FIA ヒストリック・ヒルクライム・チャンピオンシップ(HHCC)

 

4月にオーストリアのレヒベルグで開幕し、ヨーロッパ中を巡り9月にイタリアトスカーナ地方のキャンティで閉幕する全10戦の選手権です。

そのシリーズ名からもわかるようにヒストリック、つまりクラシックカーのみで争われるシリーズです。

 

出典:http://www.fia.com

 

博物館に飾られていてもおかしくないヒストリックカーから往年のF1マシン、グループCカーまでが一堂に会し、丘を駆け上がる姿は迫力満点!

しかし、古ければどんなマシンでも出場できるわけではなく、FIAに認可されたマシンのみが出場可能となっています。

また、このシリーズでは5つの年代別にカテゴリー分けされているため、非常に白熱した争いがみられます。決してパレードランではなく、本気の走りです!

 

カテゴリー1

 

カテゴリー1は、1919年〜71年の車両が出場します。

その中で、エンジンの排気量や一部出場を許されていないフォーミュラーカーなどは存在するものの、レギュレーションの幅は広くとてもバリエーション豊富なマシンが出場しています。

 

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昨年のチャンピオンマシンは、BMW 2002ti。

日本ではまずお目にかかることはない希少な2002のツインキャブレーターモデルですが、バンパーは外され完全なヒルクライム仕様にカスタマイズされています。

車は走るための物なので、発表から50年近く経つ車両を静かに保管するのではなく、今も全力で走らせていることは本当に素晴らしい姿勢だと思います。

 

カテゴリー2

 

カテゴリー2では、1970〜75年までのホモロゲーションを取得したツーリングカー、GTカーもしくは、1972年〜76年までのF3以外のレーシングカーで争われ、排気量は車両の年代やタイプごとに細かく決められています。

 

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昨年のチャンピオンマシンは、デ・トマソ・パンテーラ。

70年代に日本を席巻したスーパーカーブームの立役者の一台でもあるパンテーラは、現在もヒルクライムの世界では現役のようです。

 

カテゴリー3

 

カテゴリー3では、1976年〜81年までのホモロゲーションを取得したツーリングカー、GTカーもしくは、1977年〜82年のグループCカーを除くツーシーター、シングルシーターのレーシングカーで争われます。

 

出典:http://www.fia.com

 

昨年のチャンピオンマシンは、ポルシェ・935でした。

1976年の登場以来、グループ5(シルエットフォーミュラ)で無敵を誇った歴史的な名車935。今もヒルクライムの世界では昔のように相変わらず無敵のようです。

なんといっても、このような歴史的価値の高い名車で峠道を攻め立てられるオーナーを尊敬せずにはいられません。

 

カテゴリー4

 

カテゴリー4では、1982年〜90年のホモロゲーションを取得したツーリングカー、GTカーもしくは、1983年〜90年のツーシーター、シングルシーターのレーシングカーが出走できます。

しかし、流石にターボ全盛期のF1は出場できないようで1983年〜85年の3リッターF1は除くとされています。

 

出典:http://www.fia.com

 

昨年のチャンピオンマシンは、Osella PA9。

オゼッラは、1980年から90年にF1に10年間参戦しノーポイントのまま撤退する事になった、決して強いとは言えないチームでした。

しかし、世界プロトタイプ選手権ではクラス別で上位入賞を果たすなどしていたものの、F1での失敗が響きシャーシーをプライベーターに販売していたそうです。

その中でヒルクライムにおける抜群の速さを見出され、現在も多くのPA9が参戦し第一線で活躍しているのです。

 

カテゴリー5

 

カテゴリー5は、1919年〜90年のレーシングカーが対象となるクラスです。

1954年までの車には排気量無制限、1954年〜90年は2Lが最大の排気量として定められています。

 

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縛りが少ない分過激な車が多いようで、昨年のチャンピオンマシンは F EASTER MTX 1-03。

このマシンは、フォーミュライーストと呼ばれるソ連東側の共産圏で、かつて1970年代から80年代にかけて行われたカテゴリーのマシンで、当時シャーシーを供給していたチェコスロバキアの「メタレックス」のマシンです。

このように日本では全く聞いたことも見たこともないマイナーフォーミュラのマシンが参戦しているのも、このイベントの魅力ではないでしょうか。

 

FIA ヨーロピアン・ヒルクライム・チャンピオンシップ(EHCC)

 

遡ること1930年に始まったFIA ヨーロピアン・ヒルクライム・チャンピオンシップは、今現在も続いているFIAが主催する選手権としては最も長い歴史を持っています。

それだけに参加台数も非常に多く、各イベント150台〜250台ものエントリーがあるそうです。

 

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ヒストリックカップと同じく4月にオーストリアはレヒベルグで開幕し、9月にクロアチアで閉幕します。

全12戦がすべて異なる国での開催となっているところが、他のシリーズと一線を画していて、本気でヨーロッパ最強のヒルクライマーを決める選手権であることが伺えます。

クラス分けには、インターナショナル・ヒルクライム・カップと同じカテゴリー1、カテゴリー2のレギュレーションが適用されています。

 

カテゴリー1(市販車クラス)

 

市販車(2000cc以上)、ラリーカー(R1〜5規定)、ツーリングカー(グループA)、GTカーが出走可能なクラスです。

 

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なんと、この10年間はランエボがシリーズを制覇。

EHCCでも、他のシリーズ同様ランサーエボリューションが圧倒的な強さを誇っているようです。

昨年の優勝マシンは、ランサーエボリューションⅨでした。

 

カテゴリー2(コンペティションカー&オープンクラス)

 

フォーミュラカー(3000cc以下)、2シーター市販プロトタイプ(3000cc以下)、2シーターレーシングカー(3000cc以下)、2シーター以上のフロントガラスが原形を留めている市販車(6500cc以下)が出走可能。

 

出典:http://www.fia.com

 

こちらもIHCCと同様、NORMA M20FCがチャンピオンを獲得しています。

また、コスワース製のエンジンを載せたM20をドライブするシモーン・ファッジオ選手は2005年、2009〜2016年の計9度のシリーズチャンピオンに輝いているヒルクライム・スペシャリストなのです。

 

開幕戦 Rechbergrennen!!

