かつてトヨタ販売網の一角を為していたトヨタビスタ店(現在は吸収されてネッツ店)では、その系列名そのままのビスタという車が販売されていました。トヨタビスタ店の誕生から2年遅れで登場した初代ビスタは、姉妹車カムリと共に『トヨタ初の本格FF車』という、重要な役割も担っていたのです。

初代トヨタ ビスタ 5ドアハッチバックVE 出典:https://gazoo.com/car/newcar/vehicle_info/Pages/detail.aspx?MAKER_CD=A&CARTYPE_CD=205&GENERATION=-5&CARNAME=%E3%83%93%E3%82%B9%E3%82%BF

 

トヨタビスタ店誕生から2年たって誕生した『本命』

初代トヨタ ビスタ 4ドアセダン 出典:https://www.favcars.com/toyota-vista-v10-1982-84-photos-188087

まだ世の車のほとんどが後輪駆動だった1970年代、トヨタではターセル / コルサというFF(フロントエンジン・前輪駆動)の兄弟車を作ります。

日本での人気は今ひとつだったものの、小型軽量コンパクトなのに車内は広く燃費も良いというコンセプトは、1979年8月から輸出された米国で高い評価を得ました。

しかし、GMが開発していたFF小型車(シボレー サイテーションや同キャバリエなど)に対抗できるような、ワイドトレッドで中型車並の車内スペース、安定感ある台形フォルムを持つ本格的なFF車を開発して輸出の主力とする計画が1977年8月にスタートします。

一方その頃日本国内でも、軽自動車を除く『国内登録車市場500万台時代』でシェア40%、つまり販売台数200万台体制の構築を目指し、新たな販売手法を模索する実験的な要素も兼ねた新販売チャンネル創業が決定していました。

新チャンネル名は英語で展望を意味し、さらに頭文字のVは勝利のVであると同時に、第5チャンネルを意味するローマ数字のV(5)にも引っ掛けて、『VISTA(ビスタ)』と決定。

さらに、新たなFF小型車をカローラ店取り扱い車(カムリ)だけでなく、トヨタビスタ店でも販売することにして、その名も『ビスタ』と名付け、期待のほどを伺わせました。

 

初の横置きFF、初の横置きFF用DOHCエンジン搭載

初代トヨタ ビスタ 5ドアハッチバック 出典:https://www.favcars.com/toyota-vista-hatchback-v10-1984-86-wallpapers-6558.htm

新型FF車の開発はトヨタビスタ店の創業(1980年4月)には間に合わず、当初はカリーナの上級版的なセリカカムリ(実質的な初代カムリ)をカローラ店と共に販売し、2年後の1982年4月にようやく初代ビスタがデビューします。

カムリとは異なり4ドアセダンのみならずテールゲートつきの5ドアリフトバック車もラインナップ(1982年8月追加)しており、フロントグリルも『VISTA』が『TOYOTA』になれば輸出型カムリそのままで、カムリ以上に輸出型カムリに近い車です。

なお、新時代を担うべく作りこまれたこの新型車には、以下の『トヨタ初』がありました。

 

『トヨタ初のエンジン横置きFF車』

先行したターセル / コルサは、FR車(フロントエンジン・後輪駆動)とのエンジン共用も見越して縦置きエンジンを採用するなど、FF車としては若干思い切りに欠けていましたが、今回はエンジンスペースを前後方向に短くできる横置きエンジンを採用しました。

このエンジンとミッションを直列に横置きして前輪を駆動する『ジアコーサ式』ではエンジンルームの前後方向は短く、キャビン(車室)にミッションが食い込まないため、キャビン長を長くできる上に前席の足元スペースも広いとスペース効率的には良いことづくめです。

現在のFF車はほとんどこの方式を採用していますが、トヨタではビスタ / カムリが『トヨタ初』でした。

 

『トヨタ初のDOHC(ツインカム)エンジン搭載FF車』

1984年6月のマイナーチェンジで、2リッター直列4気筒DOHC16バルブのスポーツツインカムエンジン、『3S-GELU』(ネット140馬力)をトヨタ車として初搭載であり、『DOHCエンジンを横置き搭載したFF車』としては、トヨタ初ではなく日本車初です。

3S-GE自体もエンジン横置きFF車用に開発されたものとしては初のDOHCエンジンであり、その後も市販車用としては1998年発売のアルテッツァが唯一の縦置き3S-GEでした。

 

主なスペックと中古車相場

初代トヨタ ビスタ 4ドアセダン 出典:https://www.favcars.com/toyota-vista-v10-1982-84-wallpapers-188085

トヨタ SV10 ビスタ 4ドアセダン VX 1982年式

全長×全幅×全高(mm):4,415×1,690×1,395

ホイールベース(mm):2,600

車両重量(kg):1,040

エンジン仕様・型式:1S-LU 水冷直列4気筒OHC8バルブ

総排気量(cc):1,832

最高出力:74kw(100ps)/5,400rpm(グロス値)

最大トルク:152N・m(15.5kgm)/3,400rpm(同上)

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:皆無

 

まとめ

初代トヨタ ビスタ 4ドアセダンVX 出典:https://www.favcars.com/toyota-vista-v10-1982-84-images-188091

初代ビスタにはメカニズム面でアピールすべき点が多く、その後のミドルクラス以下全トヨタ車の原型と言うべき歴史的な1台でしたが、それだけ素晴らしい技術が注ぎ込まれても、実際には目的を実現するためのパッケージングという手段にすぎません。

その目的とはもちろん、『北米でとにかく売りさばくこと』であり、そのためには『小型軽量コンパクトなのに大柄なアメリカ人がゆったり乗れる』必要があり、それでいて『十分な動力性能も備えたエンジンも不可欠』だったのです。

それを追い求めていった必然がビスタ / カムリであり、それが見事に大当たりしたアメリカではカムリが現在まで続く超ベストセラー車となったものの、当時の日本では『小さくて安いのにクラウンより広い合理的な車』よりも、ドラマチックな車が求められていた時代。

初代ビスタのコンセプトが日本でも認められるようになるには、少々長い時間が必要でした。

 

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