Euro NASCAR参戦中でLEXUS公認インストラクターの三浦健光選手が、EuroNASCARのプログラムマネージメントにより全米NASCARの「Camping World Track Series」へ参戦!2022/7/8〜7/9に、米国オハイオ州Mid-Ohio SPORTS CAR COURSEにてトヨタ新型タンドラを駆り、日本人初のロードコースデビュー。限られた時間のプラクティス、難しい気象条件の中、参戦36台中33位の順位で終えています。

©︎KENKO MIURA

 

そもそもNASCER Camping World Track Seriesとは?

©︎KENKO MIURA

1995年より始まった、ピックアップトラックをベースとしたNASCARのシリーズ戦の1つ。

最上位のCUP Series、次点のXfinity Series、そしてCamping World Track Seriesの3つで構成されるNASCARのシリーズ戦。

日本ではあまり見かけないピックアップトラックですが、アメリカでは絶大な人気を誇る全米モータースポーツのメジャーリーグとも言えるレースです。

Camping World Track Seriesのみダートオーバルでのレースがあり、古き良きアメリカンレースを楽しめるシリーズでもあります。

 

※以下、三浦健光選手のレースレポート引用

全米モータースポーツのメジャーリーグ『NASCAR』はヨーロッパのモータースポーツとは別物!

EuroNASCARのプログラムマネージメントにより全米NASCARへの参戦を果たすことになった三浦健光。

ある意味すべてが自分の責任、そしてある意味ではクルー全員で成し遂げる。こんな言葉が当てはまるが、これだけ聞くと「そんなの当たり前」と思うかも知れないが全く違う。

まず、NASCAR Track Seriesではデータロガーを使うことは無い。

そして車内にコンパクトなカメラを装着することも禁止されている。全米選手権にもかかわらず。

つまり、これまでのレースで行ってきたマシンを仕上げていくスタイルとは全く違う。ではそれをどうやって仕上げていくのか?それはスポッターの存在だ。

今回のMid-Ohioスポーツカーコースは全長約4.0km。一般的な長さのサーキットだかここにスポッターが3人存在する。つまり、1周走ると3回は無線が確実に入るという事。

ちなみにピットにいる監督を含めると4名いる。これはマシンの挙動を外から見るという役割もあるが、NASCARにはサイドミラーが1つしか付いていない。その為もう一方は見ることがほぼ不可能なのだ。

その為スポッターが自分のマシンに対しライバルがどこにいるのかを教えてくれる。まるでミラーが壊れたクルマに乗っている怖さを走り始めは感じたが、意外に片方のミラーと車内についたミラーでほぼ周りの状況は把握出来た。

話は戻るが、マシンのセットアップはこうして言わばスポッターとドライバーの「フィーリング」だけが頼りになり仕上げていくのだ。

そしてプラクティスの少なさ。これも上級カテゴリーになるにつれ少なくなるのは理解しているが今回は正味30分ほど、三浦健光のマシンはオルタネーターの調整に時間を要し、実質30分走行出来ていない。

初めてのコース、マシン、チームと仕事をするのに実質約10周ほどだった。

ちなみにテスト時間が制限されているため、プライベートテストはほぼ不可能。つまりシリーズを追っているドライバーが有利なのは確か。
とはいえNASCARインターナショナルシリーズであるEuroNASCARに2017年より参戦している三浦健光にとっては700馬力以上のマシンでありながら電子デバイスが一切無いNASCARマシンの扱いや速さにはすぐに慣れることが出来た。

大きな違いはタイヤがGOODYEARという事。そしてはじめてのサーキットという事。

予選は大雨、決勝は灼熱!天気までも厳しい状況に追い打ちを掛けた

Mid-Ohioのエントリーは36台だった為予選は、A/Bの2つのグループに分けられた。

土砂降りの雨が増したBグループで出走した三浦健光は序盤5番手~12番手あたりのタイムを出していたものの、雨脚が増すと全くトラクションが掛からないマシンに大苦戦した