 

いくら文字で説明しても、実際に見ないとその興奮は伝わりませんよね!

そこで今年のオーストリア・レヒベルグで行われた開幕戦の様子をご覧頂きたいと思います。

 

 

いかがでしたか?

プロトタイプカー、GT3マシン、往年のラリーカー、魔改造のホットハッチなど、ハチャメチャっぷりを堪能していただけたかと思います。

 

FIA ヒルクライム・マスターズ(HCM)

 

2014年に始まったヒルクライム・マスターズ。

各国で開催されるヒルクライムの国内シリーズで上位入賞した、ヒルクライム・スペシャリストのみが参加できる年に一度の大会です。

 

出典:http://www.fia.com

 

コースは全長3.3kmのスプリント勝負となっていて、決勝では2本のタイム計測の中、最も速かったタイムを採用する方式で勝敗を決っする、真のヒルクライマー決定戦となっています。

2016年は10月8日、9日にチェコ共和国・シュテンベルクで行われ、14カ国が参加し国別対抗、そしてカテゴリー毎で最速のヒルクライマーの称号を争いました。

 

カテゴリー1(市販車クラス)

 

IHCC、EHCCと同様の市販車クラスであるカテゴリー1。しかし、マスターズともなると様子が違うようです。

 

出典:http://www.fia.com

 

昨年の優勝マシンはなんと、フェラーリ・458GT3!!

このマシン、実はWECのLM-GTEクラスに参戦するAFコルセのサポートにより実現したのだとか。

ドライバーを務めたイタリア人のルシオ・ペルジーニ選手の父は、かつてランチアのワークスドライバーを務めていた、まさにオールイタリアンで勝ち取った世界最強ヒルクライマーの称号です。

 

出典:http://www.fia.com

 

このような、サーキットからそのまま持ってきたようなマシンも参戦するのがマスターズ。

今年は、日本車も負けずに頑張って欲しいです。

 

カテゴリー2(コンペティションカークラス)

 

IHCCと同様のコンペティションカークラスです。

各国から最速のヒルクライマーが一堂に会し行われる、カテゴリー2の争いは最もタイムが拮抗し限界ギリギリのアタックが見られます。

 

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昨年の優勝は、NORMA M20FCを操るEHCCチャンピオンのシモーン・ファッジオ選手!

前年は2位に甘んじましたが、2016年はしっかりとヨーロッパチャンプの意地を見せ見事な優勝です。

ヨーロッパチャンピオンでも簡単には勝てないマスターズは、オリンピックのように格別な舞台のようです。

 

カテゴリー3(オープンクラス)

 

市販車、市販ツーリングカーともに4シーター以上の車両に6500ccまでのエンジンを載せたマシン、またはFIAに認可されていなくてもASN(各国のFIA管轄組織:日本ではJAF)で認可されていればいかなるマシンでも参加可能なクラスです。

なんともフワッとしたその規定からも想像できるように、魔改造な市販車にとどまらず上位はフォーミュラカーによって埋め尽くされています。

 

出典:http://www.fia.com

 

その中で優勝を飾ったのは、Gould GR61X-NMEを操ったスコット・モーラン選手。

馴染みのないGouldというメーカーは、イギリスのヒルクライム用フォーミュラカーを製造するファクトリーで、イギリス国内のシリーズでは19度のタイトルを獲得している強豪メーカーのようです。

それでは、峠を攻めるフォーミュラーカーの異次元なスピード感を体感できるオンボード映像をご覧ください。

 

 

あまりにも危険過ぎますが、FIA公認なら仕方がない…。日本でもここまでぶっ飛んだヒルクライムレースを見てみたいものです!

 

国別対抗カップ

 

出典:http://www.fia.com

 

2016年は、イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、チェコ共和国、スロバキア、オーストリア、スイス、ギリシャ、ルーマニア、ベルギー、ポーランド、ルクセンブルクの14カ国が参加しました。

国別対抗カップでは参加する14カ国、全チームが公正で拮抗した争いができるような工夫がなされています。

各国のASNによって選考された4選手が2本ずつのタイムアタックを行い、その2本のタイム差の合計が最も少なかったチームが優勝となるのです。

 

出典:http://www.fia.com

 

そんな国別対抗カップはスロバキアが優勝し、2位にスイス、3位にオーストリアという結果になりました。

ユニークな方式ではあるものの、単なる速さだけではなく、纏まったタイムを刻むということも運転スキルの高さを証明する方法の1つという事ですね。

 

まとめ

 

峠を本気で飛ばすレーシングカーは、普段サーキットでしかレースを見ない自分としてとても新鮮に感じました。

日本ではあまり馴染みのないヒルクライムですが、ヨーロッパではこんなにも頻繁に開催されています。

しかも、FIA公認!

公道でのモータースポーツイベントに対し、厳しい日本に住んでいると、このようなイベントが頻繁に行われるヨーロッパは羨ましいの一言です。

サーキットだけではなく、こういった身近な場所でもモータースポーツが行われれば、日本人の車やモータースポーツに対する関心はもっと上がるのではないでしょうか。期待してしまします。

 

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