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本当に欲しいクルマはどれ?ホンダのスポーツカーとして最高ランクを表す”タイプR”に求めること。

2017年現在、各メーカーがスポーツブランドを持ちつつも、実際には環境に配慮し効率が良く、販売台数の稼げる車に力を注いでいるのは皆さんご存知の通り。しかしかつては各社とも「そのメーカーの最強」を表す称号を持っていました。ホンダの「タイプR」もその代表格の一つですが、その意味合いは以前とはだいぶ異なると思いませんか?

 

Photo by Steve Maw

 

 

ホンダ最強の称号「タイプR」へのユーザーの想い

 

出典:http://www.honda.co.jp/sportscar/special/hobby/wallpaper2.html

 

今さら改めて書くほどのことでもありませんが、ホンダというメーカーはその成り立ちからもレーシング・スピリットにあふれた自動車メーカーという事は周知の通り。

2輪時代には早々に国際レースの舞台を目標とし、4輪参入時にはまだ市販車を1台も売っていないのに、4輪レース最高峰のひとつ、F1への参戦を表明。

しかも初期の市販車はほとんどスポーツカーで、エンジンがスポーツカーベースの商用車はかえって評判が悪く、基盤となる4輪乗用車への参入には苦労したどころではありません。

1972年に生産基盤のほとんどを初代シビックに集中するという大博打に失敗していたら、そのまま4輪車メーカーとしてのホンダは消滅していたところでした。

その間も第1期ホンダF1(1964~1968年)は、1967年のイタリアGPで優勝するなど好成績を残しており、S500~S800のイメージもあって、「そりゃ他の車も作るけど、ホンダといえばとにかくスポーツカー」という印象が染み付いていました。

以後しばらく自動車メーカーとしての基盤作り、ヒット作に恵まれミニバンやSUVメーカーの印象が強まり、ホンダファンはフラストレーションを抱えたと思います。

「商売だから売れる車も大事だけど、俺たちでも買えて一番速い車を作ってくれるのがホンダのはずだ!」

そんなファンの期待を背負ったホンダが、NSXに続き1995年に初代インテグラタイプRを登場させた時のファンの熱狂ぶりは凄まじいものでした。

それ以来、ホンダユーザーの関心は「今度出る新型車にタイプRは出るのか?」ひたすらこれだったと思います。

2017年9月現在、FK8シビックタイプRが発売されたので、次はNC1 NSXに期待が集まりますが、どれも高価なのでフィットやS660など『一般ユーザー向けの車にも期待したい。』そんな本音も多数です。

 

ホンダにとってのタイプRとは何なのか?

 

出典:http://www.honda.co.jp/sportscar/spirit/01/index2.html

 

初のホンダ「タイプR」は1992年に登場したNSX タイプR(第1期)ですが、この時のコンセプトはごくシンプルなものでした。

“サーキットまで乗って来れて、サーキットが一番楽しくて、思いっきり走った後なんとか我慢して家まで帰れるスポーツカーにしよう”

ホンダHP「走るエンジニア(後篇) 本田技術研究所 和田範秋主任研究員に聞く」より引用

つまりサーキットが主であり、ナンバーを取得して公道を走るのはあくまで移動のためという割り切り。

これは、後のタイプRでもある程度共通していたと思います。

 

出典:http://www.honda.co.jp/sportscar/special/hobby/wallpaper2.html

 

“乗る人のスポーツマインドをどこまでも高揚させる、鋭い運動性能を持つクルマをつくりたい。長年、世界の頂点のレースに挑み続けてきたホンダには、そうしたクルマづくりへの情熱が脈々と息づいています。

TYPE Rは、ホンダの熱き情熱を具現化する取り組みのひとつです。”

ホンダHPプレスインフォメーション(FACT BOOK) ホンダTYPE Rのコンセプトより引用

これが1995年、初代インテグラタイプR(3ドアDC2 / 4ドアDB8)デビュー時のコンセプトで、「ホンダのスポーツマインドという熱き情熱の具現化」とは、デビューから20年以上たってなお同クラスで追従するものの無い戦闘力に現れています。

 

©︎鈴鹿サーキット

 

“より多くの方に、走る歓びを存分に味わっていただきたいというホンダの熱き願いを込め、鋭敏な動力性能とコントローラビリティを両立させた、シビック タイプRを新たに開発しました。”

ホンダHPプレスインフォメーション(FACT BOOK)CIVIC TYPE R誕生より引用

これが1997年にデビューしたEK9シビックタイプRのコンセプトで、デビュー当時最強のエンジンや強化&軽量化されたボディを持ちつつ、非常に安価(レースベースグレードで新車価格169.8万円)だったので、まさに「そのコンセプトに偽り無し」です。

 

当初のスピリットを承継した国産タイプRと、海外製タイプR

 

出典:https://supertaikyu.com/teams_drivers/3998/

 

これら初期の「タイプR」は2006年まで継続生産される間に、第2期のタイプRを生んだNA1 /2 NSX(2006年生産終了)を除き、DC2 /DB8(2001年同)、EK9(2000年同)はベース車とともにモデルライフの終焉を迎えました。

ここから、「タイプR」には2つの流れが生まれます。

1つは、前項で紹介した初期のタイプRのコンセプトを足したような、DC5インテグラタイプR(2001~2006年)と、FD2シビックタイプR(2007~2010年)という「国産タイプR」の流れ。

FD2などがその代表で、諸事情によりベース車がだいぶ肥大化&コストダウンはされたものの、NSXタイプR第1期の「あくまでサーキットが主で公道は従」というコンセプトはそのまま継続され、レーシングスピリットを受け継ぐ比較的安価な車でした。

 

Photo by Marek

 

もう1つがEP3(2001~2005年)、FN2(2007~2012年)という2つのイギリス製シビックタイプRと、日本では「ユーロR」として販売されたCH1(1998~2002年)、CL7(2002~2007年)と2代に渡った欧州仕様限定アコードタイプRという「ヨーロピアンタイプR」の流れです。

結論から言えば、当初からのスパルタンなコンセプトを受け継いだ「国産タイプR」の系譜はFD2で終わりを告げています。

ファンが望む「タイプR」はFD2が生産終了した2010年で終わりを告げ、現在の「タイプR」はかつてファンが熱狂したものとは似て異なる「ヨーロピアンタイプR」路線を歩むことになりました。

 

なぜ「国産タイプR」のスピリットは継続されなかったのか?

