1980年代中頃から1990年代前半期は、バブル経済の真っ只中でした。そんな日本で女性にモテたい若者の必需品だったのが、「デートカー」です。しかしそれがどんなものだったか、今の世代にはよくわかりません。今回は、バブル期に時代を駆け抜けたデートカーを5台紹介します。
デートカーとは何ぞや?
「デートカー」とは文字通り、“デートに最適な車”のことであり、1980年代中期から1990年代前期までブームとなっていました。
今の若い男性のなかには、“デートに車は欠かせない!”と思っている方は、どれだけいるのでしょうか。
バブル期当時の男性にとって、“車はデートに欠かせないもの”であり、“女にモテたきゃとにかくカッコいい車に乗れ!”と、皆がこぞってスポーツカーを求めていました。
とはいえ、スポーツカーはコスパが高かったこともあり、若者は本格的なスポーツカーよりも、“見た目がカッコよく、そこそこ速い車”を求めていたのです。
そのため、おもなデートカーは初代ソアラや3代目プレリュード、S13シルビアなどで、どれも“スポーツカーのようにスタイリッシュで、そこそこ速く、安い”車でした。
これらは“スペシャリティーカー”とも呼ばれ、多くの若者から支持されて、大ブームとなったのです。
時代を風靡したデートカーを5台紹介
では、バブル期を駆け抜けた、代表的なデートカーを5台紹介していきましょう。
初代ソアラ Z10型
1981年から1986年まで販売された初代ソアラは、「未体験ゾーンへ。」、「SUPER GRAN TURISMO」というキャッチコピーとともに登場しました。
そして、そのキャッチコピーを体現するかのように、初代ソアラにはタッチパネルで操作できるマイコン式エアコンや、走行可能距離・目的地到着時刻演算機能を持つ、ドライブコンピュータが備えてられていました。
エンジンはGT系列がソアラ用ツインカムエンジンの5M-GEU、それ以外が1G-EUであり、5M-GEUは最大で170ps/24.0kg・mの出力を発揮。
全グレードで4輪独立懸架サスペンションを採用し、1983年のマイナーチェンジ後はショックアブソーバーを自動で制御するTEMSが装備され、より安定した走行が可能となっています。
その美しくカッコいい“スポーツクーペ”を体現したスタイルと、当時としては未来を感じられる装備によって、初代ソアラは多くの若者から絶大な支持を受けました。
2代目プレリュード AB/BA1型
「FFスーパーボルテージ」のキャッチコピーを掲げ、2代目プレリュードは1982年から1987年にかけて販売されました。
2代目プレリュードには1.8リッターのES型クロスフローエンジンが搭載されており、高圧縮比を実現したことにより、最大出力125psを達成。
200万円前後というお手頃な価格も魅力でしたが、2代目プレリュードの最大の面白さはそのスタイリングにありました。
リトラクタブルヘッドライトを装備した、美しく繊細なそのスタイルは女性からも支持され、“デートカー”という言葉の代名詞となったのです。
何より画期的だったのは、助手席のリクライニングノブが運転席側のシート側面にもついており、わざわざ助手席側に回ることなくシートを倒すことが可能に。これがスケベノブ(スケベレバー)と当時呼ばれていたのだとか。
3代目プレリュード BA4/5/7型
2代目が持っていたスタイリッシュさをさらに磨き上げたのが、3代目プレリュードです。
1987年から1991年まで販売されたこの3代目プレリュードは、量産乗用車で世界初となる機械式4WSが採用されており、フロント操舵角が小さい時にはリアも同様に動くという特性がありました。
エンジンは2.0リッターのB20A型で、最大出力は145ps。
先代から変更されてフロント部分にのみに採用されていたダブルウィッシュボーン式サスペンションをリアにも採用し、より走行性能が追求されています。
デートカーとしての最大の強みであるスタイリングは、ワイド&ロープロポーションを維持しつつ、先代と比べて曲線的なものへと変更され、より美しさを増しました。
シルビア S13型
1988年から1993年にかけて販売された、シルビア S13型は、デートカーの代名詞を3代目プレリュードから受け継いだ車です。
当時の雑誌やCMでは「アートフォース・シルビア」のコピーが打ち出され、グッドデザイン大賞を受賞するなど、その未来的なシルエットは女性からも高い人気を得ています。
このシルビア S13型は希少なFRスポーティークーペだったことから、女性だけではなく走りを求める男性からの支持も集め、今も高い人気を誇るモデルです。
リアマルチリンクサスペンションを装備した足回りと、135psのCA18DE型、175psのCA18DET型(ターボ車)エンジンを搭載していたので、スポーツ走行にも十分適しており、サーキットでも活躍。
マイナーチェンジ後は140psのSR20DE型と205psのSR20DET型(ターボ車)を搭載し、全体的なシルエットはそのままに、シルビア S13型は華麗に時代を駆け抜けました。
S-MX
バブル期が終わった1996年から2002年の期間、ホンダから販売されていた車がS-MXです。
今はトールワゴンと呼ばれるであろうこのS-MXは、「恋愛仕様」というキャッチコピーで登場し、ドライバーシートとナビシートの間がなく、完全にくっついていたのが特徴です。
さらに、前席だけではなく後席も倒してフルフラットにできたので、車内でカップルが寝転がれるという仕様でした。
また、S-MXのシートをフルフラットにしたときに、枕元の位置にはティッシュボックスを収められるグローブボックスがあったことが、いろいろと話題になりました。
しかしこの「恋愛仕様」が仇になったのか、順調な売れ行きを見せていたS-MXはやがて失速。
2002年3月に生産を終了し、たった1代限りで終わりました。
ちなみにこのS-MX、走りの性能はあまりよくなく、特にCMで「白き白い風」と呼ばれたローダウン仕様は最悪だったとか。
「恋愛仕様」のイメージが強すぎたがゆえに、普通の車中泊に使いたい人が買いづらくなったことが、失速の原因ではないかといわれています。
まとめ
バブル期が終わりを迎え、かつてデートカーともてはやされた車達は、多くの人達から見向きもされなくなりました。
しかし、かつてデートカーと呼ばれた車達は、今やその“本当の良さ”がわかる人によって愛され、大事な思い出と大切な“今”を乗せて走り続けています。
バブル期の熱狂から覚めたからこそ、人々はこれらの車と真摯に向き合えるようになったと、言えるのではないでしょうか。
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