いすゞがSUVやピックアップトラックを除く乗用車から撤退する決断をする直前、当時いすゞを傘下に収めていたGMの要請により、3代目いすゞ ジェミニ、ジオ ストーム、アスナ サンファイアと共に開発されたのが2代目いすゞ ピアッツァでした。事実上3代目ジェミニに初代ピアッツァのテイストを加えた派生車ですが、1991年9月とジェミニやPAネロより後に登場したことで、いすゞ最後の独自生産乗用車となりました。

2代目いすゞ ピアッツァ(海外版インパルス) / Photo by Zytonits
少々ややこしい2代目ピアッツァの成り立ち

2代目いすゞ ピアッツァ(海外版インパルス) / 出典:https://www.favcars.com/isuzu-impulse-rs-1991-92-photos-84256-800×600.htm
1993年にSUVやピックアップを除く乗用車独自生産から撤退するまで、いすゞはGMの小型車開発部門としてコンパクトカー担当のスズキとともにGMグループ内で重要な役割を果たしていました。
2代目ジェミニや初代ピアッツァがモデルチェンジするタイミングだった1980年代末期、GMが若者向けブランドのシボレーよりさらに下位の最廉価ブランド『ジオ』を立ち上げた時、『ジオ』ブランドで販売する小型車開発がいすゞに依頼されたのは、そのためです。
ここでいすゞやジオなどGM各ブランドで販売する車の流れが少々複雑なので、一旦下記に整理します。
- 開発中の3代目ジェミニクーペをフェイスリフトしたジオ ストーム発売(アメリカ・1990)
- ジオ ストームのフェイスリフト版2代目いすゞ インパルス発売(アメリカ・1990)
- ジオ ストームのヤナセ版、いすゞ PAネロ発売(日本・1990)
- 全てのベーシック版3代目いすゞ ジェミニ4ドアセダン発売(日本・1990)
- ジオ・ストーム3ドアクーペの日本版3代目ジェミニクーペ発売(日本・1990)
- 3代目ジェミニ4ドアセダンの海外版いすゞ スタイラス発売(日本・1990)
- ジオ ストーム2ドアワゴンの日本版3代目ジェミニハッチバック発売(日本・1991)
- インパルスの日本版2代目いすゞ ピアッツァ/ヤナセ版ピアッツァ・ネロ発売(日本・1991)
- インパルスのカナダ版アスナ サンファイア発売(カナダ・1993)

ジオ ストーム 2ドアワゴン(2代目いすゞ ピアッツァのGM版で、日本ではいすゞ PAネロとして販売) / 出典:https://www.favcars.com/wallpapers-geo-storm-station-wagon-1991-92-52047.htm
つまりピアッツァは3代目ジェミニクーペがベースのGM版、ジオ ストームのいすゞ版でジェミニクーペとメカニズムは共通ですがスペシャリティカー寄りという、少々ややこしい立ち位置なのです。
ですが、少なくとも初代ジェミニと初代ピアッツァほどの違いはありません。
加えてGMはカナダで『ジオ』に相当する『アスナ』という最廉価ブランドを展開しており、そこでサンファイアとして販売されたのは、ストームではなくインパルス。
なぜこんな面倒な事をしたのか、車種整理の進む今では考えにくい話です。
日本ではFF自然吸気のみ、アメリカでは4WDターボもあり

2代目いすゞ ピアッツァ(海外版インパルス) / 出典:https://www.favcars.com/wallpapers-isuzu-impulse-rs-1991-92-16504-800×600.htm
GMのおかげで成り立ちを話すと面倒な2代目ピアッツァですが、日本でのラインナップはいたってシンプルで、1.8リッターDOHC自然吸気エンジンを搭載した『XE』と、豪華装備版『XE/S』の2種類のみ。
サスペンションは通常版が存在せず、全てジェミニでの『ハンドリング by ロータス』仕様なので、逆にそれをグレード名でアピールすることもありませんでした。
ちなみにジェミニクーペは1.6リッターDOHC自然吸気の『OZ-G』がトップグレードだったので、2代目ピアッツァはジェミニクーペの上級版と言えます。
アメリカ版インパルスには日本でのジェミニ イルムシャーRに相当する1.6リッターターボ4WD車『インパルスRS』がラインナップされていましたが、日本では1.6リッター車もいすゞ得意のディーゼル車も追加されませんでした。

先代ほどでは無いがサテライト・スイッチの面影が残る2代目いすゞ ピアッツァ(海外版インパルス) / 出典:https://www.favcars.com/images-isuzu-impulse-xs-1990-92-129005-800×600.htm
ただし単にジェミニクーペを排気量アップして多少のお化粧直しをしたわけではなく、ヘッドライトにセミリトラクタブルライトを採用するなど初代ピアッツァのデザインテイストを取り入れていたので、ジェミニクーペともジオ ストーム/PAネロとも全く異なるフロントマスクだったのが特徴です。
その他のメカニズムは、特徴的なナチュラル4WSの一種『ニシボリック・サス』を含め3代目ジェミニとほぼ同様でした。
主なスペックと中古車相場

2代目いすゞ ピアッツァ・ネロ / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.
いすゞ JT221F ピアッツァ 181XE/S 1991年式
全長×全幅×全高(mm):4,225×1,695×1,315
ホイールベース(mm):2,450
車両重量(kg):1,120
エンジン仕様・型式:4XF1 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,809
最高出力:110kw(150ps)/6,400rpm
最大トルク:172N・m(17.5kgm)/5,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:20万円(ほぼ皆無)
まとめ

2代目いすゞ ピアッツァ(海外版インパルス) / Photo by Zytonits
2代目ピアッツァが日本で販売されていたのは1991年9月から1993年12月までのわずか2年3ヶ月で、先行販売したアメリカ版インパルスを含めても4年程度に過ぎません。
ジウジアーロデザインで後々まで人気の高かった初代と比べ、短命でマイナーという寂しいモデルとなってしまいましたが、それを逆手に取ったのか、1999~2000年の全日本ラリー選手権2輪駆動部門には、1台のピアッツァが計3戦エントリーしていました。
超マイナー車の参戦という事でモータースポーツ誌で少しだけ話題になりましたが、これが2代目ピアッツァ最初で最後の花道だったはずです。
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