 

出典:http://www.honda.co.jp/auto-archive/civic/type-r/2011/webcatalog/document/

 

スパルタンな「国産タイプR」の系譜が途切れた最大の理由は、ベース車の消滅です。

スポーツカー不況でインテグラのようなクーペは廃版、シビッククラスのミドルクラスセダンも、FD2の時点でタイプR以外はハイブリッド以外お呼びでは無い状態で、そのシビックも日本国内仕様は2010年で廃版となります。

残るはフィットやその派生車のようなコンパクトカー、ラージセダンの域に入ったアコードやインスパイアで、ピュアスポーツのS2000も2009年で廃止されており、「タイプRを作ろうにもベース車が無い」という状況でした。

皮肉なことに、タイプRを一生懸命作っている間にベース車の致命的な価値低下を招き、トヨタや日産のような保守系ユーザーによる細々とした需要に支えられることもなく、ホンダの車種ラインアップそのものが永遠に変化してしまっていたのです。

 

「ヨーロピアンタイプR」の功罪と「国産タイプR」の高い壁

 

出典:http://www.jrca.gr.jp/5053

 

それでもイギリス製の「ヨーロピアンタイプR」はFN2シビックタイプRユーロの輸入が細々と続けられ、辛うじて命脈を保っていました。

とはいえ、国産タイプRのように安価なレーシングベース車が設定されているわけでもなく、基本的にはフィットとプラットフォームを共用してコストダウンした「コンパクトハッチバック版タイプR」でした。

その為、どちらかといえば大排気量で余裕のあるツーリング向けホットハッチと言えたFN2には、国内モータースポーツでの華々しい実績が今ひとつ乏しいと言わざるをえませんでした。

先代EP3の頃から「イギリス製なので部品供給に難がある」「同クラスで比較すればDC2やDC5に勝る点に乏しい」とされ、それよりダウングレードしたのがFN2だったので、「タイプR」の名をつないだという功績はあったものの、それ以上の存在では無かったのです。

逆に「この種のコンパクトで無理にタイプRを作っても、従来車に勝てない」ということで、消極的になった面もあったかもしれません。

折しも日本国内では2代目スイフトスポーツ(ZC31S)以降の、ハンドリングに優れた新世代ホットハッチがモータースポーツで好評でしたが、惜しくもそこに「フィットタイプR」的なホンダスポーツが現れることはありませんでした。

あるいは、フィットタイプRを作ることで、通常版のフィットが「タイプRでない車」という烙印を押されることを恐れたのかもしれません。

 

世界を舞台とした「新世代タイプR」に、ホンダスピリットはあるのか

 

出典:http://www.honda.co.jp/ACCESS/auto-archive/civictype-r/2016/

 

ともあれ、海外に活路を見出すしか無くなった「タイプR」はVW ゴルフやルノー メガーヌをターゲットにターボで武装し、ニュルブルクリンクサーキットでFF世界最速を目指す高価高性能路線を歩み、初期の「タイプR」とは似ても似つかぬものになりました。

誰もが購入できる価格で、公道での乗り心地こそ我慢を強いられるものの、サーキットでは痛快な走りが楽しめる、そんなタイプRと現在のそれは全くの別物です。

確かに世界を相手に最速を狙う舞台でホンダの名を知らしめ、ライバルたちに勝った負けたで盛り上がる姿からは、「まさしくタイプRこそホンダ最強の称号」であり、ホンダスピリットが存在することに異議はありません。

しかし、誰もが手軽に購入できる価格ではなくなった今、ホンダには「かつてのタイプRと同じ意味での、最強の称号」が、タイプRとは別に求められているような気もします。

 

まとめ

 

出典:http://www.honda.co.jp/CIVICTYPE-R/

 

FK8シビックタイプRは確かに史上最強のFFタイプRかもしれませんが、そろそろホンダファンの皆さんも、「ニュルブクルクリンクのタイムより大事なものがあるんじゃないか?」と思い始めてはいませんか?

法律で義務付けられた電子制御デバイスは仕方ないとしても、GPS連動の時代なのでサーキットではそれをカットする機能を持ち、走りに必要な部分は個々のカスタマイズに任されたような安価なベースグレードのあるスポーツモデル。

「世界最速より町内最速」を求める声は、新しいタイプRが出るごとに、むしろ高まっているようにも思えます。

確かに「タイプR」はホンダ車にとって最強の称号ですが、「それは誰のための最強なのか?」を考える時期に差し掛かっているかもしれません。

あるいはホンダのどこかで密かに、小規模でもそのようなプロジェクトが動いていてくれたら…。

日本でも燃え上がれるホンダスピリットの再点火に、期待したいと思います。

 

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Writer Introduction
兵藤 忠彦

ダイハツ党で、かつてはジムカーナドライバーとしてダイハツチャレンジカップを中心に、全日本ジムカーナにもスポット参戦で出場。 現在はサザンサーキット(宮城県柴田郡村田町)を拠点に、主にオーガナイザー(主催者)側の立場からモータースポーツに関わっています。http://dctm.info/

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