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トップ4まであと少し…!全日本F3を戦う女性レーサー三浦愛が富士決戦で得たモノとは

2017年の全日本F3選手権も後半戦に突入し、すっかり入賞圏内を争うメンバーとして定着した三浦愛。今回はさらに上位を目指し、富士スピードウェイでの第12・13戦に臨んだ。気温は30度を超える灼熱の2日間。リザルトは今回も決して満足がいくものではなかったが、今年一番と言ってもいいほどの手応えを掴む週末となった。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

 

重いステアリング+真夏のレース。新たな課題が続々…

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

5月の岡山ラウンドで導入した、重たいステアリングを取り入れたセッティングでレースウィークを迎える事にもすっかり定着した三浦愛だが、今回は新たに別の課題が待っていた。

それは「夏の暑さ」で、まだ梅雨明けしていないにも関わらず、第12・13戦ともに気温30度を超える中でのレースとなった。

もちろんフォーミュラカーにエアコンは付いておらず、コックピット内の温度は50〜60度になることもある。

前回の鈴鹿に比べると、コースレイアウト的には重いステアリングによる身体への負担は少ないものの、この暑さとも闘わなければならないため、三浦にとっては今シーズンの中で一番タフな週末となったのだ。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「暑かったし、キツかったです。金曜日も結構キツかったんですけど、(第12戦では)10周すぎたあたりからは結構辛かったです。特にセクター3が大変でした。」

「楽にはならないんですけど、極端にリズムを崩すことなく今走らせてもらえているので、これを続けていって、少しずつ慣れていくしかないですね。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

前回の鈴鹿から、表彰台に立つべく「トップ4」の存在を強く意識し始めている三浦だが、彼らの背中に近づくチャンスが、今週末の第12戦で訪れた。

 

ついに見えた!トップ4の背中!

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

第12戦は序盤から波乱のレース展開となった。

スタート直後の1コーナーで坪井翔と宮田莉朋が接触し、これを避けようとしたアレックス・パロウも失速して後退してしまったのだ。

一方、7番手から好スタートを決めた三浦は、1コーナーでの混乱をうまく回避し、3番手に浮上する。

直後のヘアピンでパロウに抜かれて4番手に後退するが、そこからはトップ集団に食らいついてレースを展開。

ここから阪口晴南に抜かれるまでの5周は、彼女にとって“価値のある5周”になった。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「一瞬3番手になって『あれ?前に2台しかいない』となりました。ヘアピンでパロウ選手に抜かれましたが、彼の後ろについた時に勉強になることが多かったですし、自分のレベルがほんの少しずつ足りないんだなというのがよく分かりました。」

「今までは、自分とペースが同じようなドライバーたちと一緒に走っていましたが、このポジションに上がったことで、レースの作り方もそうだし、ペースに関しても、もう1歩足りないなと感じました。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「でも、その1歩は大きなものではなくて、確実に前回の富士(第6・7戦)よりも良くなっているし、ほんの少しのことで変わるはずだということは感じ取れました。」

「それが何かというのも、ある程度自分では分かっているつもりなんですけど、それがなかなか出来ないんですよね。」

「ベストリザルトは岡山(第8戦)でしたけど、あの時はトップ4に置いていかれた順位でした。でも、今日は多少でもついていけたという部分がありました。」

「彼らの後ろについて得たものは結構大きかったです。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

三浦は阪口に抜かれてからも、1分36秒台のペースを維持し、前の集団に離されずに周回を続ける事ができたのだ。

レース後半には1周目の接触から挽回してきた宮田が迫ってくるが、三浦は彼を寄せ付けないドライビングを披露し、ポジションをキープしていく。

宮田は接触時にフロントウイング翼端板を破損しており、満足な状態で走れてはいなかったのだが、それでも彼に追い抜く隙を与えないペースで走行していたのは確かだった。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「私の中で今日のテーマは“大きなミスをしない”“安定した走りをする”というのを心がけていて、決勝での自分のペースを極端に崩さなければ、ある程度ついていけるだろうと思っていたので、阪口選手に抜かれてから追いつけなかったですが、離されることもなく周回できました。」

「後半は宮田選手が後ろからきましたが、何周かしても極端に追いつかれることはなかったので、『お、悪くない!このまま自分の走りに集中していこう!』と思って走りました。」

「最後は結構近づかれましたが、そこを守れたのも自分の自信になったかなと思います。」

「結果だけを見れば、大きな進歩はないけど、確実に前に進んでいると思えたレースでした。」

 

1周目の混乱で流れを掴めず…第13戦はポイント獲得ならず

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

翌9日に行われた第13戦の決勝レースは、異例のスケジュールで朝8時35分からのスタートとなった。

前日の予選で各ドライバーが記録したセカンドベストタイムでグリッドが決まるのだが、三浦は阪口に0.002秒競り勝ち、6番グリッドを手にしていた。

そしてスタートでは好ダッシュを決め、一瞬5番手に上がったものの、直後の位置取りが悪く、逆に順位を落としてしまう。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「1コーナーで行き場をなくしちゃって、私はイン側にいたんですけど、アウト側の方が流れが良くて、阪口選手をはじめ何台かに立て続けに抜かれてしまいました。特に33号車には強引に入ってこられて、自分が引いてしまった部分がありました。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

