自動車といえば大抵は4輪、あるいは2輪(オートバイ)を指しますが、世の中にはどちらでも無い車が存在します。今回は日本でも4輪化された小型トラックや軽トラックが普及するまで走っていて、世界的には今なお現役の車が多い3輪自動車(2輪免許が必要な車は除く)、その中でもまだ新車で買えるものをご紹介します。
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イタリアの3輪版バスパ!ピアッジオ ガンマ APE(アペ)シリーズ
オート3輪(3輪自動車)とはいえば日本発祥というイメージですが、第2次世界大戦前から日本のみならず世界中で軽便なマイクロカーなどが当たり前に存在し、大戦後に貧乏を極めた国や新興国では引き続き安価で働き者な乗り物として3輪自動車やマイクロカーは作られ続けました。
イタリアでも、戦後の4輪車で商売するにはちと厳しいという時代に登場したのが1948年に発売されたピアッジオ APE(アペ)で、戦後型スクーターのベストセラー『ベスパ』(1946年)を3輪化したような車でした。
そして現在は、50ccエンジン搭載車『APE50』や200ccガソリンエンジンまたは400ccディーゼルエンジン搭載の『APEクラシック』、幌付き常用の『APEカレッシーノ』が販売されており、3輪自動車の大市場であるインドで生産されています。
また、日本でもAPEの取り扱いがある輸入2輪車/3輪車店があり、全国で400台程度のAPEが走っているそうです。
世界最大の3輪自動車メーカー、インドのバジャージが誇る3輪シリーズ!
東南アジアや中米、アフリカなど世界中の新興国で活躍する3輪自動車ですが、2019年1月現在の最大市場はどこかといえばインドで、その中でも世界一のメーカーがバジャージ・オートです。
オートリキシャなどと総称される3輪タクシーには、『トゥクトゥク』など日本発祥のものや、『バジャー』や『バジャージ』と呼ばれるインド発祥のものなどいくつかの呼び名があるようで、どうやら後者の呼び名の元になっているのがバジャージ オートの3輪車。
もともと1950年代末にベスパのライセンス生産から始まり、3輪車も作るようになったという意味でAPEが起源といえますが、何しろ大市場だったのでいつしかピアッジオのインド法人を抜く世界一の3輪車メーカーとなりました。
そもそもは現在も販売されている200ccガソリンエンジンを動力としていましたが、近年は省エネ志向もあって同排気量のLPGやCNG(液化天然ガス)仕様、470ccディーゼルエンジン仕様もあり、今では日本の軽乗用車に相当する4輪の低価格車も販売中。
APEと同様にタクシー仕様とトラック仕様があり、動画サイトなどで『APEと比較してバジャージはこんなにスゴイ!』とバジャージ3輪車のパワフルぶりとAPEの貧弱ぶりを露骨にアピールする比較広告が特徴です。
日本でもトゥクトゥクの一種として輸入販売している業者があり、日本エレクトライクが販売している3輪EVのベースにも使われています。
有象無象がひしめくタイの3輪メーカーでもメジャーな?トゥクトゥクファクトリー
「タイではトゥクトゥクという3輪タクシーがたくさん走っているらしい」と知っていても、ではそのメーカーは?と聞かれて答えられる人はそういないのではないでしょうか。
そもそもタイでは戦前から輸入されていた日本のオート3輪が使われていましたが、1960年代に郵政省(現在の日本郵政株式会社)が郵便収集車を軽オート3輪から4輪の軽1BOX車に更新していった際、多数の余剰中古車をタイに輸出してから爆発的に増加したと言われています。
その後、増大する一方の需要に応え、日本で役目を終えた日本製オート3輪が多数送られるとともに構造がシンプルなため、主にダイハツ製エンジンと各種オートバイ部品、手作りフレームで作りあげたハンドメイドのトゥクトゥクが多数誕生したようです。
そのためエンジンは一時期2サイクル2気筒360ccのダイハツZMが主流だったものの、モアパワーを求めて4サイクル3気筒のEB(550cc)やEF(660cc)といった比較的新しく大排気量のダイハツエンジンへ換装するキット(※補機類のみでエンジンは別売とか)も販売されました。
中には「手作りだから年間5~6台しか作れないけど、ダイハツMP5ミゼットだって作っちゃうよ!もちろんエンジンは最新(の中古)さ!」というオーダーを受ける工房もあるそうなので、興味ある方は問合わせてみてはいかがでしょうか。
前置きが長くなりましたが、そんなタイでも『輸出までやっている世界規模のトゥクトゥクメーカー」が存在、その名もそのまま『トゥクトゥク ファクトリー』。
