販売実績はともかく、話題豊富で現在に至るまでファンが多い初代に対し、2代目いすゞ ピアッツァは、存在すらかなりマイナーで、PAネロと混同する人もいるのではないでしょうか?複雑な生い立ちとはいえ基本的には3代目ジェミニの豪華版、しかも日本での発売直後にいすゞは業績悪化で乗用車事業を再編。2代目ピアッツァは、いすゞ最後のオリジナル小型乗用車として、アッと言う間に消えた車でした。

2代目いすゞ ピアッツァの北米版「インパルス」/ Photo by dave_7

乗用車事業が限界に達したいすゞの最終到達点、2代目ピアッツァ

2代目いすゞ ピアッツァの北米版「インパルス」/ Photo by Jacob Frey 4A

戦後に小型乗用車市場へ参入して以来、開発・生産・販売能力ともに潤沢とは言えなかったいすゞですが、1970年代に米GM傘下となってからは、その意向が強く反映される、自動車メーカーというよりGMの一部門のような扱いになっていきました。

GMとの提携は、当時いすゞのイメージリーダーだった117クーペを、ハンドメイドから機械生産への切り替えを可能にするなど、収益性向上に貢献した一方で、貧弱な国内販売網から相対的に北米を中心とした販売のGMグループ依存度が強まり、もはや「GMがいらないという車は作れない」というところまで追い込まれていきます。

それでも、2代目ジェミニ(初のFFジェミニ)が北米でもヒットするなど、小型乗用車部門のエースとしてのいすゞはGMから大いに頼りにされており、3代目ジェミニの開発に当たっても、GMの新たな低価格ブランド「Geo(ジオ)」での販売を念頭に、とにかくジオでも売れる新型ジェミニに注力を、というのがGMからのオーダーです。

ただし、もちろんいすゞとしてはGMの都合は受け止めつつ、自社ブランドでの販売と日本市場での乗用車事業を諦めたわけではなく、下記のように3代目ジェミニベースで各ブランドの派生車を作り、1990年から順次販売します。

【日本】
3代目ジェミニ セダン/3ドアハッチバック/3ドアクーペ(いすゞで販売)
2代目ピアッツァ(ジオ ストームのフェイスリフト版・いすゞで販売)
2代目ピアッツァ・ネロ(同・ヤナセで販売)
PAネロ(ジオ・ストームの日本仕様・ヤナセで販売)

【米国】
スタイラス(3代目ジェミニセダンの米国仕様・いすゞで販売)
2代目インパルス(2代目ピアッツァの米国仕様・いすゞで販売)
ジオ ストーム(3代目ジェミニクーペのフェイスリフト版・シボレーで販売)

【カナダ】
アスナ サンファイア(2代目インパルスのカナダ仕様・対米輸出枠制限の対策車)

このうちヒット作は、湾岸戦争(1991年)の影響によるガソリン価格高騰で、小型車ブームとなったアメリカでの販売が好調だったジオ ストームで、日本での3代目ジェミニも受注は好調だったものの、生産能力不足でバックオーダーを消化しきれず、いすゞは国内シェアの維持に失敗することになります。

その余波もあってか、2代目ピアッツァの国内デビューは遅れに遅る形で1991年8月へずれこみ、いすゞ国内販売網の販売余力不足から、同時発売となったヤナセ版ピアッツァ・ネロを主力に拡販が期待されましたが、ようやくデビューした2代目ピアッツァを前に、突然の激震が走りました。

あゝ無情!デビュー直後のいすゞ乗用車事業再編劇

2代目いすゞ ピアッツァの北米版「インパルス」(ピアッツァにはない1.6ターボ4WD) / Photo by Zytonits

2代目ピアッツァ/ピアッツァネロは、先行した北米版2代目インパルスが1.6リッターDOHC自然吸気FF/同ターボ4WDだったのに対し、日本国内では1.8リッターDOHC自然吸気FFのハンドリング・バイ・ロータス仕様2グレードのみの設定。要するに3代目ジェミニ3ドアハッチバッククーペの上級版だったのです。

