“超ド迫力”V4エンジンに剛性の低いフレーム

Photo by erwin Herst

 

Vmaxの魅力は何といっても水冷V型4気筒、排気量1200ccで最大出力は145馬力を発生し、トルクは12.4kgのビッグパワーを発生するエンジンです。

1980年代はバイクのエンジンが空冷から水冷へ転換の時期でした。

当時最速と言われたのがカワサキNinjaGPZ900R、最高速250kmをマークした名車です。

そのNinjaの最高出力が115馬力、排気量の違いはありますが30馬力も上回っていたのです。

Vmaxのエンジンの最大の特徴はVブースト!

通常、エンジンは1気筒当たりに1つのキャブレターで吸気を行います。

しかし、Vmaxは2つのキャブレターが連結されており、その中央をバタフライバルブと呼ばれる弁で閉じられていて、各々が1つのキャブレターとして吸気を行う仕組みとなっているのです。

そして、エンジンの回転数が6,000回転を超えた辺りからバタフライバルブが開き始め、8,500回転で全開となります。

Photo by 246-You

つまり高回転域では1気筒当たりに2つのキャブレターで吸気を行っている状態になるのです。

その結果、高回転時には多くの吸気量がシリンダーに送られ、ビッグパワーが得られる仕組みとなっています。

そんなエンジンの開発中に、日本側からの「何馬力位必要か」の問いに対し、アメリカ側から「出せるだけ出せ!」という返事が返ってきたと言う逸話はあまりにも有名です。

しかし、そのパワーとは裏腹にフレーム剛性がとても低くなっています。

何故剛性が低いのか?それは、走行中にV4エンジンの圧倒的な印象を強く残す為に、意図的に剛性を低くしているのです。

その為フレーム剛性が少しでも上がるよう、サブフレームを取り付けるオーナーも非常に多く、Vmaxの定番のカスタムになっています。

 

THE ART OF MOTORCYCLE グラマラスボディ

Photo by tenesmus

Vmaxのアメリカンマッスルカーを彷彿させる迫力あるスタイリングは話題を呼びました。

デザインはヤマハが信頼を寄せる「GKダイナミックス」が担当し、力強さを感じさせるV型エンジンにそのエンジンから張り出す迫力あるエアインテーク、そして太いリアタイヤをドライブシャフトで駆動させ、シートはローポジションとなっています。

また、ハンドル中央付近にスピードメータを配置し、タコメーター、水温計、各インジケーターを一つのユニットにまとめてタンク上部にレイアウトされました。

さらに、このスタイリングには様々な演出が施されています。

迫力のあるエアインテークは、実はダミーとなっており、中にはリレーなどが隠されているのです。

また、なだらかな曲線を描く燃料タンクは一見燃料タンクに見えますが、その下には大容量のエアクリーナーが隠れていて、実際の燃料タンクはシート下にレイアウトされた配置になっています。

ハーレー乗りのアメリカ人を唯一「クール」と言わしめた「和製アメリカン」Vmaxは、乾燥重量263kgと重厚感のある1台です。

 

1990年 日本仕様が登場

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:3UF_002.JPG

1990年、規制緩和により日本で750ccを超えるオートバイの販売が解禁されました。

それまでの日本国内のバイクの最大排気量は750cc。

それを超えるバイクについては全て、逆輸入するしかありませんでした。

Vmaxも、この規制緩和により日本国内で販売を開始、しかし100馬力の自主規制がなされた事から、欧州仕様と同様のVブーストは搭載されず、最高出力98馬力、最大トルク11.3kgにデチューンされての販売となったのです。

しかし、カタログスペックではパワーダウンされてはいるものの、キャブレターやファイナルギアを加速重視にセッティングした事により、渋滞の多い日本の道路では「扱いやすい」と評されました。

日本も含めアメリカ、北米、欧州、南アフリカなど世界各国で人気を博したVmaxは、頻繁にマイナーチェンジが行われましたが、その多くはホイール形状やカラーリングの変更、また若干のパワーダウンを伴なった、各国の環境基準に適合するための細かい変更に留まっていました。

しかし2007年のマイナーチェンジで、全てアメリカの排ガス規制に適合!このモデルより全仕様135馬力に統一され、Vmaxは「最初」の生産終了を迎たのです。

総生産台数は全世界で93,196台でした。

 

「怒涛の加速」から「怒涛の加速感」へ…New Vmax

Photo by 246-You

20086月、アメリカ サンディエゴの暗闇に包まれる空母ミッドウェイ、戦闘機が並ぶその甲板を派手なバーンアウトで観衆を沸かせた一台のバイクが疾走します。

「怒涛の加速」から「怒涛の加速感」へと進化した、新しいVmaxが生まれた瞬間でした。

初代Vmaxがヤマハのフラッグシップとして君臨していただけに、新型の開発は困難を極めました。その開発期間は、実に24年にも及んだと言われています。

 

進化したV4エンジン、電子制御も導入

Photo by Iain Farrell

当初エンジンは2000ccで開発されましたが、最終的には初代Vmaxのエンジンを1700ccにボアアアップして搭載されました。

最高出力200馬力、最大トルク17.0kgを発生するエンジンはトライ&エラーを繰り返しカムシャフトの駆動方式を変更、その結果シリンダーヘッドの小型化、エンジンバンク角の変更にも成功したのです。

