レース後に最も注目を浴びる”表彰式”。レースを終えたばかりのドライバーたちが心境を語ったり、シャンパンをかけ合ったりするシーンはレースの醍醐味と言えるでしょう。しかし、F1ではマシンやレース進行の他にこの表彰式にも多くの規定が設けられています。そこで今回は知られざるF1の表彰式の舞台裏に迫ってみようと思います。

掲載日:2018/10/04

©︎Pirelli

ドライバー、チームを讃える表彰式

©Pirelli

F1にはマシンそしてレースの進行に関する多くのレギュレーションがあることはご存知かもしれません。

ですが、レースの興奮がまだ冷めない内に行われる表彰式にも、多くの規定が設けられていることをご存じでしょうか。

マシンやコースに関するレギュレーションには安全性への配慮など明確な意図が見えますが、表彰式にもある細かい規定は、どのような意図で設けられているのでしょうか。

今回は、”表彰式のルール”をご紹介しながら、その目的にも迫っていこうと思います。

 

表彰台の高さ、人の配置は全て決まっている?

©Shunsuke Kawai

まず最初にドライバーが登壇する表彰台から見ていきましょう。

F1で使用される表彰台のセットはシルバーの枠組が目を引く豪華なデザインとなっており、左右の柱には歴代王者たちのサインが刻まれています。

2012年から導入されたこのセットは国旗が掲示される部分がディスプレイになっており、映像が風になびくという演出が仕掛けられています。

このセットはモナコGPを除いた全てのGPで使用され、表彰台のサイズは以下の通りに統一されています。

F1表彰台の大きさ

横幅:320mm

奥行:160mm

高さ:60mm

またサイズの他にも床面の色は緑色か濃紺に限定され、表彰台の前には120cmのスペースを取るなど、表彰台以外の箇所にも規定が及んでいます。

更に、トロフィーの渡し手の立ち位置までもルールブックに記載されており、その他にも表彰式には必ずテレビカメラマンの同行が必須であったり、撮影するテレビカメラの位置までがレギュレーションで決められています。

 

ピカピカのトロフィーにも多くの決まりが…

©Pirelli

では次に表彰式で手渡されるトロフィーについての規定をご紹介していこうと思います。

こちらは表彰台とは違い、GPごとによってデザインが異なります。

しかし、サイズはどのGPにおいても統一された規定が設けられているのです。

1位のドライバーとコンストラクター:50cm~65cm

2、3位のドライバー:35cm~45cm

また、サイズだけでなく重さは最大でも5kgまでに制限されています。

世界戦であるF1は、トロフィーを輸送することが前提なため、運べる程度の重さに留めること、なおかつ輸送しやすい形が望ましいとされています。

ちなみに、オーストラリアGPの場合は輸送の際にトロフィーを収納するケースが備えられています。

そして、表彰式で授与される順番は、最初に優勝したドライバーそしてコンストラクター代表者、次いで2位のドライバーから3位のドライバーへと、この手順までもレギュレーションで定められているのです。

 

シャンパンファイトのお酒を提供するには…6億4000万円もかかる!?

©︎Pirelli

続いては表彰式の中で最も盛り上がりを見せるシャンパンファイトについても触れていこうと思います。

これまでF1で使用されていたシャンパンは公式パートナーの提供を受けることが決まっています。

2001年からはマムが製造するマム・コルドン・ルージュが提供されていたのですが、2015年を最後にF1との契約が終了することになりました。

その理由はマムがフォーミュラワン・マネージメントに支払うスポンサー料が不十分だと見なされたためでした。

シャンパンファイトで使用してもらうためにマムはF1側にスポンサー料を支払っていたそうで、その額はなんと年間6億4000万円にも及んでいたと言われています。

しかし、これでも不十分だったとして2016年から公式パートナーはモエ・エ・シャンドンに移り、現在はより高額な契約を結んでいると見られています。

すぐに新たなパートナーが決まったのは良かったのですが、現在シャンドンが提供しているシャンドン・ブリュットという銘柄は、厳密に言えばシャンパンではなくスパークリングワイン。

これはシャンパンファイトの名称が変わるのではと密かに話題を呼んだのですが、意外にもどのレギュレーションにも抵触することは無く、名称が変更されることもありませんでした。

ちなみに、宗教的に禁酒と決められているバーレーンやアブダビの場合はアルコール飲料が使用できないので、ローズウォーターという炭酸水が代用されています。

 

表彰式を彩る音楽にも決まりが…

©Pirelli

表彰式では様々な音楽が流れますが、これにもレギュレーションによる取り決めがあります。

まず、最初に流れるのが優勝ドライバーとチームの国歌です。

ドライバーとチームの国籍が同一の場合には1度の演奏で終了し、サーキット側にはこれを聞き取りやすい環境を用意することが義務付けられています。

そして、シャンパンファイトの最中にも、必ず音楽を流すことが規定として定められており、ビゼー作曲のカルメン組曲~前奏曲が長年に渡って使用されています。

また、レース開始前にも開催国の国歌が演奏されますが、その際に全ドライバーがグリッド上に整列することが義務づけられており、これに遅れてしまうと戒告処分を受けることになります。

レース前も後も国歌にはその国への敬意が込められているため、中継で映される人たちにも誠実な対応が求められているのです。

 

記者会見室にも及ぶF1のレギュレーション

Photo by Tomohiro Yoshita

表彰式を終えた後には上位3名のドライバーが必ず記者会見を行うことが義務となっており、表彰台のすぐ近くにはそのための部屋が設置されています。

ここではレースを終えたばかりのドライバーに配慮した規定が目を引き、訪れる3名への飲み物とタオルが必ず用意されています。

この飲み物にも「3名のドライバーによって識別できないこと」というルールが明記されており、同じ飲み物であっても、常にランダムに行き渡るように配慮されているのです。

これほど小さな箇所にも公平性と安全性を保つための意図があるというのも、意外なレギュレーションのひとつ。

さらに部屋の温度にもドライバーへの気遣いが見られ、少し涼しめともいえる25℃になるように設定されています。

もしこれを超える場合は空調を入れなければならず、適切に換気されていることまでルールブックに記載があるのです。

表彰式だけでなく、記者会見室にもこれほどの多くのルールがあることを考えると、マシンに関する規定が多いのも納得せざるを得ない気がします。

 

まとめ

F1にとって大切なことはマシンやコースの安全性に関するものだけでなく、イベントが円滑に進められる事も重要です。

ちょっと細かすぎない?と思う方もいるかもしれませんが、世界中に放映される中継にも時間枠があり、イベントには多くの人が関わっているのでこうした取り決めは必要なことなのかもしれません。

またそこでテレビ中継での映し方や人の配置まで決めてしまうことを考えると、世界レベルの”スポーツ”であるということを、改めて認識させられますね。

しかし、記者会見室などは関わる人への親切心によって作られたレギュレーションもあるので、無機質なものばかりではないという点もレース裏での規定を知る面白味なのです。

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