リムジンタイプ(タクシー仕様)の『Limo GT』と貨物運搬や移動販売車など商用タイプの『Vendo GT』が販売されており、何がGTなのかはよくわかりませんが、タイ製としては比較的メジャーなトゥクトゥクのようで、輸出もされています。
なお、トゥクトゥク ファクトリーのスゴいところはガソリンエンジン車ではなく3輪EV(電気自動車)なことで、航続距離は『Lead-Acid(鉛バッテリー)』で80km、『Li-ion(リチウムイオンバッテリー)』で100km。
もちろんリチウムイオンバッテリー仕様の方が軽くて速くて大搭載量(鉛バッテリー仕様523kgに対し294kg)と、高性能です。
ちなみに日本でタイ製トゥクトゥクを輸入販売している業者では、特にメーカー名を明記していない事が多いのですが、EVならトゥクトゥクファクトリー製があるかもしれません。
日本発!フィリピンで生産・販売中の電動3輪、BEMAC 68VM
次に紹介するのは、まだ日本で輸入販売している業者は無いようですが、実は日本発のプロジェクトによって開発。
フィリピンで生産して現地法人の『BEMAC Electric Transportation Philippines』が納入している3輪EVタクシー、『BEMAC 68VM』です。
プロジェクトの元になっているのは愛媛県の『渦潮電機株式会社』ですが、元をたどれば同社の子会社『トリトンEVテクノロジー』が開発。
さらに元をたどれば一時期郵便用EVの大量受注で話題となった、『ゼロスポーツ』のEV部門が母体です。
ゼロスポーツからEV部門の譲渡を受けた渦潮電機が、アジア開発銀行からの融資で3輪タクシーのEV推進計画を進めるフィリピン政府からの受注合戦に応募して、採用されたのが68VM。
一時期アジア開発銀行が融資を引き上げるなど、プロジェクトが難航した期間もありましたが、どうにか見通しがついたようで、2018年1月から納入が再開されました。
渦潮電機そのものも2019年4月から『BEMAC』と社名を変更し、今後は本業(船舶用機器メーカー)のかたわら、EV事業をどう展開していくかが注目されます。
なお、68VMそのものは運転手1人のほか6人乗車可能。
リチウムイオンバッテリーを搭載し航続距離60kmという、短距離用都市交通としてはまずまずの性能です。
日本でも南の離島を訪れた人なら覚えがあると思いますが、酷暑とスコールを繰り返すような気候ではホンの数百mでも歩くより何かに乗るのが普通のため、この程度の航続距離でも十分な実用性があり、充電スタンドも整備されています。
スポーツカーもあり!カナダのポラリス スリングショット
最後は豪勢にスポーツカーで!
カナダのATV(全地形対応車)やスノーモービルメーカーであるポラリス・インダストリーズが2014年に発売、日本でもホワイトハウス・オートモービルが2019年1月現在予約受付中の『ポラリス スリングショット』。
約760kg前後のボディに173馬力を発揮するGM製2.4リッターDOHC4気筒『エコテック』エンジンを搭載し、パワーウェイトレシオは4.4kg/PS前後。
前2輪・後1輪の典型的なライトウェイトスポーツ・スリーホイーラーです。
日本で輸入がアナウンスされているのは、本国では『S』相当の『スリングショット』と本国同様バージョンの『スリングショットSL』。
装備やタイヤサイズが異なる2種類のようですが、本国仕様ではハイパフォーマンス仕様の『SLR』やキャノピー(天蓋)つきの『Grand Touring』もラインナップされています。
アメリカでは州によって自動車扱いだったりバイク扱いだったりするようですが、日本では普通自動車免許で運転できる自動車扱いの3ナンバー登録。
公式映像では地を這うような迫力あるドライビングが紹介されており、日本での販売も待ち遠しい1台です。
まとめ
以上、3輪自動車というとダイハツ ミゼットやリライアント ロビン、ピール50など『定番車種』を紹介してもよかったのですが、そちらは『懐かしい車枠』と考え、せっかくなので今でも新車で買える(買えそうな)3輪自動車を紹介させていただきました。
日本ではオート3輪が廃れて以降、『古くて走らなくて不便』というイメージがあり、イベントなどで登場しても「昔はこんな車あったんだ」扱いですが、世界的に見ればまだまだ必要とされている現役カテゴリーです。
さらにライトウェイト スポーツとしてはオートバイと4輪スポーツの中間的存在として、オフロード用のATVともども存在が注目されています。
EV化で左右輪トラクション コントロールが可能になった事により、かつて転倒しやすいなど不安定な要素もあった3輪自動車のネガティブ面も払拭されつつあり、今後新しい自動車の形として、さらに新型車が増えるかもしれません。
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