チューナーとドライバーを育てたエンジン

出典:https://www.tsikot.com/forums/garage-150/initial-d-ae86-came-first-26425/

ADVANトレノを駆る土屋圭市選手。あまりの速さに主催者から最終戦を欠場”させられた”らしい。出典:https://www.tsikot.com/

早くからレースの舞台でも活躍したハチロクと4A-GEエンジン。

特に84年の富士フレッシュマンレースにおいて、「ADVANトレノ」を派手なドリフトで乗りこなして6連勝を果たし、度肝を抜いたのが”ドリフトキング”土屋圭市選手でした。

85年から始まった”グループA”こと全日本ツーリングカー選手権には、1.6リッターのクラス3からAE86が参戦。

フレッシュマンレースでの活躍から抜擢された土屋選手もワークス待遇でADVANカラーのレビンで参戦を開始します。

後にこのクラス3は1.6リッター最強のライバル、ホンダ・シビックと、実に9年に渡る死闘の舞台となりました。

出典:http://scontent.cdninstagram.com/t51.2885-15/e35/14727397_1823583304543450_7160773143240376320_n.jpg?ig_cache_key=MTM2Njg4OTgzOTM3NTE4OTU5Ng%3D%3D.2

TRDワークスとしてグループAに参戦した86レビン。改造範囲は狭く、出力は150馬力ほどだった。出典:https://mulpix.com

シリーズ初年である85年には、オイルポンプトラブルで4戦連続リタイヤと苦しい時期もありましたが、最終戦の大一番「インターテック」で5時間の死闘の末に念願の初優勝を勝ち取ります。このときポディウムに立ったのが鈴木恵一選手と、土屋選手でした。

それまで4戦連続でトラブルによりリタイアしているにもかかわらず、終盤まで一切ペースを落とすことなく、とことん攻めて勝ち取った勝利…やはり器が違いますね。

また、「乗り手の熱い思いに応えるエンジン」という噂をこの4A-GEについてはよく耳にしますが、それを象徴する伝説とも言えるでしょう。

86年にはFFとなったAE92型がデビューし、この年にチャンピオンを獲得した後はグループA終焉に至るまで全てシビックに王座を奪われてしまったトヨタ勢。

グループAは改造範囲が狭いため、エンジンも主要部品の変更は禁止。

逆に言えば、ベース車を化け物にしてしまえば有利になります。

ホンダはV-TECに始まり、いち早く17インチタイヤを投入するなど、レース屋のプライドで市販シビックをえげつない戦闘マシンに進化させていきました。

もちろんトヨタ勢が搭載する4A-GEも対抗しましたが、当時F1でも大活躍中だったホンダに、やや引けをとった部分は否定できません。

しかし4A-Gエンジンは、完璧で無かったゆえに速くする為の様々なメソッドを見出すことができるエンジンでした。これも壊れず、よく回り、メンテナンスしやすいという特徴が功を奏したのです。

特にADVANカラーのカローラを走らせた名チューナー土屋春雄氏(土屋武士選手の父)は、独自のノウハウでホンダの“チート性能”に正面から挑んでいきました。

ちなみに、グループAにおける最終年、92年のAE101レビンに搭載されていた4A-GEは、9500rpmで227馬力という途方もないパワーを搾り出していました。

ボアアップなしの吸排気チューンのみでこれ程のパワーを実現しているのは、驚異的という他ありません。

 

魅惑の”銀ヘッド”、至高の”黒ヘッド”

4A-GEエンジンは、強敵シビックが搭載するB16A、進化系のB16Bエンジンに勝つ為に、年を経るごとに進化を続けていきました。

戦いの舞台であるグループAは改造範囲が狭いため、まず市販向けエンジンを進化させることが必須だったのです。

中でも1991年、AE101型レビン&トレノデビューと同時に4A-Gは魅惑の「20バルブヘッド(1気筒あたり5バルブ)」を手に入れます。

加えてホンダのV-TECに対抗し、VVT(可変バルブタイミング機構)も採用。更なる高回転化&出力アップに成功しています。

出典:http://www.wikiwand.com/

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市販車では、デビュー当初と比較して30馬力もの出力アップ(160ps/7400rpm)を果たしていました。

