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ドライ?ウェット?カーボンの種類の違いって何?それぞれのメリット・デメリットをカーボンのプロに聞いてみた!

国内でも数社しかない、開発から製造・販売まで”完全国産”にこだわる、エアロブランド『VARIS(バリス)』は、製造のみならず、自社で取り付けまで行なっているのはご存知でしたか?また、量産が難しいと言われているウェットカーボンにVARISがこだわり続ける理由とは?今回Motorz編集部は同社の工場にお邪魔し、気になるアレコレを専務取締役の矢萩 忠央さんにぶつけてきました!

 

©︎Motorz

 

VARISの始まり

 

©︎Motorz

 

今でこそ、カーボン製エアロパーツメーカーの大手として名高い『VARIS』。

同社のルーツは先代が40年ほど前に開業したFRP屋さんで、同社の近くにある相模湖で使われている釣り船や足こぎボートを修理・製作していたそうです。

そのFRP製作技術を買われて、次第に自動車メーカーの試作品などの仕事が入るようになっていき、徐々にOEMで自動車のエアロを手がけるようになりました。

三菱・ランサーエボリューションⅢのフロントバンパーはVARISが試作品を制作し、その他にもダカール・ラリーに参戦していたパジェロ・エボリューションのエアロや、全日本GT選手権のGT300クラスに出場していたMR2などのエアロも作ったそうです。

そして、24年前に自動車エアロメーカー『VARIS』を立ち上げるに至ります。

ちなみに同社の初めてのオリジナル商品は、R32のGTS-T用のエアロパーツ!

現在は神奈川県相模原市の山あいに工場がありますが、この頃は東京都八王子市に工場があったそうです。

同じ西東京エリアの東京都西多摩郡にあるトムススピリットと親交が深く、1998年には同社がスーパー耐久シリーズ(S耐)に当時投入していたST205セリカへのエアロパーツ供給を開始。

当時は、現在のST-2クラスではランサーエボリューション勢が席巻しており、セリカは苦戦している状態でした。

しかし、VARISのエアロパーツを装着してクーリングやダウンフォース効果を上げた同マシンは仙台ハイランドでP.Pを獲得。

美祢サーキットでは、クラス優勝という戦歴を残します。

また、以前Motorzで取材させて頂いた東京都日野市のショップ『YRアドバンス』とも、この頃に知り合ったそうです。

 

エアロもチューニングパーツである

 

バリス本社の数軒隣にあるチューニングショップの『Hurtling(ハートリング)』も、実はバリスが手がけているお店です。 / ©︎Motorz

 

「エアロもチューニングパーツの一部だ!」と考えるバリスですが、元々のエアロの方向性は現在とは真逆である、ド派手一辺倒なものだったそう。

しかし、S耐マシンのパーツ供給に始まり、モータースポーツやチューニングの場にもエアロパーツを供給するようになって考えが変わっていきました。

そんなレース用パーツの開発をしているバリスですが、同社には風洞施設はない上、持ち込むにも費用対効果が悪く、販売時の価格も上がってしまうので、風洞に持ち込んだりはしないそうです。

基本的な形はPCのシミュレーターなどで空力面をチェックするそうですが、細かい調整を実際に風洞などで実験が出来ないからといって、やたらむやみに巨大なGTウイングをつけたりはしません。

 

「ウチは『速いだけじゃなくカッコいいエアロ』を作っているんだよね。

これはメーカーのOEMやS耐などで培ってきた経験から成せるVARISの強みなんじゃないかな。」

 

と矢萩さんは語ります。

 

こちらは、バリス独自の『VSDC』素材で製造されR35GT-R用のカーボンボンネットです。詳細は本文で後述しますが、既存のウェットカーボン製のボンネットと比較しても軽量な上に、片持ちで支持してもたわむことなく純正と遜色のない剛性を実現しています。 / ©︎Motorz

 

ウェットカーボンにこだわる理由

 

カーボンパーツは全て、ひとつひとつ手作業で作られているのです。 / ©︎Motorz

 

ドライカーボンやウェットカーボンという言葉は耳にしたことがあるかもしれませんが、みなさんはその違いをご存知でしょうか?

FRPやCFRPと呼ばれるカーボンは、どちらもクロスと呼ばれるガラスやカーボンの繊維に樹脂を染み込ませ、硬化させて作成します。

その硬化の際に使用する樹脂が、エポキシ樹脂のものをドライカーボン、ポリエステル樹脂を用いて自然乾燥で固めるものをウェットカーボンと言います。

ちなみに、エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂と呼ばれるタイプの樹脂で、熱を加えると硬くなり、耐熱性も高いのでカーボン繊維との相性が良い事が特徴ですが、その一方で紫外線に弱く、実はストリートには不向きなのです。

また一方で、硬化剤を混ぜれば誰でも固めることが出来るドライカーボンに比べてウェットカーボンは作るのがとても難しく、何層にも積層させたカーボン繊維にしっかりと樹脂を染み込ませないと、気泡が生まれて思ったように成型されません。

だからと言って樹脂を厚塗りしてしまうと、その分重量は重くなってしまいます。

カーボンやFRP製品の重量のほとんどは樹脂の重さと言っても過言ではなく、初心者と職人が作ったモノでは1kg以上の重量のバラつきが生まれてしまうこともザラなのです。

そんな、メリットばかりのドライカーボンの中で、唯一”紫外線に弱い”というストリートユーズには致命的な弱点を見過ごすことの出来なかったバリスでは、ポリエステル樹脂、つまりウェットカーボンにこだわって製造を行なっているのです!

