2023年4月4日、東京タワーの麓に位置する港区東麻布に、世界最高峰のドライビングシミュレーターを導入した会員制ドライビングラボ「simdrive(シムドライブ)」が誕生。実際に試乗してみてどうだったのか?シミュレーター経験のある筆者の体験をベースに、試乗体験記として記していきます。
※試乗取材にあたり「撮影NG」となっており、使用画像のほとんどがsimdrive様よりご用意頂いた画像となるため予めご容赦頂きたい。
simdriveとは?
simdriveのリリース後、多くのメディアより情報が流れているため、細かな内容はそちらを参考にして頂くとして、簡潔にまとめると
・ファウンダーはプロフェッショナルレーシングドライバーの藤井誠暢(ふじい とものぶ)選手
・会員制で入会金は150万円(メンバー特典として提供されるオリジナルレーシンググローブ、レーシングシューズ、指定車両の MOD オリジナルデータ開発・制作費用、プロドライバーによるマスターテレメトリーデータ制作費用含む)
・立地、内装、家具に至るまで全てにこだわり抜いたエクスクルーシヴな空間
・F1チームや自動車メーカーなどの施設レベルのシミュレーターを3台設置
・英国及び日本エンジニアによる実車と同じMODオリジナルデータを、会員1名ごとに1台専用開発
・専用開発されたMODデータ1台ごとに藤井選手によるセットアップ及びマスターテレメトリーデータを作成
・会員は専用MODデータでシミュレータートレーニングが可能
・別途オプションとして、専門エンジニアやプロドライバーによるライブテレメトリーシステムを活用したサポート、コーチングといったメニューも用意
といった内容。
一般的なシミュレーターとは一線を画す、英国の最先端エンジニアリングを余すことなく注ぎこんだ、日本初のドライビングシミュレーションサービスを受けることができる。
試乗の前に
前提条件として試乗をする筆者の運転プロフィールについておさらいしたい。
性別:男性
年齢:30代後半
シミュレーター歴:
マイカーでサーキットを定期的に走りながら、2014年頃よりシミュレーターショップに出入りし、プロドライバーのレッスンも受ける。主要なソフトウェア、100万円台〜600万円台クラスの幅広いレンジのシミュレーター筐体に搭乗経験有り。ブレーキは両足どちらでも対応できる。
リアルでもマイカーでサーキットを走るし、シミュレーターもそれなりに乗れる。いわゆるクラブマンやジェントルマンの類いとなる。
今回試乗にあたり、コースは富士スピードウェイ国際レーシングコース、車両はPorsche 911 GT3 Cup(Type 992)。
もちろんこの911 GT3カップカーのMODもsimdriveで専用に製作され、藤井選手のセットアップにより実車を忠実に再現したマシンとなる。
筆者は実車の911 GT3カップカーに搭乗未経験であるものの、今までの経験をもとにまずはちゃんと走れるのか?各所のフィーリング、フィードバック、身体にかかる負荷などはどう言った具合なのか?をレポートしていく。
実際に試乗した各所のフィーリング
シートに座りシート合わせ。レーシングカー同様にペダルやステアリング位置調整は可能で、6点式ハーネス(シートベルト)をキツめに装着。
目の前に広がる世界初となる5mの実寸大LED湾曲スクリーンが没入感を高め、レーシングカーの車内にいることをより実感させられた。
ピットレーンからピットアウトをしていくが、1コーナーを迎える前にレーシングカー特有のリジッドマウントされたエンジンや車体からの振動が、ステアリングとシートから襲ってくる。
アクチュエーターなどの動作に関して都合上明記できないものの、各所のモーションや前後左右Gの再現については、これまで体験してきたシミュレーターとは異なる。
ブレーキペダルは踏力の初期から重く硬く、ショートストローク。この硬さに慣れているドライバーにとってはコントロールしやすいフィーリングで、筆者は過去に似たようなブレーキペダルを経験していたため適応はできた。が、重いものは重いしとにかく硬い。
1コーナーに向かってブレーキを始めると、6点ハーネスにより猛烈な力で身体が引っ張られ、自分でブレーキを踏んでいるにも関わらず、視界はブレて呼吸困難に陥りそうなほど締め付けられる。
軽量な911 GT3カップカーにスリックタイヤの組み合わせによる減速Gの再現はこれほどにもなるのか、と同時に各コーナーで身構えることを改めて認識した次第。
