世界最高峰のレース「F1」で戦っているマシンは一台あたりの価格も世界一。数億円とも、数十億円とも言われていますが、一体いくらするのか?気になる方も多いと思います。今回は値段の内訳や、高額になる理由も合わせてご紹介します。
掲載日:2018/04/08
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本当は計算できないF1マシン…総額約7億円
誰もが気になるF1マシンの値段。実は正確にいくらなのか?というのを特定するのはかなり難しいのです。
なぜかというと、F1マシンは基本的に「売る目的」で作っているものではなく、そこには人件費や開発費などもありますし、パートナー企業との契約等で金額が決まっていたり…。
なので、現在も海外のサイトを中心に値段をまとめたものがいくつかありますが、載っている値段はバラバラです。
ひと昔前には、約1〜2億円と言われていましたが、現在ではハイブリッドシステムの導入やエアロパーツの複雑化もあり、最低でも7億円はかかると言われています。
今回は「http://raconteur.net」で算出されているデータをもとに、見ていきたいと思います。
2015年シーズンのF1マシン一台の内訳
フロントウィング 約18,150,000円
アンダートレイ 約7,018,000円
ギアボックス 約90,750,000円
タイヤ1セットにつき 約157,300円
テレメトリーソフトウェア 約8,954,000円
ステアリング 約6,050,000円
モノコック 約121,000,000円
エンジン 約423,500,000円
ブレーキ 約18,029,000円
リアウィング 約11,374,000円
エキゾーストパイプ 約20,812,000円
合計 約726,000,000円
実際には、10億円以上かかっていると書いているメディアもあり、本当に実際の値段というのは謎。
ただ、一つだけ言えることは…宝くじで一等前後賞が1回当たっただけでは、足りないということですね。
F1パーツの値段をわかりやすく置き換えると
現実離れした値段がつくF1マシン。あまりピンとこない方も多いと思うので、市販のパーツやチューニングパーツなどと比較してみました。こうして比べてみると、F1マシンがいかに高額か…お分りいただけるかと思います。
ステアリング:市販のスポーツステアリング=2~3万円(F1は約600万円)
タイヤ:16インチのエコタイヤ(国内有名銘柄)=約4万円(F1は約16万円)
リアウイング:チューニングカー用ウエットカーボン製GTウイング=約20万円(F1は約1137万円)
ブレーキ:市販ブレーキキャリパーキット=約30万円(F1は約1800万円)
エキゾーストパイプ:スーパーカーのチタンマフラー=約40~70万円(F1は約2000万円)
F1パーツが高くなる理由
ステアリング(約600万円)
国内メーカーの高級ワンボックスカーが買えてしまうくらい高価。単純に金額を聞いて驚いた人も多いでしょうが、これにはちゃんと理由があるのです。
ステアリング自体はカーボンなどの軽量かつ丈夫な素材で作られていて、真ん中には様々な情報を確認することができる多機能液晶画面がついています。これも最近ではかなり高性能化しています。
さらにクラッチやラジオ、リミッターに燃料の混合比、ブレーキなどが設定できるボタンが所狭しと並んでいて、ゲームのコントローラーを彷彿とさせるほどのデザインになっているのが特徴ですね。
年々ハイテク化しているマシンの中枢部といってもいい存在なので、それだけコストがかかってしまうのです。
時速300kmで走っている中、たくさんのボタンを状況に合わせて使い分けているF1ドライバーは凄いとしか言いようがありません!
ちなみにステアリングはマシンを操る部分であるため、ドライバーのこだわりが出る部分でもあります。
ドライバーの意思が強かったり、好みに配慮してくれるチームの場合には、2人のドライバーで違う形状や素材のこともあります。
またドライバー、チームによって形が全然違うので、意識して見てみると面白いと思います。
F1に乗ることが簡単なんじゃないか?とよく言われますが、昔のF1にはなかった難しさがステアリングを見ればお分りいただけるのではないでしょうか。
ブレーキ
F1マシンのブレーキ本体は、実は市販車でも多用されているディスクブレーキです。
市販車では金属粉などさまざまな素材を樹脂で固めたブレーキパッドを鉄製のディスクローターに押しつけていますが、F1マシンはローターもパッドもカーボン製です。
このローターやパッドは摩擦が起こりやすく高温にも耐えられるため、F1マシンに求められる大きなブレーキ力を発揮させることができます。
現在のF1はシンガポールやバーレーンでナイトレースが行われていますので、ブレーキング時にホイールが真っ赤になるところを見ることができます。その時F1のブレーキは瞬間的に1000℃近くにもなると言われています。
照明で照らされてはいますが、周りが暗くなったサーキットでブレーキングによる真っ赤になるホイールは幻想的でとても画になります。是非、注目してみてください!