いずれもmm単位の変更ですが、こうすることにより前輪への荷重が増し、直進安定性とコーナーリング性能を向上させる結果となりました。

この技術は「GENESIS」と呼ばれるヤマハの技術思想であり、YZF-R1にも応用されています。

そして、翌年2009年に発売された日本仕様は最高出力151馬力、最大トルクは15.1kgとなったのです。

Photo by Brad Hagan

吸気系は電子制御に変更されキャブレターもインジェクションとなりました。

それに伴いVmaxの最大の特徴であるVブーストも廃止される事に!もうVブーストのような「怒涛の加速」は体験することができないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。New Vmaxには新しい技術、YCC-I(ヤマハ電子制御インテーク)が搭載されています。

YCC-Iはエアファンネルが上下分割構造となっており、低中速域では連結状態で長いファンネルとして機能し、一定の回転数を超えると分離され下側のファンネルだけ、つまり短いファンネルとして機能するのです。

それにより、低回転で吸気する際は吸入口付近の気流の乱れを抑え円滑な吸気を行うことができ、高回転では大量の吸気を行い、その長さによって出力特性を変化させることができるようになりました。

Vブーストは吸気量を増加させることにより、そしてYCC-Iは吸気を効率よく行うことによりエンジン特性を最大限に発揮することを可能にしています。

ちなみにNew Vmaxのエアインテークはダミーではなく実際に吸気を行っています。

 

最新のプラットフォーム、ボディには重厚感を

Photo by D Take

エンジン以外のプラットフォームも新設計がなされています。

低剛性と揶揄されたスチールフレームはアルミダイヤモンドフレーム、酸化チタンコーティングされたフロントフォークにタンク式のモノクロスサスペンション。

スウィングアームのピボット位置を変更する事によりドライブシャフトの設定が見直され、またファイナルケース内のギアを小型軽量化。

エンジンレイアウトの変更と同様に、これらの改良もフロント荷重に貢献しているのです。

スタイリングは更に重厚感を増しました。

デザインは今回もGKダイナミックス、「モーターサイクルは鉄の塊」との考えから金属製のパーツを各部に使用。

アルミ製のエアインテークカバーにサイドカバー、サイレンサーはチタン製、そのため車両重量は310kgまでアップとなりました。

デザインで注目すべきは、300近いサンプルを作ったという派手なエアインテークカバーではないでしょうか。

特殊なアルミ材を使用し、できあがったカバーを職人が30~40分を掛けて手作業による磨き「バフ仕上げ」を行い、完成させるのです。

 

“怒涛の加速”だけではない楽しさも

Photo by 246-You

ストリートドラッガーをコンセプトに造られたVmaxで、ゼロヨン10秒台の加速を味わう事ができるのはVmaxオーナーだけに許された快感です。

しかしVmaxの楽さは加速だけではありません。

 

意外に快適なツーリング

Photo by Jon

Vmaxの余裕あるポジションはツーリングにも向いています。

タンデムや荷物の積載も難なくこなし、トルクのあるエンジンは扱いやすく、高速道路も快適に走ることができるので、余裕をもってツーリングを楽しめるバイクと言えるのではないでしょうか。

しかし燃料タンクが15リットルしか入らないため給油に気を使う必要がありそうです。

 

豊富なパーツが揃うカスタム

Photo by supa fly

フレームや足回りの強化パーツから外装などのドレスアップパーツ、またエンジン回りのチューニングパーツなど数えきれないほどのカスタムパーツが世界中で発売されています。

中には、初期型の日本仕様向けにVブーストキット、常時Vブーストがかかっている状態にするフルタイムVブーストキットなども発意倍されており、チューニングショップによってはターボ、スーパーチャージャー、NOSにより最高出力260馬力以上というモンスターバイクに仕上げてくれるショップも存在します。

ドライブシャフトからチェーン駆動に変更したり、また特徴のあるV型エンジンを強調してお洒落にカフェレーサー風に仕上げて楽しむオーナーも多い様です。

 

あなたもVmaxオーナーに

Photo by minek123

Vmaxは長年にわたり世界中で販売されたロングセラーバイクなので、中古市場においても台数が豊富です。

初期型の1200㏄は30万円から100万円くらいで購入可能ですが、Vmaxは年式や輸出国によっておおきく仕様が異なるので、こだわりのある方は、よく調べてから購入することをオススメします。

また、燃料タンクがシートの下にあるのでどうしても湿気を多く含んでしまい勝ちなので、外装だけでなく燃料タンクの錆もチェックが必要です。

そして1700ccはまだ年数も経過していないので、150万円以上しているようです。

新車価格が220万円なので、そんなに値が落ちていません。

しかし年式が新しいだけに、安心して長く乗り続けることができるのではないでしょうか。

 

まとめ

Photo by 246-You

1985年の誕生以来、ヤマハのフラッグシップモデルとして走り続けてきたVmax。

バイクブームの絶頂期に生まれ、バイクブームの衰退期も乗り越えてきました。

数々のバイクが姿を変え、あるいは姿を消してきた日本のバイクシーンでVmaxは32年の間、頑なに自分のスタイルを貫いてきました。

だからこそ世界中のバイクファンから熱い支持を得たのではないでしょうか。

そのVmaxが2017年8月、ついに、その歴史に幕を下ろすのです。

「怒涛の加速」で日本を、世界を走り抜けたVmax。

バイクファンとして「最後の時」を見守りたいですね。

 

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