ザルコ、モルビデッリらと激闘

©MOBILITYLAND

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注目の決勝レース。予選での悔しさを晴らすべく1周目から全開で攻めていく。スタートを上手く決めて4番手に浮上すると、逆にスタートで出遅れたザルコを2周目に捉え3番手に。早くも表彰台圏内に進出した。

今週末好調のルティが先頭に立ち、いきなり1分51秒前半のペースで周回。中上も必死に食らいついた。

「好スタートが切れて、いい位置にいたし、2周目にザルコもパスしました。厄介だったのは、ルティがトップで出ちゃったので、1周目から高ペースだったので、何とか食らいついて必死に離れないように走っていました」

序盤こそ、少し離されている感じだったが中盤に向けてコンマ数秒ずつではあるが詰めていき、11周目にはついに2番手を走るモルビデッリの後方へ。このまま2番手を狙うべく、さらに間合いを詰めていったが13周目の3コーナーでわずかにミス。止まりきれずに大回りをしてしまいザルコに3番手の座を明け渡してしまった。

「モルビデッリの後ろにいて、その周だけ彼のブレーキングが少しだけ早くて、一瞬迷ってインに行こうとしたんですが、ぶつかるなと思ってバイクを外側にふって何とか止まったという感じでした。(レースを終わって振り返ると)あれが痛かったですね。ずっと前とは同じタイムで走っていて、ミスした後のペースも変わらなかったので、ちょっとザルコに譲っちゃったかなという感はあります」

確かにAnalysis by Lapを振り返ると上位4台は常に1分51秒前半で走行していたが、13周目の中上だけが1分52秒151。それまでのペースから行くと0.6秒程度ロスしたことになる。

タラレバではないが、あのミスがなければ表彰台の可能性は非常に高かった。もっというと2位や優勝という可能性もあったのかもしれない。

 

「あのまま何もせずに終わりたくなかった」、意地で攻めていったファイナルラップ

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思わぬ形で3番手に浮上したザルコは、すぎにモルビデッリを抜いて2番手へ。そのまま先行するルティに近づいていった。

これで3位争いはモルビデッリと中上の一騎打ちとなる。その時点で残り周回は10周を切っており、逆転するチャンスも限られ始めていた。

「終盤は(トップと)ペースも距離も離れていたのですが、このまま何もせずに終わったら、絶対に後悔するな思って、モルビデッリだけは(追い抜く)トライはしようと思いました」

舞台は中上の母国日本GP。スタンドには彼を応援するファンが大勢集まっている。その中で目標としている表彰台に何としても上がらればならない。

その強い思いが、1周1周の彼の走りに追い風となって影響していった。

18周目/モルビデッリ1分51秒450、中上:1分51秒449

19周目/モルビデッリ1分51秒616、中上:1分51秒343

20周目/モルビデッリ1分51秒849、中上:1分51秒793

21周目/モルビデッリ1分51秒604、中上:1分51秒640

22周目/モルビデッリ1分51秒852、中上:1分51秒773

ほんの僅かずつではあるが、少しでも縁石ギリギリの走りを見せ、ブレーキングでもギリギリを攻めた。

「このまま終わらせたくない」彼の気持ちが、そのまま走りに出ていた終盤戦。

そして0.098秒差まで迫ってファイナルラップへ。

コース後半のS字の一つ目でインに飛び込み、一瞬は前に出るが、そのまま次の右カーブでモルビデッリが抜き返す。2台は並んだままV字に飛び込んでいき、中上は狭いスペースでも引くことなくオーバーテイク。この瞬間、サーキット全体が揺れたかのような大歓声に包まれた。

しかし、ダウンヒルストレート終わりの90度コーナーでモルビデッリが再びインに飛び込んで逆転。それでも中上は諦めずに最終コーナー入り口でアウト側から一瞬前に出る。しかしモルビデッリの意地でイン側を守り、中上は結局4位のままゴール。2人の差は、わずか0.227秒差だった。

「ルティとザルコは僕とマシンとキャラクターが違うので速いところ遅いところの違いがあるのですが、モルビデッリとはキャラクターが似ていて、同じような動きをするので、どこで抜こうかなと考えていました。でも、最後は“えいやー!”の気持ちで行って、残り半周でしたけどすごいバトルになりました」

Photo by Tomohiro Yoshita

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レースを終え、メディアからの囲み取材に応じた中上。やはり悔しい気持ちが強く。出てくる言葉、一つ一つが重たかった。

「そうですね…一言では言い表せないですけど、今はものすごい悔しいです。競り負けた悔しさもあるし、表彰台に上がれなかった悔しさもあります。その反面、面白い盛り上がるレースはできたと思いますし、悔しい半分やりきった気持ちはあります」

このレースを観ていたファンも「惜しい…」「悔しい…」「頑張った」と色々な感想をお持ちだろうが、それでも最終コーナーまで諦めずに攻めきった中上を最後は讃える拍手を贈っていた。

まとめ

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金曜日では上位に食い込んでいたが、土曜日になってザルコをはじめトーマス・ルティ、フランコ・モルビデッリが頭一つ抜け出た様子。マシンの仕上がり面を考えても、もてぎでのパフォーマンスは予選での7番手あたりが妥当なポジションだったと言えるかもしれない。

それでも、中上は優勝・表彰台の獲得するべく本来のパフォーマンスの100%以上を引き出して毎周攻めていた。13周目のミスで諦めるのではなく、最優コーナーまで追いかけ続けた。

残念ながら、今年も母国での初表彰台は叶わなかったが、確実に次につながるレースをみせてくれたことは間違いない。

そして、最後に中上自身も「残り3戦ありますし、必ずまた勝てるように頑張ります。そして、来年は強くなって(もてぎに)戻ってきたいですし、来年は…絶対勝ちたいです」と、力強く宣言。

2016年のMotoGPも残り3戦。彼なら、そのうちのどこかで、また素晴らしいレースを必ず見せてくれそうだ。