一時は9番手まで落ちた三浦だが、ブルーノ・カルネイロ、片山義章らを振り切り、5番手集団に加わりチャンスを伺う。

最終的には8番手でのフィニッシュとなり、残念ながら2戦連続でのポイント獲得とはいかなかった。

「前とはペースがほぼ一緒だったので、最初についた差を詰めることができませんでした。せっかく前からスタートしたのにもったいなかったです。自分ができることはやったんですけど、流れが悪かったですね。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「暑くて体力も心配していましたが、最後までペースは落ちずに走れました。もちろんキツかったですが(苦笑)。あと、もうちょっと…、トップ4に比べると、少し劣ってしまいますね。」

三浦は1周目で流れを作ることができなかったと、レース後も悔しい表情を見せていた。

 

データにも表れてきた“三浦愛”の成長

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

結果だけを見ると決して満足ができるものではなかったが、改めて自分自身の成長を確認することができた週末だったようだ。

現在ランキングトップを快走する高星明誠とは、同じ「B-MAX Racing Team」ということで、データの共有をすることができるのだが、2人の走りを比較したグラフをみても、シーズン序盤から明らかな違いが出てきたという。

「今まで良くなってきているとは言っていましたが、それは自分の感覚的なものでした。その部分が、今回は金曜日の走行からデータロガーのグラフにも現れてきていました。」

「岡山、鈴鹿、富士で1回目と2回目のレースをグラフで重ね合わせると全然変わっていて、今は高星選手にも近づいてきています。グラフ上でも変化を感じることができてきています。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「例えば、高星選手とのデータを比較した時に、『コーナリングスピードやブレーキングポイントをここまで持っていけるよ』と言われても、自分ではどうしたらそうできるのか、イメージが掴めない状況でした。正直、未知の世界でした。」

「徐々に近づいて、走っている中で『あそこをこうすればコーナリングスピードを上げられるかも』というイメージが少しずつ出来てきました。今までは漠然としていたものが、どこをどうしたら良いのか?が明確になってきました。」

「あとは、その理想にどれだけ近づけるかは、ずっとトライし続けていくだけですね。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

そして、何より今週の収穫だったのが第12戦の序盤5周。

“トップ4”の一角であるアレックス・パロウの後方でレースし、彼の迷いのないコーナリングや、コンディションやマシンの状況に合わせたドライビングを目の当たりにし、今後に向けてのヒントを見つけていたようだ。

「自分との差は確かに感じましたが、でも彼らとの差が決して遠くないところまで来ているんだなとも感じれました。」

「あとは基本的なメンタルの部分と、体力面と、駆け引きの部分も良くしていかなきゃいけないですね。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「今回(第13戦)のオープニングラップでも、もっと自分に自信を持って走っていれば、後ろから見ても“入りにくいな”というオーラが出せたかもしれません。“多少強引に行ったら引いてくれるだろうな”という感じで見られていたのかもしれません。」

「それは日々の積み重ね。予選とかフリー走行で速いドライバーになれば、ちょっと後ろから来てもプレッシャーを感じさせられるし、走りで自分の存在感をアピールしていかなきゃ行けないです。」

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

前回の鈴鹿が終わった後、『トップ4の高く分厚い壁に、富士ではヒビを入れるくらいのことができればいいよね』と、三浦と雑談レベルで話していたのだが、予想以上に前進し、小さな穴を開けて先が見えるところまでやってきた。

次回は、その壁をどれくらい打ち破るのか。成長が楽しみだ。

 

まとめ

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

次回の全日本F3選手権は、第14・15・16戦が7月29・30日にツインリンクもてぎで開催される。

「正直、オートポリスとSUGOは経験が少ないですし、大変な部分があると思います。次は3レースですし、木曜日から走行があるので、流れが重要になると思います。」

「自分自身も、もてぎは得意としているので、今以上に何かきっかけを作れる週末にしていきたいです。」

とはいえ、トップ4の壁を打ち破るのは決して簡単なことではない。

それでも三浦は、まっすぐ自分の目標だけを見つめ、最後にこう語ってくれた。

 

©︎Tomohiro Yoshita

 

「繰り返しチャレンジしていく。このテーマは変わらないです。」

少しずつ見えてきた総合でのF3表彰台に向け、三浦愛の挑戦はまだまだ続くのだ。

 

次のページでは、三浦愛選手の2日間を振り返ったフォトギャラリーをお送りします!

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Writer Introduction
Tomohiro Yoshita

フリーのモータースポーツジャーナリスト。サーキット取材は2011年からスタートし、最近ではSUPER GTスーパーフォーミュラを全戦取材。この他にもF1をはじめとする海外レースや、2輪レースもカバー。レースに関する記事だけでなく、サーキットに来場するファンに役立つ情報発信も展開しています。http://www.kansenzyuku.com

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