1950年代中盤から1960年代前半にかけ、竹の子が生えるように現れては消えていった軽自動車メーカーですが、さすがに1970年代に入ると現在まで続く流れが大体見えてきました。すなわち勢いのあるメーカーとモデルチェンジの開発費にすら悩むメーカーへと明暗が分かれるのですが、どちらかというと後者寄りだったスバルはこの時、初代レックスで辛くも生き残りを果たしたのです。

 

 

 

 

デビュー当初、まだ360ccだった頃の初代スバル レックス  / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

名車スバル360最後の直系子孫、初代レックス

 

初代スバル レックス / Copyright(c)FUJI HEAVY INDUSTRIES Ltd. All Rights Reserved.

 

1972年7月に発売された初代レックスは、良くも悪くもスバルらしい軽自動車でした。

基本的な構成は、先代に当たるR-2で水冷化されたものの、相変わらずの2ストローク直列2気筒エンジンをリアに積んで、後輪を駆動するRR(リアエンジン・リアドライブ)方式。

前後ともに搭載されたセミトレーリングアーム+トーションバー式の四輪独立懸架サスペンションはR-2と共通で、荷室確保のためにフロントスペースをたっぷり取り、フロントエンジン車かと間違えそうな立派なフロントグリルを持つ2BOXスタイルはR-2後期同様でした。

しかし、これだけではR-2のマイナーチェンジ版なのでは、と思ってしまうところですが、全高がR-2より90mmも落とされ、パッと見でロー&ワイドに見えるスタイリッシュさが、モデルチェンジと同時に車名を『レックス』(ラテン語で『王様』)と変えた所以です。

もっとも、それだけ全高を下げれば車内寸法にシワ寄せがいくのは当たり前で、R-2も初代レックスに当初は無かった後席つきで4人乗り可能なバンや4ドアセダンが発売されるまで、空冷エンジン仕様の併売が続けられています(1973年2月まで)。

とはいえ、まだ厳しい排ガス規制が施行される前だった為、ツインキャブで37馬力を誇るGSRなどスポーツグレードも設定されており、初期の初代レックスはソコソコ走りも楽しめるスペシャリティカー的な軽自動車だったのも確かです。

 

360ccから550cc、そしてボンバン時代へと生き延びた、唯一の主力軽自動車

 

初代スバル レックス / Copyright(c)FUJI HEAVY INDUSTRIES Ltd. All Rights Reserved.

 

さて、特徴的だったのはスバル360やR-2から受け継いだものだけではなく、初代レックス自体にも360ccから550cc時代へと移行に成功し、初代スズキ アルトの登場で軽ボンバン(ボンネットバン)時代まで生き残った唯一の主力軽自動車、という特徴がありました。

ここで、1970年前後に存在した軽自動車メーカー各社の、主力となるセダンタイプ軽乗用車(バン含む)に関わる動きをざっと見てみます。

【スズキ】

エンジン開発遅延以外ほぼ無風で550cc化、1979年革命的廉価ボンバン初代アルト発売。

【ダイハツ】

地味なるも無風で550cc化、アルトの翌年に初代ミラ(ミラクーレ)発売。

【三菱】

2代目ミニカのバンのみ1981年まで継続販売しつつ、3代目と4代目をまたぎ500ccを経て段階的に550cc化、FF化は一番最後(1984年)。

【マツダ】

1972年新型のシャンテ発売後、オイルショックのロータリー危機で軽自動車の独力開発不可、1976年に軽トラ以外一時撤退(1989年スズキをパートナーに再参入)。

【ホンダ】

初代シビックに社運を賭け生産集中、1974年に軽トラ以外一時撤退(1985年自力再参入)。

【コニー(愛知機械工業)】

1971年1月までに『コニー』ブランド軽自動車から全面撤退し、日産傘下企業へ。

以上、無風か転んでもただでは起きない形で1970年代を乗り切ったスズキ・ダイハツ・ホンダは今でも軽自動車メーカーとして健在ですが、他社はそううまくはいきませんでした。

