ホンダ EK4 シビックSiR / Photo by Fabio Aro
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©鈴鹿サーキット
ホンダがモーターサイクルや第1期F1とともにそのスポーツイメージを作り上げたホンダS500 / S600 /S800と、1970年にS800が生産終了するまで3代に渡ったホンダスポーツですが、その後はホンダ1300などパワフルなモデルや、初代シビックRSのような軽快感を持ったモデルはあったものの、4輪自動車参入初期に構築したイメージの再来と言えるモデル、ツインカム(DOHC)エンジン搭載車はなかなか登場しませんでした。
「ホンダ・ツインカム」がようやく公道へと再び姿を現したのは1983年のこと。
新型の1.6リッターDOHC4バルブエンジン「ZC」が3代目シビック(ワンダーシビック)と初代CR-X(バラードスポーツCR-X)に搭載されました。
その時のグレード名は両車とも「Si」。
Sports Injectionの略である「Si」グレードは、最新の電子制御インジェクション(燃料噴射装置)を採用したスポーツエンジン搭載車であることを意味していました。
これは1989年4月に2代目インテグラが初のDOHC VTECエンジン「B16A」を搭載した時にも「XSi」グレードとして継承されますが、同年9月に4代目シビック(グランドシビック)と2代目CR-X(サイバーCR-X)へ同じエンジンが搭載された時、新たなグレードが生まれます。
それが“Si”を超えた、Sports Injection Racing、すなわち”SiR”の誕生でした。
ホンダ EG9 シビックフェリオ SiR / Photo by Manoj Prasad
Racingの頭文字を取って「R」を追加した以上、SiRは”Si”を超えた存在として、少なくともその当初はタイプR的に位置づけられ、どんな車にも設定されるというわけではありませんでした。
例えばデートカー的なスペシャリティクーペからアメリカンスタイルのスポーツクーペへ進化したとはいえ、レーシーとは言い難かった4代目プレリュードには2.2リッターDOHC VTECのH22A(200馬力)が搭載されましたが、そのグレード名は”Si VTEC”。
3代目インテグラすら、丸目4灯ヘッドライトのみの初期型ではやはり”Si VTEC”です。
しかし、その後はホンダ社内での基準が緩くなったのか、 DOHC VTECを搭載していれば”SiR”を名乗るようになっていきました。
例外だったのは、6代目EKシビックフェリオが5代目EGシビックフェリオ時代とは異なり、ハッチバック車と同じB16A(170馬力)DOHC VTECを搭載していながら、”Si”を名乗ったくらいではないでしょうか。
“SiR”グレード、あるいはそれに準じたグレードを持ったホンダ車
【1.6リッターDOHC VTEC B16A搭載車】
EF8 2代目CR-X SiR(1989-1992)
EG2 CR-Xデルソル SiR(1992-1997)
EF9 シビックSiR / SiRII(1989-1991)
EG6 シビックSiR / SiRII(1991-1995)
EG9 シビックフェリオSiR(1991-1995)
EK4 シビックSiR / SiRII(1995-2000)
【1.8リッターDOHC VTEC B18C搭載車】
DC2 インテグラSiR-G / SiR / SiRII(1995-2001)
DB8 インテグラ4ドアSiR-G / SiR(1995-2001)
【2リッターDOHC VTEC F20B搭載車】
CF4 アコードSiRーT / SiR(1997-2002)
【2.2リッターDOHC VTEC H22A搭載車】
BB6 / BB8 プレリュードSiR(1996-2001)
CD6 アコードSiR(1993-1997)
CD8 アコードクーペSiR(1994-1997)
CF2 アコードワゴンSiR(1994-1997)
【2.3リッターDOHC VTEC H23A搭載車】
CH9 / CL2 アコードワゴンSiR(1997-2002)
※日本国内正規販売車のみ
ホンダ EG6 シビック SiR / Photo by Ricardo Velasquez
シビックやインテグラ、アコードには”SiR”だけでなく、それにプラスしたグレードもありました。
まずシビックにおける”SiR”と”SiRII、それにインテグラにおける”SiR”と”SiR-G”。
これはいずれも前者がレースベース車などとして装備が簡素化されたモデルで、後者がスポーツ性はそのままに豪華装備が施されており、サンルーフなど快適装備オプションの選択も可能なモデルでした。
ただし、EK4シビックの”SiRII”グレードはタイプR(EK9)追加時に”SiR”へ改称され、従来の”SiR”はレースベース車としての役割をタイプRに譲り、廃止されています。
また、DC2インテグラには”SiRII”グレードもありましたが、これはマイナーチェンジで角目2灯化されながらも、従来の丸目4灯デザインを細々と残したものを意味していました。
また、6代目CF4アコードにも”SiR”と”SiR-T”がありましたが、同じエンジンでも前者は4速ATと組み合わせた180馬力仕様、後者が5速MTと組み合わせた200馬力仕様で、MT仕様の方がパワフルかつスポーティという違いがあります。
それ以外の車種については、プレリュードのように4WS機構の有無などで”SiR 4WS”などとグレード名をつけたり、同じ”SiR”でもAT仕様は馬力がやや落ちることはありますが、スポーツ仕様と通常仕様の”SiR”がある、という違いはありませんでした。
ホンダ EF8 CR-X SiR / Photo by ilikewaffles11
ホンダ EF8 CR-X SiR 1990年式
全長×全幅×全高(mm):3,800×1,675×1,270
ホイールベース(mm):2,300
車両重量(kg):970
エンジン仕様・型式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ DOHC VTEC
総排気量(cc):1,595cc
最高出力:160ps/7,600rpm
最大トルク:15.5kgm/7,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
ホンダ EG2 CR-X デルソル SiR / Photo by Mic
1989年にシビックとCR-Xに設定され、NSXを除けば文字通りホンダスポーツ最高峰の証だった、ホンダの”SiR”。
誰もが一目置く存在でしたが、1995年の初代インテグラタイプR、1997年の初代シビックタイプRの登場で、一気に色褪せることになりました。
それでもEK4シビックSiRをあえて好むユーザーも存在し、「速くて快適」という意味でSiRグレードの意味が損なわれてはいないはずでしたが、時代はむしろ「タイプRへの快適装備の追加」(タイプR・Xグレードの追加)を望んだのです。
その結果、シビックタイプR登場後もなお新規に”SiR”グレードを設定したのはアコードセダンやアコードワゴンのみに留まり、それらもユーロR、タイプRといった「新時代のR」に後を譲り、消えていくことになりました。
もしホンダにタイプRが存在せず、あらゆる車種に”SiR”が残っていれば、各車種に魅力的な最上級スポーツグレードが展開されたでしょうか?
その後継グレードはフィットなどに展開される”RS”であり、今やホンダから”SiR”の血統は途絶えてしまったのです。
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