対スズキワークス用決戦兵器、ストーリアX4出撃せよ!

出典:http://storia-x4.com/

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他にもベース車が軽自動車では無くなった事で大幅にトレッドが拡大され、ホイールベースとトレッドという前後左右のタイヤ間幅の比率が最適化された事で運動性を確保。

車重が増えた分は、JC-DETのパワーにモノを言わせたのです。

デビュー戦は1998年4月の全日本ダートトライアル第1戦でしたが、1,000ccまでのマシンで戦われるA1クラスでアルトワークスを下して見事デビューウィン!

続いて全日本ラリー4WD部門にも第3戦から出場したストーリアX4ですが、デビューウィンこそ逃したものの初戦は2位、その後もアルトワークスと同じAクラスで3勝を上げます。

対スズキスポーツ用決戦兵器として、幸先の良いスタートを切ったのでした。

 

信頼性との勝負を経て、黄金時代へ

出典:http://www.sekinen.com/

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その参戦初期、基本的に2代目シャレード以降と同じミッションや、軽自動車と同じサスペンションが脆弱であり、対策が取られる以前の初期は信頼性不足にも悩まされした。

結局スズキスポーツがアルトワークスによるワークス活動から撤退してしまうまで、ストーリアX4がリードを奪うには至らなかったのです。

しかし、スズキスポーツでワークスドライバーとして活躍していた原宴司選手がストーリアX4に乗り換えた事もあり、2000年はプライベーター勢のアルトワークスを全く寄せ付けず、特に全日本ラリー4WD部門Aクラスでは全勝を飾りました。

2001年~2005年は全日本ダートトライアルA1クラス(2003年以降N1、2005年はN2クラス)、全日本ダートトライアル4WD部門Aクラスで全勝。

まさにこの時期は黄金時代であり、2006年から後継のブーンX4が登場して以降も数多くのストーリアX4が戦い続けます。

その戦いは、ダートトライアルの規則改正で戦えるクラスが無くなる2013年まで続いたのでした。

 

海外でも活躍したストーリアX4

純然たる日本国内専用車、というより全日本ラリーと全日本ダートトライアルのためだけに開発されたと言って良いストーリアX4だけに、その当初海外での知名度はほぼ皆無でした。

わずかに、昔からの海外ダイハツマニアがシャレードやミラの後継として個人輸入していた程度です。

しかし、1999年12月にリリースされたプレイステーション用ゲーム「グランツーリスモ2」に、ダイハツ最強のマシンとして実装された事で、様相が一変。

「何だこの小さい車は!他のコンパクトカーと全然スケールが違うじゃないか!え?日本でしか売ってないの?」

というわけで、一躍その名を世界中で知られるようになったのです。

そのため、海外でも個人輸入を試みる人が増えて、複数のストーリアX4が海を越えました。

代表的な例を紹介しましょう。

 

ヨーロッパのオートクロスで活躍

提供:Dane Gross(UK)

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日本で言うジムカーナは、欧米では「オートクロス」あるいは「オートスラローム」と呼ばれていますが、その小排気量クラスに参加するためイギリスやドイツで購入したユーザーがいます。

何しろライバルがミニクーパーなどですから、圧倒的なパワーでブッチギリだったそうです。

 

ロシアのドラッグレースで活躍

提供:Ilyas(ru)

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日本の中古車が数多く輸出されている上に、雪国のイメージがあるロシアもまた、ストーリアX4が活躍したステージです。

ドラッグレースで「打倒DC2(インテグラタイプR)」に燃えるユーザーがフルチューンして挑み、最終的に見事勝利を収めたと言われています。

 

国際ラリーで活躍したのは、実は1,300cc版ストーリア

国内外で活躍したストーリアX4ですが、意外にも国際的な公式競技会で活躍した記録はありません。

生産台数があまりにも少なく、FIA(国際自動車連盟)が定める最低参加台数を満たさなかったからです。

そのため、ラリージャパンなどWRCで活躍するため、最低参加台数を満たしていたストーリア(海外名シリオン)の1,300ccエンジン搭載版FF車、M101SでFIA/JAF公認を取りました。

ラリージャパンや第19回以降の日本アルペンラリーなど、国際格式ラリーに参戦したのは、実はストーリアX4ではなく1,300cc版だったんですね。

 

ストーリアX4は「受注生産」ではなく「計画生産車」

出典:http://www.jrca.gr.jp/

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ところで、主にナンバー付き車両の競技会で活躍するために開発されたストーリアX4は、その全てが市販車でした。