では、スバルはどうだったかと言えば、以下のような慌ただしい流れになります。

・4人乗りバンを作るにも荷室スペースが足りず、乗用登録のワゴンを発売。

・後席背もたれを起こし荷室長を、ハイルーフ化で後席ヘッドスペースを確保し4人乗りバン発売するが、最終的に全高はR-2超え。

・結果的に、フロントのトランクも使えばかなり荷物が載る頼もしい運び屋へ。

・三菱同様、500ccのレックス5を経てレックス550へ550cc化。

・FFの次期型開発が長引いたか、9年も販売するロングライフモデル化。

・初代スズキ・アルト発売で、急遽バンの廉価仕様『ファミリーレックス』発売。

・オートマ時代対応のため、R-2を最後に廃止した電磁式オートクラッチを復活。

まさに火がついては消すような慌ただしさでしたが、結局初代レックス1台のみで全て乗り切ってしまう柔軟性は『偉大』で、しかもその先に待っていたのはスズキやダイハツに追いつく先進的な2代目、FFレックスなので大したものです。

中島飛行機以来の社風なのでしょうか、『苦境になると何かよくわからない底力を発揮し、いつの間にかそこから脱出してしまう』というスバルの特徴は、初代レックスによる1970年代スバル軽自動車史でも発揮されていました。

それだけに2012年の軽自動車独自生産撤退は残念でしたが、果たしてこの先の展開はどうなのか?ちょっと楽しみだとも思えます。

 

オイルショックも何のその、ミニカーレースで走ります!

 

初代レックス登場時はまだツインキャブのハイパワー版GSR(37馬力)があった。 / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/488-subaru-rex-1972-k21.html

 

発売直後にオイルショック(1973年)があり、さらに厳しい排ガス規制ですぐさまスポーティグレードを廃止しなければいけなかった初代レックスなので、モータースポーツにはあまり縁が無さそうにも見えます。

しかし、むしろそういう時代だからこそ楽しめるモータースポーツとして『ミニカーレース』は盛況だったようで、初代レックスも1972年以降JAFモータースポーツで公開されているリザルトに、名前が頻繁に出ていました。

一例を上げると、1972年11月19日開催の東京プロダクションカーレース(筑波サーキット)で、全18台が出走したうち15台がスズキのフロンテかフロンテクーペでしたが、1台はダイハツ フェローMAX、2台が初代レックスで、レックスが優勝してます!

優勝ドライバーの高岡 祥郎も46年後に紹介されるとはビックリだと思いますが、リザルトにあるので間違いありません。

ちなみに、ミニカーレースでレックスの名は1976年頃まで出てくるので、昔参戦していた人は、主要レースを除くJAFのレースリザルトで検索してみるのがオススメです。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代スズキ アルト登場で超廉価ボンバン時代に突入、急きょ追加された『48万円レックス』ファミリーレックス / Photo by JOHN LLOYD

 

スバル K44 レックス(ファミリーレックス) オートクラッチ 1962年式

全長×全幅×全高(mm):3,185×1,395×1,385

ホイールベース(mm):1,920

車両重量(kg):565

エンジン仕様・型式:EK23 水冷直列2気筒SOHC4バルブ

総排気量(cc):544

最高出力:21kw(28ps)/6,000rpm(グロス値)

最大トルク:41N・m(4.2kgm)/3,500rpm(同上)

トランスミッション:4MT(電磁式オートクラッチ)

駆動方式:RR

中古車相場:39万~56万円(各型含む)

 

まとめ

 

RR車の軽バン作りは手慣れたもので、初代レックスバンでもこの通り。/ 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/510-subaru-rex-1979-550-van-k21.html

 

当初想定していたような『R-2よりロー&ワイドでスポーティな軽スペシャリティカー』から次第に外れていってしまった初代レックスですが、代わりにもっと重要な役割を担うことになりました。

排ガス規制や低燃費志向への対応、軽自動車規格改正による排気量アップとボディ拡大、実用性強化を求められてのハイルーフバン化に、激安ボンバン時代到来で48万円レックスの発売(ファミリーレックス)と、オートクラッチ化。

それらは全て、より効率的なパッケージングを持つ2代目のFFレックスで根本的な対応が図られますが、それまでの9年間に寄せられたオーダー全てを1台でこなした軽自動車は、初代レックスをおいて他にはありません。

「確かスポーツカーみたいになるはずだったんだけど…。」と首をひねる初代レックスがモデルチェンジを迎えようとする頃、その背後ではスバル360が「そりゃワシの孫だから仕方ない。」と笑っていたかもしれません。

 

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