ウイング
レースを無傷で終えることが出来るのは本当に稀なことです。
時速300kmでバトルをするF1では、クラッシュまでいかなくても他車と軽く接触することは少なくなりません。
特に前の車に突っ込んだり、後ろから追突されたり、前後でバトルをするので、フロントウイングとリアウイングは1番接触する確率が高くなります。
もちろん壊れる可能性が高いため、スペアパーツがたくさん現地に持ち込まれるほどです。
ある意味“消耗品”でもあるのですが、その額が1800万円…。まさにF1ですね。
リアウイングにはDRS機能がついていたり、厳しいレギュレーションの中で、比較的アップデートしやすい場所でもあります。チームによって違う形になり、チームの考え方、色が出るところ。
現在のF1で空力は欠かせないファクターで、なおかつアップデートできる場所なだけにこれからも開発のスピードが速くなっていくと思われるので、今後もっと高価になっていくかもしれませんね!
エンジン
現在のF1はエンジンだけではなく、エンジンと回生エネルギーシステム(ハイブリット)がセットになっていて、これをパワーユニットと言います。
このように特別に作られているものなので、一概に値段をつけることはできませんが、ここで得られたデータは普段私たちが乗ってる市販車にフィードバックされています。
つまりF1のエンジンは走る実験室なのです。実験のための研究費と考えれば、高価な理由も納得ですね。
しかしあまりにもコストがかかるため、国際自動車連盟は今年の4月に2017年から2020年シーズンの新たなパワーユニットに関する国際協定を発表しました。
エンジンを供給しているメーカーが改正案に合意、2017年に約1億2000万円、2018年には約3億6000万円のコスト削減が見込まれるとのこと。
進化をやめると停滞ではなく、後退してしまうのがF1の世界。
世界最高の技術で争われるためにコストもかかる、しかしコスト削減しなくてはいけないのがF1の難しさ。
この難しさとの戦いもF1ならではなのです。
F1パーツはこうして作られている
F1のパーツはものすごく高いことがわかりましたが、何事も高いものにはそれなりの理由があります。
この映像で紹介されているのは、2016シーズンのレッドブル・レーシングF1マシン「RB12」のフロントサスペンションの一部に使用されているシリアルナンバーが付与された一本のボルト。
このようにその他の部品も生産・管理されています。
この動画を見るとF1のシビアさを感じずにはいられません。
イギリスのミルトン・キーンズにあるレッドブルチームの拠点に約550人の従業員がマシンを速く走らせるため、ドライバーの安全のため、そして世界一になるために日々ハードワークを行なっています。
このようにサーキットで戦っている人達だけでなく、チームの本拠地で働いている従業員も含め、チーム全員が戦っているのです。
F1は走る広告塔
このようにF1はとにかくお金がかかる。ではどのようにしてお金をやりくりしているのでしょうか?
これだけのお金がかかるF1にはスポンサーの存在が必要不可欠です。
全世界の人々が視聴するF1の広告効果は凄まじいものがあります。そのためF1マシンは別名走る広告塔と呼ばれます。
ドライバーやチームがスポンサー探しに奔走しているのは、それだけお金がかかり、そうしなければ活動できないからです。
スペースと貼り位置に応じて相当の広告料を要求します。
トップチームには高い価格がつくらしく、下位チームはスペースが埋まらず、泣く泣くディスカウントすることもあるそうです。
2008年が年間予算が一番高かったと言われていますが、2008年にスポンサー、パートナーからの収入が一番高かったチームがマクラーレンでした。
メルセデスベンツ、エクソンモービル、ジョニーウォーカー、エミレーツ航空、シーメンスなどの大口のスポンサーを抱えていて、総額421億円でした。
まとめ
モータースポーツの最高峰、F1マシンのお値段。皆さんも予想していたかもしれませんが、改めて知ると桁違いでしたね。
この宝くじ1等前後賞が当たっても足りないくらいのコストがかかるマシンを操るF1ドライバーたち。その責任感はものすごいものであることでしょう。
本当、頭が上がりません!
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