DRSワークス車両すらも一度新東京ダイハツで購入という形を経て納入されているので、ベース自体はワークス車でも一般市販車でも変わりません。

ダイハツ工業としては純粋に競技用マシンと考えており、一般向けに熱心に売り込んだわけではありませんが、それでも希望すれば販売はする、としていたのです。

それゆえ「受注生産」と誤解される事もありますが、ペラ1枚裏表とはいえ少なくともリーフレットは最初から存在していました。

1999年以降は年度初めから工場での生産計画に月産10台程度で組み込まれ、注文が多くバックオーダーが貯まる年はさらに途中で増産されています。

とはいえ、途中まで内外装を組み込んだ後でラインから抜かれ、専用品を使うECUはじめパワーユニットは手作業で組み込まれるなど、完全なライン生産ではありません。

そのためか細かい仕様が完全に統一されておらず、後述する逸話が生まれます。

 

生産台数はわずか800台足らず

ストーリアX4はダイハツ工業の電子カタログ上で車体番号が52号車から829号車まで存在しており、続き番号で777台が生産されたと言われています。

2度のマイナーチェンジを含む6度の改良を受けているため、一口に「ストーリアX4」と言っても、実は大別すると7種類ほどあるのです。

ごく初期の車両

出典:http://storia-x4.com/

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・JC-DETの原型、JB-JLの面影を残した「プロトタイプJC-DET」的なエンジン

・エキマニも後のものとは異なり、タービンとの接合部も4穴

・日産マーチ用社外品メタルクラッチ(180φ)を標準装備

・ほとんどがDRSワークスおよび、それに準ずるプライベーターに供給

 

初期販売車両(1998年)

出典:http://storia-x4.com/

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・標準装備メタルクラッチの圧着力が若干抑えられる

・一般のストーリアがベースとなり、ドアスピーカーやオーディオ配線あり。

・X4専用ステレオデッキ初対応

・途中からタービンと遮熱板が専用品に変更され、ブースト調整が容易になる

・同、ターボホース強化

・同、通常のノンアスベストクラッチが標準になる

・同、4WDのリア駆動がRBC(ロータリーブレードカップリング)からVCU(ビスカスカップリング)に変更(※ただし、なぜかRBCがついていた例もある)

・同、エアコン装着を容易にするため一部配管変更

 

初期販売車両(1999年-2000年)

提供:DCCS

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・内外装変更

・トランスファー内ベベルギア、3速ギア強化

 

中期販売車両(2000年-2001年)

Photo by 713R

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・内外装変更(バックランプが左右コンビランプに埋め込まれ2灯式に)

・途中からトランスファー容量拡大

・同、3速ギア強化

・同、シフトフォークを2点支持から3点支持へ変更

 

後期販売車両(2002年前半)

出典:http://www.jrca.gr.jp/

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・内外装ビッグマイナーチェンジで一新

 

最終販売車両(2002年後半-2004年)

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・排ガス対策でECUや燃料系の見直しが行われ、型式はGF-M112SからGH-M112Sへ。

・ECUが20万円以上する高額品から、他車種と共通の安価なものへ変更

・ブーストリミッターが2.5kから1.55kへと変更

・サスペンションが通常モデルと同じものへ

・途中でトランスファー容量が小さくなる

・同、3速ギア強化

・同、エンジンヘッドがマグネシウムからアルミニウムに変更

 

市販されたストーリアX4の逸話

前述の通り、純然たる量産乗用車というより「モータースポーツ用」に特化しているため、通常の生産体制やクオリティ、知名度などが若干異なり、以下のような国産車ならぬ逸話が残っています。

Photo by 713R

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・GF-M112Sでは2.5kまでブーストをかけられたが、実はリミッターが無いだけで1.7k以上ブーストをかけても燃調マップが無く、その場の勢いで動いているだけでいつ壊れるかわからなかった。

