2016年現在、ルマン通算18勝という驚異の戦績を残すポルシェ。最も多くルマンで勝利を収めたコンストラクターです。スポーツカー・メーカーである誇りとともに戦い続けてきたポルシェですが、自らの勝利以上にレースの興行そのものに「貢献」をしてきた存在ともいえます。917・956・911GT1という歴戦のマシンを通じて、ルマンにおけるポルシェの足跡を振り返っていきたいと思います。
栄光の幕開け・Porsche 917
ポルシェ栄光の時代のはじまりは、長きにわたるルマン24時間レースの歴史の中では意外にも遅咲きといえるでしょう。
純粋なレーシングカーコンストラクターであるフェラーリとは異なり、あくまで優れた高性能車・プロダクトを生み出すことを使命として始まったポルシェの歴史は、しかし高性能を示す為に自ずとレースの舞台に導かれていきます 。
中でも、人間は交代で休んでも、クルマは24時間ぶっ通しで走り続けなければならない究極の舞台・ルマン24時間は、ポルシェがその名を知らしめるに十分なステージでした。
1960年代、世界中のレースを2リッタークラスのスポーツカー906、907で席巻したポルシェ。
しかし、伝統のル・マン24時間では無冠のままでした。
1969年、アメリカ勢のエントラントを引き入れる目的で、FIAで急遽設定した「排気量5リッター未満」という改正グループ4規定に則り、1台のマシンがポルシェ社内で開発されることになります。
1952年からルマン24時間レースに参戦開始後、あくまで市販スポーツカーユニットをベースに開発を行ってきたポルシェ。
この規定を最大限利用しなければ勝てないという判断のもと、4.5リッター180度V12エンジンを新たに開発。
さらに907/908の基本構造をベースにシャシー、足回りなどを強化発展させたモンスターマシンを完成させます。
それがポルシェ917です。
あくまでスポーツカーとしてのエントリーであった為25台が市販されホモロゲーションを獲得。
しかしながら純レースカーとしての基本設計を持っていることから、実質的プロトタイプともいえるマシンでした。
907時代の2.3リッターエンジンと比較すると実にその出力は2倍近く、590馬力に迫ります。
その驚異的なパフォーマンスと、技術屋集団であるポルシェならではの精度の高いエンジニアリングがついに身を結び、そのショートテールバージョンである”ポルシェ917K”はデビュー翌年の1970年、ついに参戦以来初のルマン総合優勝を勝ち取ることになるのです。
更にその翌年1971年も、917Kがルマンを制して2連覇を達成しています。
ルマンという舞台で戦うことを選んだポルシェ。
次のページでは、何故戦い続けることを選んだのか、グループC、そしてGT1を通して、ポルシェの考えに迫ります。