近年『25年ルール』と呼ばれる規則のもと80~90年代の国産車の多数が北米へ輸入され、これらの中古車相場が高騰しています。そんな25年ルールとは、いったい何なのか。今後どのような車種の相場価格の高騰が予想されるか、気になるところです。

掲載日:2019/07/08

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ワイルドスピードやイニDで大人気!25年ルールで国産名車が北米へ多数流出

アメリカは中古車を国外から輸入することをかなり厳しく制限されており、右側通行の国であるカナダやアメリカでは、特に日本車のような右ハンドル車の輸入を、実は基本的には認めていないのです。

しかし、25年を経過した旧車であればそれも対象外。

これがいわゆる25年ルール(カナダでは15年ルール)と呼ばれる規制緩和措置で、昨今は80年代から90年代の日本車が、どんどん北米に流れています。

そんな北米においては、映画『ワイルドスピード』でトヨタA80型スープラをはじめとする国産スポーツカーが人気を博し、さらにはリアルカーゲーム『グランツーリスモ』の大ヒットや、海外でも人気の漫画『イニシャルD』、そしてドリフト競技の普及により、今まで北米に輸出されていなかった日本車たちに注目が集まっているのです。

そのため、A80型スープラは北米で既に販売はされていますが、1993年から販売をスタートし、25年ルールが適用となるのが2018年なので、今後さらなる中古車相場価格高騰が予想されます。

人気はスポーツカーだけでなくSUVやバン、軽までも

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25年ルールでは、スポーツカーだけでなくSUVや軽自動車でも需要が高まっています。

SUVでは三菱 パジェロやトヨタ ハイラックスサーフ、ランドクルーザー、バンでは三菱 デリカ、トヨタ ハイエース、さらに日本市場のみの販売だった軽自動車のマツダ AZ-1やホンダ ビート、中にはキャリィやホンダ アクティといった軽トラックにまで注目が集まり、スポーツカーだけでなく80〜90年代の中古車は、ジャンルを問わずに輸出されました。

そんな1980年代半ばといえば、日米貿易摩擦が起こり『UAW(United Auto Workers|全米自動車労働組合)』の組合員が輸入された日本メーカー車を軒並み壊していったことが思い起こされますが、その時代のクルマが現在はウェルカムムードで輸入されていることを思えば、なんだか不思議な気分です。

日本では廃車寸前の中古車が北米で極上中古車扱い

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北米で正規販売されていたモデルであっても、日本で使用されていた中古車は現地で乗られてきた中古車に比べて、良質車とされ、25年ルール適用により輸入された右ハンドルの中古車を、あえて購入するユーザーもいます。

日本車は高性能で壊れにくく、部品供給がスムーズで整備性も良いだけでなく、日本では2年ごとに厳しい車検を通さなければならなかったり、ユーザーの多くが整備やメンテナンスを専門の整備工場に依頼することなどから、多走行距離車でも、そのほとんどはまだまだ走れる代物です。

さらに日本では、高いガソリン代や税金、車検の整備費用やクルマを所有するための高い駐車場代など、維持費が他国と比べても比較的高額であるため、一定以上の収入がなければクルマを持てず、そのぶん大切にクルマを扱うのが日本人の価値観です。

それなのに、クルマが古くなるほど増税対象になることや任意保険料も高くなるなどの理由により、走行距離10万km程度で廃車というのが多くの日本人の考え方ですが、北米では10万km越えの中古車を”過走行”であるとは感じないようです。

なぜなら、自動車社会の北米では30万kmを超えても走り続けるクルマは多く、重大な故障や事故でスクラップにならない限り、乗り続けるのが北米ドライバーの価値観。

また、整備は自らのガレージで行うドライバーが多いため、クルマに対する付き合い方は日本人と比べれば雑な部分も多々あります。

そのため、25年を経過した走行距離10万km超えの旧車でも、日本で乗られていた車体というだけで、北米では良質中古車として扱われるのです。

これから値上がりすると思われる中古車は

ここでは、これから25年ルールが適用されることにより、中古車相場価格が高騰すると予想されるモデルを紹介していきましょう。

日産・R33型スカイラインGT-R

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これから間違いなく相場が高騰するのは、日産 R33型スカイラインGT-Rです。

