90年代前半、地方選手権・全日本選手権SPクラスやオートバイの甲子園、4時間耐久レースも全盛期を迎える中、4st400ccレーサーレプリカも限界性能を引き出すべく、毎年のように進化を遂げていました。今回は当時の若者を魅了し、今も人気の衰えない90年代生粋の4stレーサーレプリカ4選を、ご紹介します。
掲載日:2017/07/15
CONTENTS
ホンダ生粋のレーサーレプリカNC35RVF
1994年VFRの後継機として生まれたRVFは、他メーカーが並列4気筒で開発を進める中、レーサー直結、生粋のレプリカとして唯一V型エンジンを搭載した至高の一台です。
ワークスレーサーRVF750で磨かれた高度な技術をふんだんに取り込み、走る・曲がる・止まるという基本性能をライダーの感性の領域まで徹底して追及する[PROSPEC]というコンセプトの元、開発された高性能のレーサーレプリカでした。
RVF DIRECT BROTHERのキーワードの元、ホンダ独自のカムギヤトレーンを採用したコンパクトなV90エンジン、そしてプロアームや倒立フォークを搭載し、SPレース・4時間耐久レースなどでも活躍!
これぞ、レーサーレプリカと誰もが認めるほど妥協なく作られた分、同クラスのレーサーレプリカとしては高額となりましたが、大人気を博した一台です。
また、V型エンジンとカムギアトレーンの音が独特で、V型エンジンの特徴である低速域からのトルクフルな特性を生かし、レースの世界でも大活躍をした至高の一台として現在でも人気の車両です。
基本スペック 94年モデル
型式:NC35
エンジン:NC13E型 399cm3 4ストローク 水冷DOHCV型4気筒
最高出力:38kW(53PS)/12,500rpm
最大トルク:36N-m(3.7kgf-m)/10,000rpm
乾燥重量:165kg
フレーム:ダイヤモンド
全長x全幅x全高:1,985mm x 685mm x 1,065mm
ヤマハYZFレプリカ、FZRの最終進化・FZR400RR
ヤマハの4stレーサーレプリカと言えば、FZR。
1986年に生まれ、エンジン・フレーム・足回りの有機的な統合という意味のジェネシスコンセプトで開発されました。
そして、ダウンドラフト、ジェネシスエンジンを積んだFZR400は89年大きな変化を遂げ、FZR400RRとして生まれ変わったのです。
アルミデルタボックスフレームは新設計となり、ジェネシスエンジン45度の前傾シリンダーも35度へと変更。
ホイールもフロント17インチ、リア18インチから前後17インチ、タイヤサイズはフロント110から120へ、リア140から160へワイド化され、フロントライトが一体化されたプロジェクターランプに変更されました。
1990年にはSPレース向けとして、FZR400RR‐SPが登場。
こちらは、クロスミッションに強化クラッチ、減衰力付フロントフォーク、水冷式オイルクーラーなどを装備した車両で、F-3やSP仕様にしてちょうどよいと感じるほどのフレームの剛性を持つ車両でした。
また、FZRにおいてもヤマハハンドリングは健在で、自由自在にラインどりができるこの車両は、街中でも硬すぎるフレームと感じることはなく、ヤマハらしい汎用性の高さと、高い戦闘力を持つ車両として大人気となったのです。
基本スペック
型式:3JT
エンジン:水冷4ストDOHC並列4気筒
最高出力:59ps/12000rpm
最大トルク:4.0kg-m/9500rpm
乾燥重量:160kg
フレーム:アルミデルタボックス
全長×全幅×全高:1975×705×1090
極限までレーサープリカGK76 GSX-R400
1984年にクラス最高馬力・最軽量のレーサーレプリカとして発売されたGSX-R。
初期型でありながら59ps・乾燥重量152㎏というカタログスペックは現在に至るまで、400cc4気筒クラスで最高値・最軽量というスズキの力作でした。
その後、1990年大幅なモデルチェンジが行われましたが、各メーカーが現在も使われているアルミツインスパーフレームに移りゆく中、GSX-Rはあえて、1989年世界耐久選手権で優勝したGSX-R750で使用されていたアルミダブルクレドールフレームを使用しています。
それにより、「パワフルなエンジンにはそれを受け止める高い剛性をもったフレームが必要」という当時のトレンドとは少し違う方向性で、しなりを利用して曲がる車体となっていました。
チューニングメーカー・ヨシムラの創設者でもあるポップ吉村氏もこの考え方をもっていた1人で、スズキ車メインでレースをしていたヨシムラの影響もあったのではないでしょうか。
倒立フォーク、水冷式オイルクーラー、異形4ポットキャリパーを装備し、1991年モデルではSP仕様のみだったリザーバータンク付きリアサスが標準装備となる本格的な創りとなりました。
