ホモロゲーションとは、「承認」という意味で、モータースポーツの世界では、競技車両がレースに出場するに適しているかを承認する規定を指します。2~30年前はその規定をクリアするために”ホモロゲモデル”が市販されていましたが、現在ではほぼ販売されなくなりました。なぜ、ホモロゲモデルは販売されなくなったのでしょうか。

掲載日:2019.10/30

出典:http://www.lmpcars.com/20090906/lancia-delta-s4-stradale-2/

ホモロゲーションとは?

出典:http://www.roadandtrack.com/

ホモロゲーション(以下ホモロゲ)とは、「承認」という意味で、モータースポーツの競技車両がレース出場に適しているかを承認する規定です。

同じレースを戦うのに、軽自動車とGT-Rでは勝負にならずレースも白熱しないわけで、車体サイズ、エンジン出力、駆動方式などを均一にするための規格が、ホモロゲなのです。

当然、すべての自動車レースでホモロゲは存在するのですが、一般的にホモロゲが必要なレースといえば市販車ベースのレースで、2019年現在では世界ラリー選手権(WRC)、世界ラリークロス選手権(WRX)、世界ツーリングカーカップ(WTCR)が代表的です。

市販車ベースのレース車両に必要なホモロゲには生産台数の規定があります。
以前はホモロゲ取得のために必要とされていた市販車の生産台数が非常に少なく、しかもエンジンやメカニズムに大幅な改造は認められませんでした。

そこでメーカーは、レース参戦予定車両に準じたモデルを市販し、ホモロゲを取得してレースに参戦していたのです。

つまりホモロゲモデル人気の一因は、ほぼレース車両と同一のマシンを一般でも入手できる点にありました。

しかし最近では、一般ユーザー向けのホモロゲーションモデルは影を潜め、レース用車両をプライベーターに販売しています。

TCRのホモロゲは?

出典:http://media.fiawtcr.com/press-release/prepare-for-lift-off-all-action-fia-world-touring-car-cup-to-thrill-marrakech/

最近のレースのホモロゲの内容は、どのようなものなのでしょうか?

2019年のTCRのホモロゲを見てみましょう。

4または5ドア
前輪駆動
全長4.2m以上
全幅1,950mm以下
最低重量はベース車のギアボックスを搭載する場合は1,230kg、レース用ギアボックスを搭載する場合は1,265kg(ドライバーを含む)
シングルターボを装着した4気筒の量産型ガソリンエンジンかディーゼルエンジン
排気量1,750cc~2,000cc
最大出力350PS、最大トルク420Nm
ウェットサンプ式
量産車と同じ触媒
ハイブリッドシステム禁止
テレメトリ禁止
ギアボックスは量産車のものかTCRが定めるパドルシフトのレース用ギアボックス
フロントサスペンションは量産車のレイアウトだがパーツは自由
リアサスペンションは量産車のデザインだが強化部品にすることができる
フロントブレーキは最大6ピストン、ブレーキディスク最大直径380mm
リアブレーキは最大2ピストンで量産車のアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)を使用できる
ホイールサイズはリム最大10インチ×18インチ
最低地上高80mm
トラクションコントロールシステム(TCS)などのドライバーエイドは基本的に禁止だが、許可されているレースもある[4]
車両価格13万ユーロ(約1,670万円)以下

 

(Wikipediaより引用/出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/TCR_(%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E7%AB%B6%E6%8A%80))

上記に加えてFIAのグループAに準じるベース車両であることも必要で、連続する12カ月間に2,500台以上の生産が求められます。

さらにベース車両になんらかの改造を加えたエボリューションモデルなどをベースにする場合には、ベース車両の生産台数に加えて2,500または5,000台の追加生産が必要です。

ベース車両は、C/DセグメントのFFセダン/ハッチバック/ワゴンをベースにしていると考えると良いでしょう。

現在購入可能なホモロゲモデル

現在市販中の車両を見てみても、日本国内でホモロゲーションやエボリューションと銘打っているモデルはありません。

代わりに通常グレードとして、レース技術をフィードバックした高性能グレードが販売されています。

スバル WRX STi

スバル WRX STI

出典:https://www.media.subaru-global.com/ja/

2019年12月23日で受注の締め切りを発表したスバル WRX STiは、ラリーマシン直系のテクノロジーを搭載しています。

ベース車両であるWRX S4と比較すると、最新エンジンのFA型ターボではなくレース実績の多いEJ型ターボを採用。

WRX S4では標準装備の先進安全装備のアイサイトは装備されず、代替の先進安全装備がオプション設定されます。

足回りは前後ブレーキにbrenbo製18インチベンチレーテッドディスクを装着し、ミッションはスポーツトロニックから6MTに変更されてスポーツドライビングを楽しむことが可能です。

日産 GT-R NISMO

日産 GT-R NISMO 2020年モデル

© 日産自動車株式会社

市販開始から12年が経過した日産 GT-Rは、現在もなお改良されてレースマシンとしての戦闘力を維持しています。

中でもGT-R NISMOは、GTレースからフィードバックされたノウハウが注ぎ込まれ、ベースグレードとは一線を画す存在です。

ターボは新開発のIHI製GT3ターボタービンを搭載し、ノーマルの570psから600psにパワーアップ。

ボディはルーフをカーボン素材に変更するなどで軽量化と低重心化を実現し、足回りにはフロントφ410mm、リアφ390mmのカーボンセラミックブレーキを搭載して旋回性能を高めています。

ランボルギーニ ウラカン ペルフォマンテ

ランボルギーニ ウラカン。ペルフォマンテ

© Automobili Lamborghini S.p.A.

ランボルギーニ ウラカンといえば、スーパーカーとして有名です。

そのスーパーカーにレースで得たノウハウを注ぎこまれたのが、ウラカン・ペルフォマンテ。

搭載されるV10エンジンは吸排気を流体力学的に見直し、1から再設計。

レース体験から生まれたインテークマニホールドを装着し、全回転域でレスポンスを向上させて最高出力640CV(≒640ps)を発揮します。

まとめ

1970年代から1990年代にかけて大人気だったホモロゲーションモデルは、現在ではカタログモデルの1部として通常グレードになっています。

とはいえ紹介した3台のように、他グレードとは「何か」が特別でスポーツドライビングに適したモデルであることは、間違いありません。

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