ディーゼルエンジンは燃料価格が安価な軽油で走ることと、低燃費、トルクフルというのが魅力です。そしてマツダは独自のクリーンディーゼル技術『スカイアクティブD』の実用化に成功し、今では同社の主力モデルになっています。しかし、ここ数年スカイアクティブD搭載モデルのリコールが相次ぎ、本来のパフォーマンスを発揮できないことも。今、マツダ製ディーゼル搭載車に、何がおこっているのでしょうか。

マツダ・CX-5 / © Mazda Motor Corporation.

革新的な技術であったマツダ製クリーンディーゼルに不具合多発!

マツダ6 / © Mazda Motor Corporation.

欧州ではディーゼルエンジン搭載車が燃費の良さやCO2(二酸化炭素)排出量が少ないことから、エコカーとして人気です。

そして日本のエコカーといえばハイブリッドやPHVですが、マツダだけは低燃費モデルとして乗用車にディーゼルモデルをフルラインナップしています。

他の国産メーカーは、トヨタ ランドクルーザープラドやハイエース、三菱 デリカなどに、ディーゼルエンジンを採用していますが、マツダはコンパクトカーのマツダ2(旧・デミオ)から大型SUVのCX-8まで、8車種にディーゼルモデルをフルラインナップ。

しかも、6速MTをほとんどのモデルに設定し、ディーゼルエンジンの良さ引き出すこととドライバーが運転を楽しむことを重要視しています。

しかし、マツダ製ディーゼル車の不具合が多発し、リコールも増えていることで、クリーンディーゼルエンジン開発の難しさが露呈する結果となりました。

マツダ・スカイアクティブDとは

スカイアクティブ2.2 / © Mazda Motor Corporation.

スカイアクティブD(SKYACTIV-D)は、マツダが開発した乗用車向けディーゼルエンジンの総称です。

現在、マツダはスカイアクティブDのエンジン排気量を1.5リッター(型式:S5-DPTS、S5-DPTR)、1.8リッター(型式:S8-DPTS、S8-DPTR)、2.2リッター(型式:SH-VPTS、SH-VPTR)の3機種を生産しています。

ディーゼルエンジンの構造

© Mazda Motor Corporation.

ディーゼルエンジンは、シリンダー内で空気を高圧縮・高温化させ、そこに霧状の軽油が噴射されることで燃料が自ら発火し、爆発する仕組みです。

そのためディーゼルエンジンには、ガソリンエンジンにある点火プラグがありません。

インジェクターから噴射される軽油量は、ガソリンエンジンより少なくても十分な爆発エネルギーを得られるため、一発一発の爆発エネルギーが大きい分、エンジンが低回転の時でもパワーを発揮でき、ディーゼル特有の高いトルク力を発揮します。

燃焼室内を高圧縮・高温化させてガソリンエンジンよりも高い爆発エネルギーを生み出せる分、シリンダーやヘッドなどエンジン構成部品の強化も必要なのです。

そのおかげでガソリンエンジンより低燃費で、CO2排出量も少ないから驚きです。

しかし、NOx(窒素酸化物)と軽油を燃やすことで発生するスス(PM|粒子化合物)が多く排出される特徴があるため、排ガス浄化装置を装着しなければなりません。

このように、ディーゼルエンジンは丈夫に作られていることや、排ガス浄化装置が高額なため、生産する際にどうしてもコストがかさんでしまうのです。

ディーゼルエンジンの排ガス浄化システムとは

ディーゼル車には、エンジンから発生するススを大気に排出させないために、DPF(Diesel Particulate Filter|ディーゼル微粒子捕集フィルター)と呼ばれる排ガス浄化システムが、マフラー部分に装着されます。

