今年もスーパーGTやスーパーフォーミュラと並んで熱戦が繰り広げられているスーパー耐久シリーズ。特に第3戦の鈴鹿4時間耐久では、今季初の全クラス混走でのバトルということで波乱の展開も。終わってみれば、開幕戦や第2戦とは全く違う表彰台の顔ぶれとなり、チャンピオン争いも横一線となりました。そんな第3戦「SUZUKA“S耐”サバイバル」を振り返ります。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

いつもと違う“サバイバル”その餌食になったのは…

 

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今回の鈴鹿ラウンドは、今季初めて全クラス混走でレースを開催。そのため、決勝グリッドに並べるのは50台。しかしエントリーは全体で54台あったため、予選落ちが発生する事に。

具体的なフォーマットとしては土曜午前の予選で各クラス下位になったチームが夕方に行われる敗者復活戦「セカンドチャンス」に回り、そこでクラス上位フィニッシュをしなければなりません。

今年はST-X、ST-3、ST-4、ST-5クラスの各下位3台ずつがセカンドチャンスに回って決勝出走権を争うことになった。

 

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ST-Xクラスは、開幕3戦連続でNo.8ARN Ferrari 488 GT3がポールポジションを獲得。

ランキング首位を走るNo.1スリーボンド日産自動車大学校GT-Rはウェイトハンデ60kgということもあり、タイムが伸びず4番手。

そのライバルNo.3ENDLESS・ADVAN・GT-Rは、5番手に終わった。

そして何よりも意外だったのは、昨年の鈴鹿ラウンドで2位に入っているNo.89HubAuto Ferrari 488 GT3だ。

Bドライバー予選のために吉本大樹が乗り込みコースに入るが燃料計トラブルが発生。コース上でマシンがストップしてしまう。

 

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規定ではAドライバーとBドライバーの合計タイムでグリッドが決められるため、どちらがノータイムだと自動的にノータイム扱いとなる。

これで、クラス最下位となり、夕方のセカンドチャンスへ。

序盤から遅れを取り戻すような快走をみせるが、レース中にまたしてもトラブルが発生。

ピットで緊急修復を余儀なくされる。これでトップから10周以上の差がついてしまい、挽回できず。今回もひょっとすると優勝候補になり得たチームがまさかの予選敗退……かと思われた。

 

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しかし、他クラスで決勝に進出しながらもリタイア届を提出した車両が発生。

予選落ちのメンバーの中では最上位にいた89号車が、土壇場で決勝進出を決定。

今年は土曜日から、様々なドラマが起こったS耐第3戦となった。

 

ランキングトップの1号車が、まさかの不運に

 

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11日に行われた決勝レース。前2戦より長い4時間のレースでは、波乱の連続となった。

その中でも一番の“まさか”だったのが、開幕2連勝しランキング首位を走っていた1号車のGT-R。

今回も4番グリッドからスタートしたが、藤井誠暢が序盤からハンデを感じさせないペースを発揮し、2番手に浮上。

途中介入したセーフティカーのタイミングで、ライバルとは異なりコース上に留まることを選択した。

 

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これにより終盤まで正確な位置関係がつかめないところにいたのだが、それでも確実に表彰台圏内にはこれるだけのパフォーマンスを発揮していた。

しかし、レース折り返しの2時間を経過した直後。まさかの展開が待ち受けていた。

中盤に入り、藤井から内田優大にバトンタッチ。順調に周回を重ねていたが、57周目のダンロップコーナーでちょうど追い抜こうとしていた他クラスのマシンと接触。

リアタイヤのサスペンションを痛めてしまい、緊急ピットインを余儀なくされたのだ。

 

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それでもチームは1ポイントでも多く獲得するため、マシンを修復。再びコースに復帰し完走を目指した。

結果的にクラス7位と惨敗ではあったが、ポイントランキングではトップ(No.3ENDLESS・ADVAN・GT-R)と1ポイント差の2番手に。

首位を守ることはできなかったが、被害を最小限に食い止めることに成功した。

総合力では間違いなく群を抜いている1号車。これが後半戦にどう影響していくか、注目の結果となった。

 

ついにトンネル脱出?GTNETが2年ぶりに勝利!