更に、バリスでは『VSDC(バリスセミドライカーボン)』と呼ばれるエポキシ樹脂のような特徴を持ったポリエステル樹脂を樹脂メーカーと共に開発し、ウェットカーボンの特徴はそのままに、ドライカーボンと同様の軽さに近づける為の惜しみない努力を続けています。

そんなVSDCは裏骨までもがカーボン素材で出来ており、また部材によってカーボン繊維の太さを変えることでパーツ自体の強度を出しているそう。

ちなみに上記のR35GT-R用のボンネットを例に出すと、ドライカーボン製のボンネットはおよそ4kgくらいですが、写真のような片持ちの支持ではたわんでしまいます。

それをVSDCではご覧の強度を保ちつつ、重量を6.5kgに抑えているそうです。

また、樹脂のみではなく、カーボン繊維も共同開発し、今ではその繊維はボーイング787にも使われているのだとか。

そして、カーボンの織り目の美しさにも着目し、これまでに見たことのない新しい織り目のカーボンクロスも目下開発中だそうなので、完成が楽しみです。

 

こちらは現在開発中のシビックタイプR(FK8型)用のボンネットです。 / ©︎Motorz

 

現在開発中のシビックタイプRのボンネットは現状5.2kgなのですが「もっと軽く出来る。」とは矢萩さんの談。 / ©︎Motorz

 

こちらは修復中のカーボンパーツ。十分に樹脂が染み込まず、気泡が残ってしまった部分にはこのように後から樹脂を足して補修します。成形型から外され、厳しい検品で弾かれた製品はこのようなひと手間を掛けなければならなくなるのです。/ ©︎Motorz

 

開発から取り付けまで、エアロに関する全てをココで

 

仕上げ工程の様子。細かいコンパウンドで磨き上げ、カーボン特有の輝きが生まれます。 / ©︎Motorz

 

全てを自社で生産しているバリスでは、前述のようにひとつひとつのパーツが手作業で丁寧に作られています。

ウェットカーボンは自然乾燥で硬化させる為、生産性の面で言うとあまり良いとは言えません。

そのため、おおよそですがボンネットでは1日で3個、GTウイングのようなパーツはステーから全てカーボンの為、1日1個作るのが限界だそう。

また、ひとつの型で完成するわけではなく、ボンネットの裏骨やGTウイングのステーなど、異なるセクションごとに型を分けて作ることで効率化も図っているので、単純に1つの製品がモノとして完成するまでには、4日ほどかかってしまいます。

このように、開発して製造された製品を梱包して出荷するところまで、全てを一貫してバリスは自社で行なっているのです。

更に、バリスではハートリングというチューニングショップも手がけており、同ショップ名でオリジナルパーツも展開!

バリスやハートリング商品はもちろん、別メーカーのエアロの取り付けなどにも応じているので、エアロメーカーのショップが取り付けをしてくれるということで、ごく稀ですが持ち込みのお客さんも来るのだそう。

 

「他メーカーのエアロの面倒まで見てくれるとは、なんて心が広いんだ……!」

 

と思った筆者は、素直にその旨を矢萩さんに伝えると、

 

「逆に他のエアロの取り付けをしないと、ボクらもエアロが作れないんだよ〜」という予想外の答えが!!

 

そして、

 

「樹脂の精度が悪かったり、乾燥が不十分だと型から外した後に微妙に曲がってしまい、上手に着けることが出来ないこともあります。

他メーカーの質を知る、という意味でもそうですし、単にデザイン重視ではなく取り付けやすさも意識した製品開発に活きてくるんです。

だからエアロメーカーこそ、エアロの取り付けも行うべきなのかなって思ってます。」

 

と、その必要性を話してくれました。

 

こちらはハートリングの工場内の様子。 / ©︎Motorz

 

まとめ

 

今回、お話を伺ったバリスの専務取締役の矢萩 忠央さん(左)とインタビュー中の筆者(右)。 / ©︎Motorz

 

最後に、バリスがこだわっている部分について矢萩さんに聞いてみました。

 

「いつも、”他の誰もやっていないこと”をやっていたいなって思うんですよね。

その結果がデザインへのこだわりであったり、製造方法へのこだわりだったり、チューニングショップを構えさせたりしているんだと思います(笑)。

何年もこの業界でやってきていますが、「今年のバリスは、何を出してくるの?」って常に思われていたいんですよね。」

 

非常にシンプルかつ、エンターテイナーな答えを聞かせてくれました。

そしてその答えに、我々をいつもワクワクさせてくれるデモカーを生み出し続けてくれる、バリスの仕事を垣間見れた気がします。

そんな同社は、2018年のオートサロンに出展した『SUPREME JZA80』スープラを、年内の様々なイベントにも出展予定だそう。

見た目だけでなく速さも備えた同社の質の高いエアロパーツを、もし間近で見れるチャンスがあったなら、ぜひ足を止めて、じっくりご覧になってみてください。

その完成度と実用性の高さに、きっと驚かされると思います。

 

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VARISの製品はモタガレでも購入可能です!

 

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Writer Introduction
前田勇介

物心ついた頃には既にクルマが大好きだったらしく、家族で出かける際には必ず助手席に座り、対向車線のクルマのメーカー名を諳んじていた子どもだったそうです。 大学は美術系大学へ進学して自動車デザインを勉強し、電気自動車を作ったりしていました。 その後、某出版社で自動車雑誌の編集を務め、現在に至ります。 1991年式のキャブクーパーに乗っています。

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