このサーキットの路面μも相当低い為バランスが大きく崩れた。

チームとしても原因不明のトラクション不足は解明出来ていないが、序盤の勢いを失った形となり総合32番手で終える。

©︎KENKO MIURA

迎えた翌日の決勝は快晴。という気持ちの良い天気ではなく灼熱の厳しい気候に。

NASCARの決勝はステージ1,2,3に分けられ、各ステージ毎にチェッカーとピットにてタイヤ交換と給油が設けられる。

ステージ1ではスタートから好走を見せ周囲とのバトル、パッシングを繰り広げ全体で15番手ほどのタイムを刻みながら好走を見せる。これにはチームも大きく盛り上がった。

しかしステージ1終了間際、右フロントのアームが折れて万事休す。チェッカーは受けたもののステージ2,そしてステージ3の前半までをガレージで過ごすことになる。

チームは何とかレースに復帰をさせようと懸命に修復作業に取り掛かってくれた。

ステージ3の中盤コースに復帰するとすでに25ラップ以上の周回遅れに。とはいえ、ペースが良い三浦健光はペースの遅いマシンをパスしながら再びレースをした。

しかし、ステージ3はまさに「モータースポーツの格闘技」の場となった。誰もが1つでもポジションを上げたい為、多少の接触は気にせずバトルを仕掛けてくる。

既に周回遅れなどは関係なく、幾度とあったリスタート時はまさに「当たり合い」のレースになり、三浦健光もスペースをなくしコースオフ。

マシンにダメージは無かったが、前日の大雨で芝が緩んでいたせいもあり、ラジエーターを芝や泥で塞いだ形になった為、エンジンがセーフティモードに入ってしまいストレートスピードが伸びない状況に。

また、オルタネーターが原因か瞬間的にパワステが切れる症状まで出始めた。

苦しい状況になったが、この時残り5周だった為、「とにかく走りきる」というチームの指示でマシンをチェッカーまで運び33位でレースを終えた。

© imgur/JesterM87

【Message from 三浦健光】

全てが初めての経験。出場するまでに様々な検査やテスト、eラーニングを受講しなくてはならなく、海外レースに慣れている僕が正直何度も挫折しそうになりました。そのくらいNASCARメジャーリーグの壁は厚かったです。

これまでのレース人生で最も悩み、最も刺激を受けた全米選手権、3大メジャーNASCARであるトラックシリーズへの参戦でした。ちなみにトラックシリーズはボディがタンドラなどのトラックのデザインをしていますが中身はNASCARマシンそのもの。

アメリカでもっとも人気のある車種タイプでレースをすることで各メーカーのマーケティング効果があるということですね。

レースに於いてもマシンのエクイップメント、そしてレースの組み立てやマシンセットアップの考え方のすべてが新鮮で戸惑いも多かったが良い経験をしました。

また、レース中は中段以上のトップグループに迫るラップタイムで走行出来たこと、多くのバトルを仕掛けられたことなどアメリカでの自分の可能性も確認出来、とても意味のあるレースウィークを送ることが出来ました。

そしてアメリカに約2週間滞在し感じたことはNASCARの存在がアメリカ市民には憧れの存在である事、そしてNASCARを中心としたモータースポーツ文化、ビジネス、労働。これらを強く感じることが出来ました。

正直なところヨーロッパでも味わったことが無い感覚がそこにあり、NASCARの偉大さを確認出来たことも今回のレースで大きな収穫になりました。

実は7月末のXfinityへトヨタ スープラでの参戦も予定されておりましたが今回のチームとは別のチームでの参戦となっていたので準備期間が不足と考え勝手ながら辞退させていただきました。

しかしながら既に来年参戦すべく準備を進めております。今回すべてのサポートをしてくれたEuroNASCARに感謝するとともに、全米NASCARへまた必ず参戦したいと思っております。

©︎KENKO MIURA

©︎KENKO MIURA

©︎KENKO MIURA

 

レースレポートは以上。

実際のレースの模様は以下の動画をご覧下さい!