クロスミッション、35mm大径キャブ、伸圧減衰力調整機構、ミシュランタイヤを装備したGSX-R400R SPと、SP仕様をノーマルミッションにしたSP2がラインナップされています。
そして、足回りも高速域でのコーナーリングを想定したものになっており、体を本気で入れて行かないと曲がらないという特徴を持っているのですが、これはRGV-γなどにも共通するもので、スズキ車特有の仕様となっているのです。
また、元々GSX-Rは他メーカーに比べてポジションはきついものとなっているのですが、さらにGK76型では7センチもステアリング位置が下がるなど、街中を無視したレーサー的なポジションとなっており、好き嫌いの別れるところでもありました。
しかしここまで、レーサーレプリカとして、ある意味妥協を許さず創られた、GSX-Rはスズキらしいオートバイの一つと言えるのではないでしょうか。
そして、ライダーにコントロールを要求してくる、このじゃじゃ馬ぷりがスズキ車のレーサーレプリカの魅力だと思います。
基本スペック
エンジン:水冷4サイクルDOHC四気筒
排気量:398cc
最高出力:59ps/12500rpm
最大トルク:4.0kg-m/10000rpm
車両重量:167kg(乾)フレーム:アルミダブルクレドール
カワサキ車の中で異彩を放つ最強のレーサーレプリカ ZXR400
カワサキはGPZの成功から、アンチレーサーレプリカ路線を貫いてきました。
そんな中、突如として現れたのがZXR400だったのです。
ZX-4の後継機とはなるのですが、全く別次元の完成された車両として突如現れたカワサキ渾身のレーサーレプリカがZRX400です。
カワサキではアンチレーサーレプリカ路線を貫く中、技術陣のうっぷんを晴らすべく創られたZXR400。
1989年当時レースシーンでしか目にできなかったクラス初の倒立フロントフォークを装備、アッパーカウルから直接エアクリーナーボックスにエアを投入するフレッシュエアインテーク、そしてNSRなどが初めてはいた150の太いタイヤをさらに超える160を初めてはいたミドルクラスでもありました。
そして、ZX-4に付いていた燃料系やハザードなど速く走ることに必要のないものは全て撤去。
また、1990年にはカム・バルブ・ピストン・スイングアーム・サスペンションを一新、そしてバックトルクリミッターと進化はとどまる事を知りません。
SPレース用に創られたZXR400Rはハイカム・クロスミッション・シングルシートを装備し、1990年には加速ポンプ付きFCRにフルアジャスタブル倒立フォーク、別体リザーバー付きリアサスペンションを装備しています。
翌1991年にはエンジン、キャブ、サスペンション、ブレーキ、フレームなどほぼ全面的に見直され、ライバルから卑怯だと言われるほどの驚異的な速さを見せつけていました。
そしてSPレースがほぼワンメイク状態となり、レースに出るなら、マシンはZXR400R一択と言われたほどでした。
しかし1993年の馬力規制を受け、中低速寄りにデチューンされました。
その後94年にさらにリファインされ、これが最終モデルとなっています。
とにかく、カワサキ技術陣がその当時の技術を詰め込むだけ詰め込んだ、カワサキらしからぬレーサーレプリカで、ゆえにとんでもない能力と魅力を持った歴史的一台となりました。
現在でも地方レースなどでは第一線で戦っている事実を見ても、驚異的な一台と言っていいのではないでしょうか。
基本スペック 90年モデル
型式:ZX400-J2
エンジン:ZX400GE型 398cm3 水冷4ストローク並列4気筒DOHC
最高出力:59ps/12,000rpm
最大トルク:4.0kg-m/10,000rpm
フレーム:ダイヤモンド
全長x全幅x全高:2025mm x 705mm x 1125mm
まとめ
レーサーレプリカと一口に言っても、一台一台開発コンセプトや、方向性の違いで全く仕上がりが変わってくることが、極限を目指すレーサーレプリカだからこそ見えてきます。
各メーカーの思惑や技術陣の思い、そんな事も感じられるのが80年代後半から90年代に創られたレーサーレプリカではないでしょうか。
最高の技術を純粋に速さとして競い合い、採算度外視と言っていいほど無茶をやれたあの時代。
そんな魅力がつまった数あるレーサーレプリカたちの中から、ここに紹介したのはほんの一部でしかありません。
この裏側にあるレースシーンであったり、開発秘話であったり、深く入れば入るほど面白い事がたくさん詰まっています。
その技術の粋と人の思いの粋を集めたレーサーレプリカ。
そんな事に思いを馳せながら、一度乗ってみてくださいね!
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