今でこそハコ車でのレース参戦のイメージが薄いアルファロメオですが、1950-60年代には、数々のレーシングスポーツカーを制作し、華々しい活躍を見せました。その中でもアルファロメオ シゲーラは、1997年に発表されたレーシングプロトタイプカーで、GTレースマシンの開発までもが検討された、アルファロメオ本気のスーパースポーツです。
掲載日:2019/09/26
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アルファロメオとイタルデザインの蜜月
低く構えたスーパースポーツや、鋭いウェッジシェイプ形状のスタイリングを得意とする、ジョルジェット・ジウジアーロ氏率いるイタリアのイタルデザイン社は、かつてアルファロメオと良好なビジネス関係にありました。
今でこそVWグループ傘下である同社ですが、かつては1971年発表のアルファスッド、1974年発表のアルフェッタGT等、多くのアルファロメオの量産車デザインを手掛けてきたのです。
そして、量産車だけでなくコンセプトカーも意欲的に発表しており、「33.2イグアナ」やアルファスッドをベースとした「カイマーノ」等、ジウジアーロ氏の流麗なデザインは高く評価されていました。
「シゲーラ」も1997年のジュネーブショーで発表されたプロトタイプで、かつてのアルファのレーシングスポーツカーに向けたオマージュが込められていたといいます。
その独特なスタイリングは、1991年から1993年まで続いたコンセプトカーの連作、「NAZCA(ナスカ)」シリーズの流れを汲んでおり、空力効率を重視したデザインであることが見て取れます。
レース活動を前提とした特殊なパッケージング
ドアは通常の左右に開くタイプのものですが、ルーフが左右に分割されており、上下に跳ね上がるガルウイングタイプを採用する独特の組み合わせとなっています。
また、後方に向かって大きく跳ね上がるエンジンフードもインパクト大。
アルファロメオのアイコンでもある盾からAピラーに向かって伸びる三角形のボンネットの下には、ラゲッジスペースも隠されています。
さらに、ノーズ下部はまるでF1のフロントウイングのような形状になっていたり、キャビンから流れるようなラインを描く固定型のリアウイング等、空力を強く意識したスタイリングに、ピエロの様なヘッドライトの形状も非常にユニークです。
あくまで実走することにこだわったメカニズム
ここまで飛び抜けたエクステリアを纏っていると、シゲーラはハリボテの単なるショーカーなのではないかと疑う人もいるかもしれません。
しかし、歴代のナスカプロジェクトと同様、このシゲーラも実際に走行可能なプロトタイプとして開発されました。
アルミ製のボディに覆われたシャシーは、ポリマー複合素材で剛性をアップさせたカーボンモノコックとアルミ製フレームを組み合わせたもので、メカニカルコンポーネントはアルファロメオの同時代のフラッグシップサルーン、164から流用されたものです。
アルファの至宝「ブッソーネV6」
パワーユニットは、現代においても未だ最高のV6エンジンと評される、アルファロメオの至宝「ブッソーネV6」。
3リッター24バルブ仕様にツインターボを装着し、最高出力は400馬力を誇りました。
また、164ではFF横置きでしたが、シゲーラでは縦置きのミッドシップに変更されています。
シゲーラGT
FIA-GTへの参戦を発表したレーシングカラー仕様も存在しており、固定式のリアウイングの上に更に巨大なリアウイングを備えた姿は強烈なインパクトです。
このマシンを使ったワンメイクレースの構想もあったと言われていますが、真相は定かではありません。
フィアットグループにおけるシゲーラのタイミング
イタルデザイン側はこのシゲーラを少量でも生産することを望んでいましたが、その望みは叶いませんでした。
なぜなら、当時フィアットグループにおけるフェラーリの会長、ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏の影響力が高まっていたこともあり、フェラーリとキャラクターの近いスーパーカーを生産することは、グループ企業にとってあまり喜ばしいことではなかったのです。
まとめ
結果的にはコンセプトカーとして、その役割を終えてしまったシゲーラ。
「シゲーラ(Scighera)」とは、アルファロメオの故郷であるミラノが位置する北イタリアのロンバルディア州の方言で「霧」を意味すると言われていますが、正に霧のように掴みがたい存在の1台だったと言えるでしょう。
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