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高校生は、バイクの免許を取得してはいけないのか?1980年代から叫ばれてきた『三ない運動』という考えは各都道府県の教育委員会やPTAに今でも深く根付いており、バイク免許の取得を禁止してる高校が大半なのが現状です。しかし、最近になって一部の都道府県では、バイク三ない運動の方針をなくす動きがあるようです。

出典:https://www.photo-ac.com/
高校生はなぜバイクに乗ってはいけないのか?
いつまでも3ない運動で揉めてるどっかの県とは大違い。 pic.twitter.com/y0C2ppOPlm
— 楽@2/18いなべIRC祭り (@satomiraku) 2018年2月27日
多くの方が『バイク三ない運動』という言葉を聞いたことがあると思いますが、現在二輪車免許を取得している10代20代の間では、聞いたことないと答える方も少なくはありません。
二輪車運転免許を取得したくて仕方のない高校生に対し、三ない運動を合言葉に否定してきた学校やPTAからも、今では”バイク=不良”というイメージは薄れつつあります。
しかし、二輪運転車免許はおろか原付免許も取得してはいけないという風潮や取り決めは現在も強く根付いており、全国で二輪車運転免許の取得や乗ることを禁止する高校は、47都道府県中半分以上もあるとされています。
バイクを愛する筆者としては、バイクに乗ることが必ずしも不真面目な生徒を生み出したり、交通事故で危ない目にあわせるなんてことはないと思います。
そして日本の社会も変わっていき、企業では働き改革といった動きもあるなかで、高校ではまだ昔の悪しき風習が残っているように思えてならないのです。
それほどまで高校生にバイクへの悪いイメージを植え付けた、三ない運動とは一体なんだったのでしょうか。
また、現状はどうなっているか振り返ってみました。
バイク三ない運動とは

出典:https://www.photo-ac.com/
三ない運動とは昭和57年に全国高等学校PTA連合会が決議し『バイクの免許を取らない、乗らない、買わない』を合言葉に、高校生のバイク利用を禁じた社会運動でした。
そんな三ない運動は5年ごとに見直しが図られてきましたが、現在まで継続。
この運動は各都道府県教育委員会が主体的に推進、または追認するようになり、結果として全国の高校へと広がっていきました。
三ない運動が叫ばれた理由は、70年代後半から社会問題となった暴走族や80年代になってからのバイクブームにあります。
ちなみに、暴走族を題材にした人気漫画『湘南爆走族』や峠の走り屋のバイブルとされた漫画『バリバリ伝説も』も82・83年に連載されました。
そのことからも分かるように多くの若者がバイクに夢中になっていたピーク時、バイクによる事故も多発。
非行に走る生徒の多くがバイクに乗っていたということから、保護者達が子供たちをバイクから遠ざけようとした経緯があったのです。
そして三ない運動により学生の免許取得を禁じる高校が大半となり、バイクブームが終焉となった90年代後半以降も”バイク禁止”は継承。
一部の学校で通学困難な学生のみ高校へ申請を出せば原付一種免許取得と通学に使うことを許可された例外を除いたとしても、確実に高校生からバイクを遠ざけました。
社会の変化にともない三ない運動が登下校の支障になっている?