 

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そして気になる優勝争い。顔ぶれは違うが、今回もGT-R同士の対決となった。

残り1時間というところで上位3台が同時にピットイン。その中でも素早く作業を済ませコースに復帰したのが、序盤から着実に追い上げてきたNo.3ENDLESS・ADVAN・GT-R。

このタイミングでトップに浮上する。

ライバルである1号車が優勝争いから脱落していることもあり、何とかしてトップを守りきりたいところだったが、その背後から猛烈な勢いで追い上げてきたマシンがいた。

 

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No.99 Y’s distraction GTNET GT-Rだった。

スタートと最終スティントを務めた藤波清斗が、猛烈にプッシュ。あっという間に追いつき81周目のS字手前でトップに浮上した。

それでも、3号車を駆る元嶋佑弥もトップ奪還のために必死に追いすがるが、今回は完全に99号車の方が一枚上手。

最終的には、10秒もの差をつけ、今季初のトップチェッカーを受けた。

 

得意の鈴鹿で復活、星野一樹「セットアップ変更がうまくいった」

 

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レース後の表彰式。エースドライバーを務める星野一樹は、ポディウムで満面の笑みをみせていた。

それもそのはず。スーパー耐久で優勝するのは2015年の最終戦鈴鹿以来、約2年ぶりのことなのだ。

「鈴鹿では2014年も勝っていて、2015年に連勝して、昨年はトップを走っていたけどガス欠しちゃって。そういう意味では鈴鹿に来たら絶対勝てるという自信はあったし、そういう中で昨年は本当に悔しい思いをしました。」

「特に昨年は鈴鹿だけじゃなくて1回も勝てなかったですが、それでもチームもいろんなことを努力してくれて、ちょっとずつやってきた積み重ねが、こういう形になって良かったです。」

 

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今回、同じGT-Rを使う2チームよりは軽いウェイトハンデで臨めていた点も有利に働いたが、特に4時間の走りを見ていると、それだけじゃないパフォーマンスも発揮されていたことは確かで、速さを引き出していたのは、直前にチームが夜通しでマシンをメンテナンスし、大幅にセッティング変更をした部分にあった。

「今回大幅にセットアップを見直してくれた場所がすごくステップアップしてくれて、ウェイトハンデの差だけじゃない部分で、僕たちもすごく進化できました。木曜日の走り出しから、クルマは素晴らくて『今回はいけるかもしれない』と思っていましたし、徐々に予選・決勝と進んでいく中で、その気持ちは確かなものになっていきました。」と語る星野。

同じように、藤波もセッティング変更がうまく機能したという。

「チームの皆さんが本当にがんばってくれて、ここ1週間はみんな徹夜で色々なものを改善してきてくれました。本当にいいクルマを作ってくれて感謝しています。クルマもすごく乗りやすくて、ペース的には負ける気はしなかったので、自信をもっていきました。」

 

前半戦を終えて横一線?ますます目が離せない残り3レース

 

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第3戦を終えてのランキングは以下のとおり

1位:No.3 ENDLESS・ADVAN・GT-R 48.0pts

2位:No.1 スリーボンド日産自動車大学校GT-R 47.0pts

3位:No.99 Y’s distraction GTNET GT-R 39.0pts

4位:No.8 ARN Ferrari 488 GT3 38.0pts

4位:No.89 HubAuto Ferrari 488 GT3 31.0pts

第2戦まで首位だった1号車が後退。同2位だった3号車も優勝を手にできなかったこともあり、このように綺麗に横一線状態となった。

特に今年のST-Xは一つのミスが命取りになるほどシビアな戦いが続いているが、逆に1号車はここまでノーミスかつ完璧なレース運びで2連勝を飾ってきた貯金が生きる形となった。

 

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1号車のエースである藤井は「現時点では1ポイント差で負けてしまっていますが、そう考えると開幕2連勝のポイントは大きかったので、貯金は使っちゃいましたが、もう1回開幕戦に戻った感じで、オートポリスからしっかりとやっていきたいです。ウェイトハンデが重いなりにも、僕のスティントでは3号車より速かったですし、それは手応えになりました。」と前向き。

また今回勝った星野も、次のオートポリスで連勝して、そこからチャンピオン争いのことを考えたいと語っていた。

それだけに、第4戦オートポリスは、チャンピオン争いの行方を大きく左右する1戦になることは間違いなさそうだ。

 

まとめ

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

1号車の独走に待ったがかかった今回の鈴鹿ラウンド。次回もGT-R勢が有利なのは間違いなさそうだが、彼らもウェイトハンデが積み重なってきており、フェラーリやポルシェなど、他のチームにも優勝のチャンスが出てきそうだ。

トップ5台が17ポイント以内にひしめく混戦となっているが、これが第4戦終了時にはどうなっているのか?まだまだ見どころの多い戦いは続いていく。

 

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