ただしフロントマスクは丸目4灯式ながら、初代ピアッツァを思わせる昇降式ヘッドライトカバーを持つセミリトラクタブル式ヘッドライトと、フロントグリルを持ち(3代目ジェミニはグリルレス)、バンパー形状も大きく異なった重厚感を持たせ、内装もジェミニより上質とされました。

2代目いすゞ ピアッツァの北米版「インパルス」(ピアッツァにはない3ドアハッチバック版のワゴンパック) / 出典:https://www.favcars.com/photos-isuzu-impulse-wagonback-1991-92-396550.htm

それ以外の部分は基本的に3代目ジェミニと共通で、もちろんナチュラル4WSの「ニシボリックサス」を採用した4輪ストラット独立懸架。

北米にもインパルスの上級グレードとして輸出予定でしたが、2代目ピアッツァ/ピアッツァネロが発売された翌日には、もはや新型車の歓迎ムードなど吹き飛ぶ出来事が起こります。

「1991年10月、いすゞ、乗用車事業を再編」ー。

せっかくの新車効果による3代目ジェミニの受注好調も、生産能力不足で販売機会を逸し、国内販売不振による車種の削減(まずはジェミニの3ドアハッチバックを廃止)で、北米での3代目ジェミニは販売停止。

輸出枠は全てGM(ジオ)に回され、販売コストを削減して再建を目指す事になります。

そうなると、もともとGMから求められていたジオ ストームと日本国内版PAネロはともかく、ジェミニやピアッツァはGMに不要な車な上に、日本でも販売はジリ貧になっていったため、2代目ピアッツァ/ピアッツァネロも発売からわずか1年半の、1993年3月にはジェミニともども生産を終了してしまいました。

まさに「発売直後に青天の霹靂(へきれき)、売る間もなく店じまい」というわけで、GMとしてはピークを過ぎたとはいえまだ売れているジオ ストームだけでも続けてほしいところでしたが、結局は将来を見通せない小型乗用車をやめ、いすゞには小型トラックへ専念してもらうという結末となります。

こうして2代目ピアッツァ/ピアッツァ・ネロは、車自体の出来や販売実績とは全く関係ないドタバタの中で、短い歴史を閉じました。

主要スペックと中古車価格

2代目いすゞ ピアッツァの北米版「インパルス」(ピアッツァにはない1.6ターボ4WD) / 出典:https://www.favcars.com/wallpapers-isuzu-impulse-rs-1991-92-16504.htm

いすゞ JT221F ピアッツァ 181XE/S(ハンドリング・バイ・ロータス) 1991年式
全長×全幅×全高(mm):4,225×1,695×1,315
ホイールベース(mm):2,450
車重(kg):1,120
エンジン:4XF1 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1,809cc
最高出力:110kw(150ps)/6,400rpm
最大トルク:172N・m(17.5kgm)/5,000rpm
10・15モード燃費:11.6km/L
乗車定員:4人
駆動方式:FF
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F・R)ストラット

(中古車相場とタマ数)
※2021年2月現在
ピアッツァ・ネロ含め流通皆無

絶版数年後、全日本ラリー2輪駆動部門へ参戦…生きとったんか、ワレ?!

2代目いすゞ ピアッツァの北米版「インパルス」(ピアッツァにはない1.6ターボ4WD)/ Photo by dave_7

こうして何とも微妙なデビューと、何ともしまらない結末を迎えた2代目ピアッツァでしたが、生産終了から6年以上たった1999年、全日本ラリー2輪駆動部門Cクラスへ鴇田 順洋/柴 精一 組のマシンとして突如参戦!

「ピアッツァって、あのピアッツァ?」と一瞬初代を思い浮かべた後で、誰もが忘れかけていた、そもそも存在を知らない人が多い超マイナーな2代目ピアッツァが走ってきたため、驚いたメディアも写真付きで紹介したほどです。

同クルーの2代目ピアッツァは翌年も全日本ラリー2輪駆動部門へ参戦。

同車が表舞台へ登場した数少ないケースとなりましたが、その後2代目のピアッツァ/ピアッツァネロは、モータースポーツはもとより、旧車イベントなどでもほとんど見かけることはなく、その消息は杳として知れません。

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