ターボと聞くと昔はパワー重視で燃費が悪くなるされていましたが、今では小排気量エンジンをパワーをターボで補いながら低燃費を実現させるダウンサイジングターボが一般的になっています。これほどダウンサイジングターボが普及したのはなぜなのでしょうか。
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パワー重視のドッカンターボから低燃費のダウンサイジングターボへ
ひと昔前まで、ターボとはスポーツモデルやSUVなどに搭載されるパーツでした。
ブーストがかかると一気にパワーが出る『ドッカンターボ』などに代表されるように、スポーツカーを象徴するアイテムのひとつでした。
しかし現代、ターボはコンパクトカーやハッチバック、セダンなど多岐にわたって採用され、エンジンを小型化してターボ化させる『ダウンサイジングターボ』がトレンドとなっています。
ダウンサイジングターボとは
ダウンサイジングターボは、従来のエンジンよりも排気量を小型化し、ターボやスーパーチャージャーなど過給機を用いてパワーを補います。
例えば、本来なら排気量2リッターが必要な車体サイズに、1.5リッターエンジンとターボを組み合わせて、出力とトルクをNA(自然吸気)よりアップさせます。
ダウンサイジングターボエンジンは、小さいエンジンでも十分なパワーを発揮し、燃費性能を向上させる事が可能です。
ターボエンジンは効率が良い!
同じエンジンでも排気量を変えずにパワーアップできるターボエンジンは、例えばトヨタ車ならセリカやスープラに搭載された『3S-GTE』や『2JZ-GTE』、日産スカイラインGT-Rに搭載された『RB26DETT』など、数多くのスポーツモデルの上位グレード採用されました。
しかし当時は、ターボを搭載していることで速くなる分、燃費が悪くなるというのが通例でした。
本当にターボを付けることで燃費が良くなるのでしょうか?
排気量を小さくしても、その分の燃費向上は望めない気がしますが、そもそもかつてのターボとは全く狙いが違う別物として開発されているのです。
かつてのターボは高回転時のピークパワーを手に入れるためのアイテムでしたが、現代のダウンサイズターボは、排気量ダウンで失った低回転域のトルクを得るための設計となっています。
そのため、より効率よく吸気圧力を高めるために現代のターボエンジンには、『EGR(Exhaust Gas Recirculation|排気再循環)』と呼ばれる排気ガスを再度吸気側に取り込むシステムや、吸気バルブのタイミングなどにより高膨張比サイクルなどが利用されており、ポンピングロスの低減にも効果があるのです。
このように、捨てている熱エネルギーを再利用して燃焼時のエネルギーに変換しているのがターボであり、エネルギーのロスを減らすためのシステムでもあるのです。
ポンピングロスとは
燃焼室において排気側圧力が吸気側圧力より高ければ、仕事の効率が失われます。
この仕事の損失がポンピングロスと呼ばれ、日本語表記では『吸排気損失』です。
ターボ付エンジンは、吸気側圧力を排気側圧力より高くすることが可能なため、ロスなく正の仕事が可能となります。
良いこと尽くめではない!ダウンサイジングターボのデメリットとは
ダウンサイジングターボは、少ない排気量から比較的排気量が多いエンジンと同等のトルクを発生させることが可能です。
トヨタ カローラスポーツは1.2リッター直4ターボを搭載し、最高出力116ps(85kW)/5200~5600rpm、最大トルク18.9kg・m(185N・m)/1500~4000rpmを発揮し、1.8リッター直4NAのトヨタ オーリスでは最高出力144ps(106kW)/6200rpm、最大トルク18.4kg・m(180N・m)/3800rpmだったため、600ccの差がありながらトルクはオーリスより勝ります。
さらにトランスミッションが多段化や高性能なCVTが搭載され、アクセルペダルの操作を電気信号でダイレクトにエンジンへ伝えるDBW制御でダウンサイジングターボの良さを引き上げているのです。
しかし、ダウンサイジングターボは、良いこと尽くめとは限りません。
ポンピングロスが軽減できるのは大きくアクセルを踏み込んだときで、ダウンサイジングターボの良さが発揮できるのは加速時や坂道、高速クルーズの時。
日本では低速域でのアクセル操作や信号でのストップ&ゴーを繰り返す走行が多く、アクセルを踏みこむ操作は一般道ではあまり多くはありません。
そのためか、ダウンサイジングターボはカタログ燃費と実燃費の乖離が大きいとされます。
カタログスペックの燃費表記ではJC08モードの燃費値が採用されていましたが、法律が変わって2018年10月からは『WLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure|国際調和燃費・排ガス試験方法)』が導入され、今後、メーカーはWLTCモード燃費を表示しなければなりません。
WLTCモードはJC08モードよりも厳格化されており、『市街地モード』、『郊外路モード』『高速道路モード』のそれぞれの燃費値を表示しなければならず、今までより実燃費に近い値が表示されます。
そのため、ダウンサイジングターボ搭載車では、高速道路モード、郊外路モードで低燃費が期待できても、市街地モードではさほど期待はできません。
もし、市街地での燃費を重視したいのであれば、発進時にモーターがアシストしてくれるハイブリッドのほうが勝ります。
それでも、モーターの加速感が苦手な方は、ダウンサイジングターボの力強いトルク感が運転のしやすさにつながるでしょう。
まとめ
ダウンサイジングターボの良さは、高速道路やワインディングロードなどで低燃費の性能を発揮できること。
さらに排気量が小さいことから、日本での自動車税がワンランク安価になるというのもメリットのひとつです。
トルク感もあり、街中での運転のしやすさにも寄与しますが、走る場所によっては期待した燃費性能を発揮できないこともあります。
どんなシチュエーションでも低燃費を重視したい方は、ハイブリッドがおすすめ。
エンジンの出力特性が好みで、遠出でクルマを使う機会が多い方には、ダウンサイジングターボがおすすめです。
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