走り出して数周は車両そのものに対しても不慣れであったため、減速し過ぎてしまったり、ステアリングの重さに耐えられずいわゆる手アンダー状態で曲がっている状態だったが、全身の筋肉をフル活用して徐々に対応できるようになった。
いわゆるゲーム走りなんてものは通用しないどころか、現実と同じインフォメーションが筆者を襲うため、縁石なども不必要に踏めず、しっかりとコース内に留まらないとマシンが壊れる、という意識も働き、終始緊張状態が続いた。
慣れてくると第1セクター(コントロールライン〜Aコーナー手前)は問題無くクリア。
第2セクター(Aコーナー〜ダンロップコーナー手前)の100R、第3セクター(ダンロップコーナー〜コントロールライン)全域で元々苦手意識があり、藤井選手からライントレースやアクセルとブレーキの入力についてレクチャー頂き、修正することができた。
1レース分走った結果
結果的に20周ほど周回し、平均ラップで1分41秒中盤、ベストで1分40秒後半というタイムを刻んだ。
ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)の富士戦では15周であるため、1レース分より多く走ったことになる。
マスターテレメトリーデータと比較し、今回使用した911 GT3カップカーのMODでは1〜2秒落ちのタイムで走れていた、とのこと。
藤井代表からは「走りの基礎はできていて、ジェントルマンの中でも速い方」と評価を頂いた。
実際にPCCJ2022富士の公式結果と比較すると、むしろシミュレーターの方がタイムが速いことが分かるが、それはシミュレーターであれば気象、路面、タイヤの条件が揃っており常にベストコンディションで走れているから。
現実であればさまざまな外的要因やマネジメント面でタイムが遅くなるものの、そこまで加味されたMODデータであり、実車を忠実に再現できていることが体験できた。
身体にかかった負荷
ざっくりと結論を述べれば、本稿執筆時点で全身筋肉痛である。
今回の試乗ではネックモーションは使わなかったため、首への負荷はほぼ無かったが、僧帽筋(肩甲骨周りから後頭部に繋がる筋肉)の疲労はあった。
もちろん重いブレーキとステアリングと戦った結果、両腕、両肩、両脚も筋肉痛。
特に今回の試乗で他とは違い、より現実味を感じされているのが6点ハーネスの存在。富士スピードウェイならではの1.5kmにおよぶロングストレートからの1コーナーフルブレーキが分かりやすいところと言える。
前項で記載の通り、何も備えずに1コーナーめがけてブレーキを踏んでしまうと呼吸が妨げられるほどの締め付けに襲われる。
そのため腹直筋(いわゆる腹筋)に力を入れ、肩甲骨を少し浮かし、大胸筋を張って体幹を維持してブレーキングに備え、ハーネスに締め付けられても呼吸の妨げにならないようにしていた。
筆者自身もマイカーのスイフトで富士を走った経験はあるが、1コーナーでの備えについては、前述のように備えるものの、ラジアルタイヤでグリップ力が低く減速Gはそれほど強くは無い。
しかしながら今回のようにスリックタイヤを履いたレーシングカーの減速Gに備えるとなると、マイカーのスイフトより高い車速から短い距離で減速が終わるため、それ相応に減速Gが大きく加わることは想像に易い。
その強烈な減速Gがシミュレーターによって再現されており、車速に応じてフィードバック量も異なるため、本当にGによる影響を受けていると覚えるほど、乗り終わった後は「現実のクルマを運転していると思っていた」と感じられた。
まとめ
今回はWEC(世界耐久選手権)にも参戦する現役レーシングドライバー・藤井誠暢選手がプロデュースをする、simdriveで試乗する貴重な機会を頂いた。
会員制で入会金は150万円(税込)と高額に聞こえるものの、ファーストロット分は既に完売。
実際に筆者は体験した身として上記の入会金を払えるほどの徳は無いが、”その層のユーザー”にとっては安過ぎる価格設定、と感じた。
今後は運用の進捗次第で会員枠を増やす方向だそうで、東京だけでなく国内主要都市への展開も考えているとのこと。
simdrive
所在地:東京都港区東麻布1-12-5 ACN東麻布ビル8F
営業時間:12時~22時
休業日:月曜・年末年始
価格:99,000円/月(プレミアム会員・月4時間の走行枠)、66,000円/月(アドバンス会員・月2時間の走行枠)
公式URL:https://simdrive.jp/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000118935.html