尚、AE101搭載の4A-GEは銀色のヘッドカバーを持つことから「銀ヘッド」と呼ばれています。

更に、その後の95年にはAE111型レビン&トレノがデビュー。

5バルブヘッドはもちろんそのままに「VVT-i」へと進化を遂げたことで、更なるパワーアップを可能にしたのです。(165ps/7800rpm)

出典:https://www.drive2.ru

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結果的に最終型となったこの通称「黒ヘッド」は、まさにリーサルウェポンです。

そして、銀ヘッドや黒ヘッドへの換装は現在もハチロクチューンの定番メニューで、FF車であるAE101(時にAE111)の多くは、5バルブヘッドの「ドナー」として、常にハチロクユーザーからその心臓を狙われる存在でもありました。

 

チューナー自慢の4A-Gミュージックたち

出典:http://www.gt-auto.net/images/stories/cars/09/dec/ae86/ext/DSC_0194.jpg

出典:http://www.gt-auto.net/

4A-GEは、キャブ仕様にスーパーチャージャー仕様、5バルブ仕様、ボアアップ仕様…などなど、チューナーの好みで様々なカスタマイズがされているエンジンでもあります。

同じ特徴のあるサウンドを響かせながら、それぞれに強烈な個性が生まれます。

まずは、本来EFI(電子制御式インジェクション)であるハチロクを、敢えてキャブ仕様に改造するとどんな音がするのか、聴いてみましょう。

 

こちらのハチロクは4連FCRキャブ仕様です。

フェラーリに勝るとも劣らない、ヒストリックカーの魅力が加わったかのような素晴らしいサウンドを響かせました。

ベストセッティングにはチューナーの腕が必要ですが、やはりコンピューターを介さない、人間の入力と機械的メカニズムによる「ダイレクト感」が最大の魅力と言えるでしょう。

 

お次は、ドリキンこと土屋選手の愛車「7A-G」仕様です。

トヨタの1800ccエンジン・7A-FE(廉価版のハイメカ・ツインカムヘッド)のブロックを流用し、4A-GEの5バルブヘッドを装着したこちらの仕様。

「打倒シビック」を突き詰めるハチロク乗りは、この1.8リッター仕様に行き着く様です。

土屋氏曰く、「4AGでもシビックには勝てるけど、壊したくないから限界値の高い7AG」とのこと。

それにしても、土屋選手のドライビング、いつ見ても鬼気迫るモノがあります。

おそらくこの日本で、土屋氏に勝るハチロク愛を持った人はいないのではないでしょうか……。

 

まとめ

今回は大まかな4A-GEの進化の歴史、レースでの活躍、そしてチューニングによるサウンド&フィーリングの違いをご紹介して参りました。

エンジンはパワーがすべてじゃない、とはよく語られることですが、4A-GEとはまさにそれ。

映像からでもドライバーとクルマ、もといエンジンとの一体感がビリビリと伝わってきます。

持て余すほどのパワーでないからこそ、床までアクセルを踏んでそのフィーリングを感じ取ることが出来る、エンターテイメント製の高いエンジンなのです。

それでいて、車体の軽量化と高度なメカニカルチューンで「フォーミュラカー?!」と思わせる様な強烈な速さを手に入れることも可能です。

その最たるは、N2仕様と呼ばれるモンスターハチロクでしょう。

ちなみに、歴代レビン/トレノ以外にも4A-GEを積んでいる隠れた名車たちも多く存在していますが、それはまたの機会に。

4A-Gとハチロクは、調べるほど、見るほど、聴くほどに欲しくなってしまう、困った存在ですね。

 

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