに。

これで実質的に一番前からのスタートというチャンスを手に入れたのだ。

Race1は途中のピットストップ義務がなく、狭い岡山国際サーキットの特性を考えるとスタートでトップに立てば、そのまま優勝できるチャンスも格段に上がるのだ。

しかし、スタートは隣にいたストフェル・バンドーンの方がよく、トップを奪われてしまう。国本もなんとか逆転を狙うが、序盤からバンドーンは異次元のペースで後続を置き去りに。最終的に4.7秒ものリードを築いてスーパーフォーミュラでの初勝利を飾った。

その後の記者会見。国本のコメント一言目は朝の予選後に聞いたものと全く同じだった。

Photo by Tomohiro Yoshita

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「非常に残念です。あのような形でスタートすることができたので、すごくチャンスだと思ったんですけど、スタートでうまくクラッチのバイトポイントを探すことができなくて、動き出しがすごく遅れて、前に行かれてしまいました。明日は優勝できるようにしっかり準備したいです」

国本は「残念」という表現をしていたが、その表情は「とにかく悔しいんです」というのが伝わって来るほど。レーシングラインではないイン側のグリッドだったため、少しスタートダッシュが不利になるのでは?という記者からの質問に対しても「それは影響なかった。とにかく自分のスタートがよくなかった」の一点張り。いつもは記者会見などでも淡々とコメントをすることが多かった国本が、ここまで悔しい表情をするのは初めての事。それだけ、このレースにかけていたことは間違いないのだろう。

©TOYOTA

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しかし彼は、悔しさを力に変えて翌日のRace2で他を圧倒する走りを見せる。

5番手からスタートすると、いきなり1周目でピットインしタイヤ交換義務を消化。トップから大きく離されてしまうが前方にマシンがいないため自分のペースで走れる。そこに国本はかけていたのだ。

ピットアウトすると、一気にペースアップ。上位陣が1分18秒台で走行する中、国本をはじめ1周目にピットインしたメンバーは1分17秒後半を連発するペースで追いかけていった。

そしてライバルたちがピットストップをしている間に順位を上げ、ついに32周目にトップ浮上した。

同時に他車のアクシデントによりセーフティカーが導入され、後続との差が縮まってしまうが、レース再開後は一つのミスもなく、トップを死守。

©TOYOTA

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念願の初優勝を飾った。

実は2013年のJAFGP富士スプリントカップで優勝経験はあるのだが、公式戦では初めて。シリーズ参戦6年目、45レース目での勝利となった。

 

Race2での「感謝」

Photo by Tomohiro Yoshita

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レース後、パルクフェルメに帰ってくると笑顔でガッツポーズを繰り返していた国本。ここで、今週末の彼を支えていた「もう一つの合言葉」が出てくる。

まずJスポーツのインタビューに答えた国本。最後にはTVカメラにサインをするというのが毎戦行われているが、国本はそこに自身のサインに加えて書いた言葉があった。

 

それが「感謝」だ。

 

これまでも、勝利を目指し第一線で活躍してきたが、特にスーパーフォーミュラでは結果が伴わず苦しいレースが続いていた。

2010年に圧倒的な強さで全日本F3選手権でシリーズチャンピオンを獲得し、翌年ステップアップ。まだ当時のセルモ・インギングは1台体制。それでも2度の表彰台を獲得するが、ミスの少なからずあるレースが続いた。

2012年からチームは2台体制となり、シリーズでも優勝経験のある平手晃平が加入。必然的に彼がエースという立場になり、どうしてもスポットライトが当たらない日が続く。2013年になっても結果が出ない我慢のレースが続かなかったが、前述の通り富士スプリントカップで優勝。本当のところは定かではないが、もしこの勝利がなければ、翌年以降のチームのシートはなかったかもしれない。

©TOYOTA

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しかし、2014年以降もシリーズ戦では勝利に恵まれず、昨年は僚友の石浦宏明が2勝を挙げチャンピオンを獲得。またしても国本は脇役に回ることになってしまった。

この状況を何とか脱しようと、今年の国本はシーズンインのアプローチを変更。今年はSUPER GTのチーム監督である脇阪寿一氏とともにトレーニングを開始。レースに向かう心構えから私生活まで全て見直したという。

その過程の中で、自分が困っている時、苦しんでいる時に支えてくれる人がいるということが、どれほど力強いことかというのを感じ、「感謝」の気持ちを重要視するようになる。

迎えた開幕戦の鈴鹿では、予選から2番手につけ、決勝もそのまま2位でフィニッシュ。実は、そこで得た賞金の一部を熊本地震で被災した方々への義援金として寄付することを決めたのだ。

Photo by Tomohiro Yoshita

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当時の国本のコメント

「シーズンオフから何か変わらなきゃいけないと思い、トレーニングや私生活を変化させてきました。その中で困っている時にいろんな人の助けや支えがあって本当に感謝していますし、今度は自分が困っている人を助けたいと思いSAVEJAPANを通してスーパーフォーミュラ開幕戦で獲得した賞金を寄付させていただきました。被災された方に1日も早く復興してほしいです」

実は、この第5戦は当初大分県のオートポリスで開催されるはずだった。しかし、熊本地震の影響でサーキット施設や周辺道路、施設が被災。やむなく大会中止が決まり、代替えとして岡山での開催となった。

「いつも支えてくれている人、お世話になった九州の人たちのために何か恩返しをしたい」という思いで、今季戦っていた国本。奇しくも、開催予定だった日に初優勝という、これ以上にない最高の結果を残したのだ。

 

2レースで大量得点を獲得、このままチャンピオンの可能性も?

Photo by Tomohiro Yoshita

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こうして最高の形でレースウィークを締めくくった国本。合計23.5ポイントでポイントランキングトップに浮上。2位の石浦に対して4.5ポイントのリードをつけている。

今年は3ポイント以内に5人がひしめくなど、例年では有りえないほど接戦となっているスーパーフォーミュラ。その中で、この「4.5ポイント」というのは大きな差といえる。

そして、アプローチを変えて臨んだシーズンで明らかに各レースの結果も良く、第3戦富士のトラブルによるリタイアを除き全戦でポイントを獲得。しかも後半になるにつれて尻上がりに調子を良くしている。

もちろん、まだ2大会3レースも残っているため、チャンピオン争いの行方はまだまだ分からないが、確実に「国本が有利」という雰囲気になり始めている。

 

まとめ

©TOYOTA

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今回、Race1で悔しい思いをし、そのパワーでRace2を勝利。レース後の対応も、彼が今大事にしている「感謝」という言葉を忘れずに口にしていた。

ここまでくるとマシンの出来やドライバーの技量ではなく「流れ」が重要になってくる。

その中で、確実に「チャンピオンにつながる流れ」をつかんだような国本のレースウィークだったように感じる。

もしかすると、この岡山での週末が今季のチャンピオン争いを決定づける“ターニングポイント”になったかもしれない。

 

Writer Introduction
Tomohiro Yoshita

フリーのモータースポーツジャーナリスト。サーキット取材は2011年からスタートし、最近ではSUPER GTスーパーフォーミュラを全戦取材。この他にもF1をはじめとする海外レースや、2輪レースもカバー。レースに関する記事だけでなく、サーキットに来場するファンに役立つ情報発信も展開しています。http://www.kansenzyuku.com

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