超人的な肉体と頭脳を持つF1ドライバー。彼らが普段どのような訓練を積んで、レースで戦っているのかを知っていますか?今季はマシンのスピードアップもあり、ドライバーのフィジカル面に注目が集まっていますが、今回はそんな彼らに求められる肉体とそのトレーニング方法を覗いてみましょう。

©Red Bull Content Pool

世界有数の肉体と知性を兼ね備えるF1ドライバー

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モータースポーツの中でも、肉体への負荷が大きいと言われるF1のドライバーは、抜群の運動神経と体力を兼ね備える世界有数のトップアスリートとして知られています。

約2時間に及ぶレースを走り切る体力だけでなく、ライバルとの駆け引きで必要な知性や瞬間的な判断力などドライバーに求められる要素は数多く存在します。

また常に危険に晒されているので、一瞬の気の緩みが命取りとなり、重大な事故を引き起こしてしまう可能性もあります。そうならないためにも、レースを戦う誰もが確実な運転を行うための訓練を行っているのです。

今季はレギュレーションの改定でマシンの速度が上がりドライバーの身体にかかる負荷が増加したので、開幕前から選手のフィジカル面が話題を呼ぶこともありました。

そんなF1ドライバーは、マシンを速く走らせるために、どのようなトレーニングを行っているのでしょうか。もう少し詳しく覗いてみましょう。

 

なぜレーシングドライバーには体力が必要なのか?

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一見激しい運動をしているようには見えないので、F1ドライバーに何故体力が必要なのかという点に疑問を持つ方もいるかもしれません。

しかし、そこには明確な理由があるのです。今回は2つの観点から見ていきたいと思います。

 

コーナーリング速度が高い

まず1つ目がマシンのコーナーリング速度です。

F1では200kmを超えるスピードでコーナーを曲がるため、他のレースに比べて身体に強いG(重力)がかかります。急な加減速やコーナーを高速で旋回する際には最大4〜5Gという強い負荷がかかるのです。

体重が60kgの場合、約300kgの力で押し付けられているという計算になり、これは力士の張り手と同じ強さに相当します。

そのためブレーキング時には身体中の血液が前に集まってしまい、心臓はより強い力で血液を送り出そうとするので心拍数が高まります。

レース中のドライバーの心拍数は毎分約140〜190回だと言われ、マラソンランナーに匹敵する身体への負荷となります。

このような状況はレースが終わるまで何度も繰り返されるため、優れた持久力が無いと体力の低下から集中力が失われてしまうのです。

 

コックピットの中は、意外と高温

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そして2つ目はコックピットの環境にあります。

ドライバーが座る位置のすぐ後ろにはエンジンを搭載しているため、その熱が伝わりコックピット内の温度は55度にも上昇すると言われています。

F1の開催地の多くが暑い時期の開催なので、そこに座っているだけでもかなりの体力を消費するのですが、この状況下でドライバーは厚手の耐火性スーツを着用して約2時間のレースを戦うのです。

そのため1レースで4〜5リットルの水分を失うので脱水症状に陥る可能性も否定出来ません。そして、水分を失うと血液の循環が悪くなり、筋力は次第に低下してしまいます。

このように体力に優れていないと本来の力を発揮できず、成績にも大きな影響を与えてしまうのです。

 

では、レースで速さを引き出すために、ドライバーたちはどのような訓練を行っているのでしょうか。