現中3から
【岐阜県立高校入試制度改正まとめ】
★学区制廃止、来春から「全県一区」
⇒県内どの高校でも受験できる★岐阜高校、多治見高校単位制に
⇒生徒が自由に授業を選択できる★特色ある県内11校で県外からの募集枠を設置
⇒加納・不破・海津明誠など、定員割れ改善・高校活性化 pic.twitter.com/CDmOpStIyr— gy (@gifuyoshi) 2017年7月11日
日本では少子化が進み、生徒数が減っていくにつれ高校も統廃校が進んで学区制の見直しが図られるなど、近くの高校が廃校になり遠くの高校へ行かなければならない事態が発生しています。
そんなの通学時間が増えるだけではないかと思う方もいると思いますが、公共交通機関が発達していない地方なら通勤時間の問題ではありません。
過疎地域では最寄りの駅まで遠かったり電車の本数も1時間に1本なんて事も通常。
利用者が減れば路線バスが通らなくなり、自家用車を持っていなければ交通難民になってしまいます。
学生にとって何時間もかけて自転車通学をするのは難しく、悪天候時や街灯のない夜道を長時間自転車に乗るのは危ないため、保護者が登下校時クルマで送り迎えするケースもありますが、保護者にとっては大きな負担です。
少子化や過疎化にともなう地方都市の公共交通機関の弱体化は高校生の登下校を難しくし、日本の免許制度上16歳から普通二輪免許が取得できるのであれば手軽な原付一種でも通学に利用することで長時間の登下校の問題は解決できるはず。
通学困難な学生のみの免許取得を許可する高校があったとしても、今なお全国978校では、それすら許されていません。
三ない運動により、高校生の登下校の重荷になっている事は、過言ではないのです。
三ない運動見直しの動きが広まりつつある
埼玉新聞一面で、三ない運動廃止の記事。
バイクバブル世代としては驚き。
是非この機会に二輪の教育も。 pic.twitter.com/D0yleuro7e— コル注 (@Coruchu) 2018年9月27日
しかし、ここに来てすでに慢性化してしまった三ない運動に新たな動きがありました。
去年、埼玉県教育局が指導要項を見直し、条件付きで二輪免許の取得や購入、乗車を認めた新指導要綱を制定し、今年4月1日に施行することを発表したのです。
内容は高校生が免許取得を希望する際は保護者も含めて安全への理解を促し、安全運転講習の受講や任意保険への加入などルールを定め、これらの手続きを踏まえたうえで二輪免許取得・バイクの乗車を認めるもの。
埼玉県の県教育委員会はこれまでに『高校生にバイクは不要』というパンフレットを配り、生徒や保護者へ二輪免許取得を認めないことを頑なに発信していました。
さらに学校に無断で二輪免許を取得した生徒には県公立全日制で98.5%、私立で80.0%が懲戒処分などを課していたのですが、新指導要綱の施行により一転して高校生がバイクを利用することを認めたことになります。
また、三ない運動について、全国高等学校PTA連合会全国大会・平成29年静岡大会で決議・宣言を行われた事により、三ない運動への関心は地域によって差が開き、運動の全国展開を取りやめる方針が決められましたが、それでも各都道府県市高等学校PTA連合会で運動を独自に展開する事としています。
さらに近年は各機関・団体等と連携・協力し『自転車・バイク・歩行者のマナーアップ運動』を進めているようです。
それが進んでいるのが群馬県で、群馬県教育委員会は『高校は生徒の運転免許取得(二輪・四輪とも)を妨げない』方針を打ち出し、昨年7月には教育委員会主催で高校生を対象とする二輪車安全運転講習が実施されました。
このように三ない運動は見直され、高校生の移動ツールにバイクを許可する流れになってきているのです。
まとめ
数年前から自転車のルールやマナーの改善が進められるようになっていますが、それは幼少期からの自転車教育が不十分だったから。
年々、小中高校は生徒の自転車乗車の安全運転教育に今まで以上に力を入れていますが、転倒やケガ、人身事故などのリスクはバイクと自転車両方に有り、「事故ってケガをする可能性はバイクのほうが高い・・・」なんてことで比較せずに、マナーを守った安全な乗り方の指導をしっかり受けて理解すればバイクも自転車同様安全に使える乗物です。
暴走族が増えたりバイク事故が増えたのも、バイク教育がなされていなかった時代であって、そこから三ない運動によって臭い物に蓋をするように、バイクそのものが禁止されてしまいした。
たしかに三ない運動は高校生をバイクの危険性から守ったかもしれませんが、禁止の一点張りでバイク教育はほとんど行われていません。
バイクに乗り始めたのが16歳なのか高校卒業後の18歳なのかによって、将来ライダーの安全操作に差が出ることは無いと思います。
しかし、教えられたことに対してのみこみの早い時期から、バイクに乗るためのルールや技術、心構えや責任感、さらにリスクマネジメントなどを理解しておいたほうが、安全運転に優れたプロフェッショナルライダーになれる高い可能性が高いはず!
これからはバイクを禁止するのではなく、バイクとどう上手く付き合っていけば安全に乗れ、事故を防ぐことができるのか、教育する方向に動いて欲しいと心から願っています。
また、大人が親身になって子供たちに正しいバイクの乗り方や交通マナーを教えてあげるように意識しなければなりません。
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