スカイラインR32型GT-Rの中古車が北米へ輸出されるようになり、中古車相場が高騰しましたが、これほど人気となった理由は、元々スカイラインの人気が高かったことだけではなく、現行モデルを除いたGT-Rは北米へ輸出されなかったことにあります。

それでも多くのレースで勝利を挙げていたR32型GT-Rは、世界中で高い認知度と人気を得て、25年ルールが適用となってから輸出専用の中古車バイヤーが多くのR32型GT-Rを仕入れて北米へ流しているようです。

そして、その後継であるR33型GT-Rは1995年1月の発売。

25年ルールが適用になるのは、2020年になるわけです。

トヨタ・セリカGT-FOUR

出典:http://www.toyota-catalog.jp/catalog/

トヨタ セリカは、WRCでチャンピオンを獲得した世界的に知名度の高い2ドアスポーツカーです。

北米でもセリカは販売されていましたが、ST205世代のセリカGT-FOURについては北米への輸出はされませんでした。

そんなセリカGT-FOURは1994年2月発売のため、今年2019年から25年ルールが適用。

北米での需要が増し、日本の中古車相場が急騰する可能性がかなり高い1台です。

三菱・FTO

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三菱 エクリプスやGTO、ランエボは北米市場で高い人気を得ており、その中でもワイルドスピードの中で故 ポール・ウォーカー氏が演じる主人公ブライアンが、三菱 エクリプスに乗って登場したことで人気を後押しする形となりました。

日本国内ではエクリプスに近い存在がFTOだったのですが、北米で販売されなかったため知名度が低くマイナー車扱いです。

しかし、エクリプスと同じ2.0リッターV6エンジンを搭載したコンパクトスポーツという点で、エクリプスやミラージュと同じくチューニングベースとして今後人気が出てくることが予想され、2019年から25年ルールが適用となるため、今後の中古車相場の値動きに注目が集まります。

ホンダ・シビック タイプR(EK9型)

© Honda Motor Co., Ltd.

初代モデルから北米の大衆車として愛用されてきたシビックは、5代目モデルEG6型あたりから、JDMにおけるカスタムベースとして根強い人気を誇っています。

また、タイプRも海外で生産・販売された世界的なホットハッチモデルになっていますが、タイプRの元祖 EK9型は右ハンドル仕様のみしか生産されていませんでした。

つまりは北米での正規販売がなかったため、25年ルールが適用となれば、EK9型シビックタイプRの中古車が北米へ輸出され、日本での品薄が加速することが予想されます。

そんなEK9型シビックタイプRの発売は、1997年だったため25年ルールの適用は、あと3年後の2022年です。

日産・S15シルビア スペックR

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日産シルビアは北米で販売されていましたが、S15型シルビア スペックRの北米販売はありませんでした。

しかし、北米でドリフト競技が盛んに行われるようになり、現在はシルビアS14が活躍を見せています。

その流れからいくと、S15は最もドリフトに適したマシンでしょう。

25年ルールの適用は、2024年とまだまだ先ですが、それまでには今以上にドリフト競技が過熱し、S15シルビアの価格は北米だけでなく全世界で高騰するかもしれません。

まとめ

スカイラインGT-RやA80型スープラは、25年ルールが適用されていなくても、状態が良いものはプレミア価格で販売されています。

そのため、これから北米でも販売可能になれば、国内のタマ数がどんどん減っていくことは必然。

これほど国産スポーツカーが世界中のクルマ好きから称賛されるのは日本人としては誇らしいのですが、今後はどんどん一般の人では手が届かない価格になる事が予想されます。

絶版になった古い国産スポーツカーを購入したいなら、北米へ流れる前に決断することをオススメします。

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