・それでもブースト1.7kで吸排気チューンを行えば、シャシダイ上で最大170馬力程度を記録。

・工場出荷値はブースト1.2k±0.2のはずだが、ブースト計をつけたらそれ以上かかっていた個体も。

・ドリンクホルダーやラゲッジのスペアタイヤカバーなど、標準装備外品がなぜかオマケのようについてくる個体があった。

・発注できない純正部品の噂がある。

・時期にもよるが、納期は平均して3~6ヶ月と長く、ビッグマイチェン前にオーダーしたらマイチェン後に生産され、全然違う顔のストーリアX4が納車された人がいた。

・車体よりエアコンの納期が長く、納車後にエアコンをつけた人も。

・ストーリアX4の存在を知らないディーラーに、「改造車お断り」と言われた。

・見た目は普通のコンパクトカーのため、営業車やお寺の檀家回り用など快速業務用車として重宝されたケースも。

・ダイハツ車専門ジムカーナ大会「ダイハツチャレンジカップ」には大挙して集まる上に、マフラーを換装している個体が多かったため、参加クラスが近づくと独特の重低音ですぐにわかった。

 

中古車購入時の注意

出典:http://www.jrca.gr.jp/

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中古車の程度はあまり気にしない方がいい

元々生産台数が少ない上にモータースポーツで酷使されて失われた車両も多く、現役で競技に使っている人の中にはスペアで複数台所有している方もいます。

そのため、比較的新しい割に現存台数は少なく、知名度も低いため中古車相場はだいぶ落ち着きました。

そのストーリアX4を中古車で購入する際ですが、状態良好な個体を探そう、とはあまり思わない方がいいでしょう。

年月を経るうちに内外装やパワートレーンのカスタマイズを受け、ノーマルを保っている個体が少ないため、あまり細かい事を考えても無駄なのです。

後述のように現時点では部品が出ますから、安く買って徹底的に整備するのもひとつの選択です。

 

部品はダイハツ他車からかなり流用可能

幸いにしてエンジンとECUを除くほとんどが同時期のダイハツ軽自動車(ミラやムーヴ、コペン)から流用可能ですし、専用品であるエンジンやクロスミッションのパーツも、純正品や社外品がまだ出ます。

4WDシステムもミラなどと同じ生活4WDですし、社外品の強化VCUも購入可能です。

 

オーバーサイズピストンは無いと思うべし

オーバーサイズピストンだけはほとんど見つからないため、エンジンブローの際にボアアップで対処する際は、同じダイハツのKF-DETか、スズキのF6A用ピストンの流用です。

 

最大の弱点はミッション

また、ストーリアX4最大の弱点はミッションです。

専用クロスミッションと4WDシステムの相性が悪いようで、X4以外でも同じクロスミッション搭載4WD車がミッションブローするケースがあり、後継のブーンX4では各ギアの減速比が変更されているほどです。

クロスミッションですと、タイヤやLSDとの組み合わせ次第ではかなり寿命が短くなります。

(そのため、コペンなどに使われる「セミクロス」と呼ばれるミッションか、それ以外の通常ミッションに換装すると長持ちします)

主に壊れるのは3速ギアで、亀裂が入るなどして崩壊が始まると、猫が鳴くような「ミャー」という独特の音がしますから、その鳴き声が聞こえたら即交換です。

 

伝説を間に受けてブーストを上げない

ストーリアX4と言えば、「ブーストを2.5kまで上げられるとんでもないクルマ」という伝説が先行しますが、前述した通り正常動作するとされているのは1.7kまでです。

モータースポーツでは壊れるのを覚悟で限界までブーストを上げる例はありますが、そこまでリスクを背負わなくとも十分速いですから、ピストンが溶けてエンジンブローしてから泣く前に、ブーストを下げましょう

中古車を買ってそれ以上上がっていたら、ECUチューンでもしていない限りすぐ下げるべきです。

排ガス対策後のGH-M112Sが1.55kでブーストリミッターを効かせているのは、正解だと思います。

 

まとめ

いかがでしたか?

見た目が「X4」ステッカー以外はストーリアのビジネスモデルと全く同じなため、

「たかだか軽自動車のエンジンを少し排気量アップした程度のコンパクトカーでしょう?」

と思う人もいるかもしれません。

しかし、その「羊の皮を被った狼ぶり」がまた魅力的で、「通常では路線バスに負ける発進加速」と、「超どっかんターボによる凄まじい全開加速」というギャップは、現在の車ではなかなか味わえません。

緻密な制御をしているらしいエンジンコンピューターを除けば、電子制御アシストが全く無い野蛮なモンスター、20世紀ダイハツ最後のリトルダイナマイトというべきストーリアX4。

今やモータースポーツでは活躍するステージもほとんど無いため、見かける機会も少なくなりましたが。

一度でも乗る機会があれば、車好きを相手に伝説のマシンはいい話のタネになりますよ!

 

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