全米のモータースポーツで最も人気があるNASCAR。オーバルコースを猛スピードで周回し、その迫力は人々を魅了し続けています。大蛇のようにコースをグルグル走る様子は皆様も一度はTVなどで見たことがあるのではないでしょうか??
今回はそんなNASCARについて紹介します。
(1マイル=約1.6kmと覚えておいて下さい。)
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NASCARとは
古くはアメリカ南部、フロリダ州デイトナ・ビーチにて行われたストックカー(市販車)レースが発祥となっており、1947年に全米自動車競争協会(NASCAR)が発足し現在に至っています。
当初は市販車ベースのストックカーで行われていましたが、1969年〜1970年にかけてパイプフレームを使用したレーシングカーへ移行しています。
ヨーロッパや日本のサーキット(ロードコース)とは違い、楕円形のオーバルコースで開催されている(ロードコース開催は年間2戦のみ)ことが特徴です。
オーバルコースと言っても1周0.5マイル(約0.8km)のショートオーバルから、1周2.66マイル(約4.3km)のスーパースピードウェイまであり、時速200マイル(時速約320km)近い速度を維持したまま走ることもあります。
近年はエンターテイメント性が強くなり、「チェイス」と呼ばれるプレーオフ制度の導入や、コース上にトラブルが無くてもレース展開に応じてフルコースコーション(セーフティーカー)が導入されるなど、観客を飽きさせないためにNASCAR独自の制度が存在します。
2016年現在では最高峰のスプリントカップシリーズを筆頭とした3つのシリーズが展開されています。
Sprint Cup Series(スプリントカップシリーズ)
アメリカの通信会社 Sprint社が看板スポンサーをしていることから公式でこのシリーズ名称となっています。
いわゆる我々日本人が「NASCAR」として認知しているシリーズです。
そもそも「NASCAR」の呼び名は「JAF」や「FIA」と同じ組織の名称なのですが、日本ではこのスプリントカップシリーズをNASCARと呼んでいます。
後述のシリーズと3つある中での最高峰シリーズとなっており、最も人気と歴史にあるシリーズです。
年間のシリーズ戦は全36戦となっており、2月〜11月までほぼ毎週行います。
さらには5戦ある特別戦を含めると全41レースという驚異的なレース数を誇ります。
Xfinity Series(エクスフィニティシリーズ)
アメリカ三大ネットワークの一つNBC、その親会社 COMCASTのケーブルテレビ事業であるXfinity(エクスフィニティ)が看板スポンサーとなっていることから、このシリーズ名称となっています。
見た目はスプリントカップシリーズの車両と大きくは変わりませんが、ホイールベースが5インチ短縮されていたり、エンジン出力が若干抑えられていたりします。
若手ドライバーの登竜門であり、スプリントカップドライバーも参戦しているので、スプリントカップに負けず劣らずの人気を博しています。
年間のシリーズ戦は33戦あり、スプリントカップの前日(土曜日)に行われることが多いです。
Camping World Truck Series(キャンピングワールドトラックシリーズ)
1995年より始まった、ピックアップトラックをベースとしたシリーズです。
日本ではあまり見かけないピックアップトラックですが、アメリカでは絶大な人気を誇ります。
スプリントカップと同じように、ベース車両は普段からアメリカ国民に使用されている車両でレースすることが多いです。
このシリーズのみダートオーバルでのレースがあり、古き良きアメリカンレースを楽しめるシリーズでもあります。
年間のシリーズ戦は23戦あり、エクスフィニティシリーズの前日(金曜日)に行われることが多いです。
見どころ
ドラフティング
レースの醍醐味と言えばやはり、何台もの車両が連なり「トレイン」とも言われる状態で走ることです。
車列が長くなるほどドラフティング(スリップストリーム)がよく効き、トップスピードが伸びます。
またNASCARの車両は前後バンパーが鉄板で出来ているので、ドラフティングの際に前を走る車両を押しながら走ります。
それにより車列の先頭を走る車両のトップスピードがどんどん伸びます。
尚、スーパースピードウェイと呼ばれるデイトナ、タラデガでは、吸気リストリクター(吸気量制限)が全車に装着され出力が740HPから445HP(レブリミットは7000回転)に抑えられますが、動画のようにアクセル全開のままずーっと走り続けます。
ピット作業
https://www.youtube.com/watch?v=kTtQc1NuxHE
通常のレーシングカーのピット作業と異なるのがタイヤ交換です。
通常のレーシングカーであればエアジャッキが搭載されているので、差し込み口にエア供給のホースを繋げるだけで車体がジャッキアップされます。
それと異なりNASCARはフロアジャッキを持ち運び、左右片側ずつ持ち上げタイヤ交換を行います。
また、ホイールナットはセンターロック式ではなく、市販車同様の5穴となっていることが特徴で、NASCARならではのタイヤ交換が行われます。
NASCARならではのルール
FIAやJAFと違い、レースをすることはもちろんのこと、観客を飽きさせないための工夫がされたNASCARならではのルールが存在していることをご存知でしょうか??
フルコースコーション
このルールに関してはFIAやJAFのレースと同じようにコース上にトラブルが発生した場合に使用されます。
しかしNASCAR独自の考え方として、トップが独走するような単調なレースなどで面白みに欠ける場合、コース上に転がっている小さなゴミを拾うというような名目で、主催者判断でフルコースコーションが入ります。
この間、コース上に留まることも自由ですし、ピットインしてタイヤ交換することも自由となっており、チーム戦略が分かれます。
そしてリスタート時は隊列が整った状態となり、レースにメリハリが生まれます。
コンペティションイエロー
レース序盤に出されるフルコースコーションです。
レースウィーク中にトラブルや雨(NASCARは雨が降ったら走行中断)などで走行周回が稼げない場合、レース序盤に提示されます。
ピットインは自由で、タイヤ交換はもちろんシャーシアジャストも行い、レース後半に接戦が演じられるようになっています。
ホワイトフラッグ
FIAやJAFの規定では、ホワイトフラッグは「前方に低速走行車両がある」と言った注意喚起のフラッグですが、NASCARの場合はファイナルラップを知らせるフラッグで、ラスト1周の時にコントロールラインで振られます。
グリーン・ホワイト・チェッカー
コーション中にゴールしてしまうような場合にとられる処置で、コーション中はゴールとせずそのまま周回は続けられ、コーション明けにグリーンフラッグが振られ→次の周回でホワイトフラッグ(ファイナルラップ)→何もなければチェッカーフラッグが振られゴールとなります。
もしグリーンフラッグが振られてから、ホワイトフラッグが振られる前にクラッシュなどでコーションとなった場合、またグリーン・ホワイト・チェッカーが適用されます。
これはスプリントカップとエクスフィニティでは3回まで適用、キャンピングワールドトラックでは無制限で適用され、ゴールの演出をします。
チェイス
他のアメリカのスポーツではよく導入されている「プレーオフ制度」のことです。
シリーズ後半戦が消化試合とならないよう、対象となる上位ドライバーは最終戦まで戦い抜かなければならず、チェイスを制したドライバーがシリーズチャンピオンとなります。
次のページでは各クラスどのようなマシンなのか?と、参戦マシンを一挙にご紹介します!!