なお、DPFはトラックメーカーによって呼び方が異なり、三菱ふそうはDPFですが、いすゞは『DPD』、日野自動車が『DPR』でUDトラックスが『SPMC』です。

それぞれ若干の仕様が異なりますが、ススを排出させない目的は同様です。

さらに、ススだけでなく排気ガスに含まれるNOxも軽減させなければなりません。


© NIPPON EKITAN Corporation 2018

そこで、NOx削減の為に用いられるのが、『尿素SCRシステム』という装置。

『尿素SCRシステム』はNOxがアンモニアと化学反応を起こすことで、水と窒素に還元される仕組みを利用した装置で、同装置において触媒として用いられる高品位尿素水のことを『アドブルー(AdBlue)』と呼びます。

このようにDPFとアドブルーを併用することで、ディーゼルの排ガスを浄化させています。

スカイアクティブDは低圧縮比によりNOxを低減

©Copyright Mazda Motor Corporation.

マツダは、燃焼室内の圧縮比を低下させることで、従来の高圧縮化されたディーゼルエンジンよりもNOXの生成量を低減に成功した『スカイアクティブD』エンジンを開発、製造。

尿素SCRシステムのような、高価な排ガス浄化装置を用いずに高い環境性能を達成している革新的なエンジンなのです!

最大の欠点は大量のススの発生

出典:写真AC

マツダのスカイアクティブDエンジンが革新的だった点は、”低圧縮比でディーゼル燃料を圧着点火させる”という点でした。

しかし、ディーゼルエンジンはきちんと暖気が完了するまで、どうしても排出されるススの湿度が高くなりがちです。

湿度の高いススは吸・排気系にも付着しやすくなってしまいます(スカイアクティブDエンジンはターボ付きなので、排気ガスを循環させているため吸気系にも影響)。

そのため、ディーゼルの特性を知らないユーザーが不具合を訴えるケースが非常に多いのです。

DPFには一定量のススが溜まるとヒーターなどで燃焼再生させるセルフクリーニング機能が備わっていますが、DPFを作動させるには30分以上走行して十分な暖気を行わないと稼働ません。

近所への買い物などでチョイ乗りを繰り返すと、エンジンが温まりきらない走行を繰り返す事になり、DPFにはススが溜まる一方です。

スカイアクティブDにはどんな不具合が発生するのか?


DPFにススが溜まったままだと、前述の通り、排気ポートだけでなくインテークマニホールド側の吸気バルブにまでススが溜まってしまいます。

すると、吸気できる空気が少なくなりエンジンパワーが低下。

そのうちDPFチェックランプやエンジンチェックランプが点灯し、そのままにしておけばエンジンにノッキング症状が出たり、最悪エンジンが始動しなくなってしまいます。

ユーザーの乗り方にもよりますが、車両によっては5万km程度から症状が出ることも。

リコールによる症状の場合は無償ですが、通常DPFや吸気ポートの洗浄やOBDの書き換えなどの作業を行うと、修理費がかなり高額で、DPF交換で17万円です。

こういったマツダ製ディーゼルの不具合を専門に修理する業者もありますが、それでも5〜8万円はかかってしまいます。

まとめ

©Copyright Mazda Motor Corporation.

スカイアクティブDのディーゼル技術は素晴らしいものですが、時間が経つにつれ不具合が明らかになり、マツダ製ディーゼルに疑問をもつユーザーが徐々に増えています。

しかし、問題はユーザーの乗り方にあり、マツダ車以外のディーゼル乗用車でもチョイ乗りを繰り返せば、同じ症状が出る場合も。

チョイ乗りを繰り返す場合は、最低30分以上走ることを心がけるだけで、症状の改善が見込めるそうです。

週末に高速道路に乗って長距離ドライブをする方や、マニュアルでエンジンをしっかり回しながらギアをつなぐ乗り方をできる方であれば、スカイアクティブD搭載車はおすすめです。

マツダの製品は、低燃費が非常に魅力的ではありますが、燃費だけでなく”走り”にもこだわって作られているので、メンテナンスだと思って、これを機に走行性能にも目を向けてみてはいかがでしょうか?

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