現在、軽トラック / 1BOX商用車といえばダイハツ、スズキ、ホンダが思い浮かぶと思います。また、今ではダイハツからハイゼットのOEM供給を受けているスバルも、2012年まではサンバーを自社オリジナルで作っていました。それはライバル車と比べて異端とも言える特徴的な軽自動車で、運送会社『赤帽』での採用などにまつわるエピソードは、伝説的色彩を放つほど。最終型まで変わらぬ特徴を既に備えていた初代サンバーの、その設計思想の高さには驚かされます。

掲載日:2018/07/05

スバル K151 サンバートラック / 出典:https://www.favcars.com/subaru-sambar-pickup-1961-66-pictures-338455.htm

 

 

オート3輪などから続々参入相次ぐ『軽トラ戦国期』に現れた初代サンバー

 

スバル K151 サンバートラック / 出典:http://japanesenostalgiccar.com/subaru-celebrates-the-50th-anniversary-of-the-sambar/

 

初代スバル サンバーが発売されたのは1960年10月14日。

赤坂プリンスホテルでスバル450ともども発表されるという、華々しいデビューを飾りました(発売はその4ヶ月後)。

後に名車として語り継がれるスバル360の発売から既に2年半ほどが経過していましたが、軽自動車も含めた『自動車の花形』は、まだトラックやバンなど商用車が占めていた時代です。

また、オート3輪もまだまだ新車が数多く販売されており、「3輪ならいざ知らず4輪などぜいたく!」という思考が主流でしたが、安定性が高くて積荷を傷めにくく、長距離を走る際の疲労度にも差が出る4輪車は、急速にオート3輪を駆逐していきました。

そのため、トヨタや日産など大メーカーに比べると会社規模が違いすぎるにもかかわらず、生産規模も販売網も劣りながらも軽商用車に熱心なメーカーも多く、サンバー発売時とその前後には、以下のような軽トラック / 軽バン(軽乗用車のライトバン仕様除く)が販売されています。

【1961年2月初代サンバー発売時のライバル車の皆さん(年は発売年)】

  • ニッケン・コンスタック(日建機械工業・1958年…元は日本軽自動車『ニッケイ・タロー』)
  • ヂャイアント・コニー360(愛知機械工業・1959年)
  • ハイゼット(ダイハツ工業・1960年)
  • ベビー(東急くろがね工業・1960年)
  • ホープスター・ユニカー(ホープ商会・1960年)
  • ポニー(ヤンマー・1960年)
  • パドル360(三鷹富士産業・1960年)
  • B360(マツダ・1961年)
  • 三菱360(新三菱重工業・1961年)
  • スズライトキャリイ(スズキ・1961年)

あれ?ホンダが無いぞ?と思うかもしれませんが、ホンダ初の軽4輪車であり初の軽トラT360が発売されるのはさらにこの後、1963年です。

通産省の自動車業界再編計画で自動車メーカーの淘汰が進む以前の話なので他にもありそうですが、パッと思いつくだけでも10車種!サンバーを入れれば実に11車種もの軽トラック / 軽バンが発売されていました。

この中で今でも名前が残るのはダイハツ ハイゼットとスズキ キャリイのみだと考えると、ハイゼットのOEM供給とはいえ、新車販売中のモデルとしては軽自動車で2番目、国産車でも7番目に古い車名として、サンバーの名が今でも残っているのはスゴイ事ではないでしょうか。

 

最後のオリジナル・サンバーまで続く『伝統』となった、特徴的なメカニズム

 

初代サンバーはフレーム前端にドライバー、後端にエンジン。この構造は最後まで変わらずでした。 / ©FUJI HEAVY INDUSTRIES Ltd. All Rights Reserved.

 

スバルオリジナル(独自生産)のサンバーといえば、『リアエンジン・後輪駆動のRRレイアウトと4輪独立懸架サスペンション』というライバルには無い独自のメカニズムが特徴的でしたが、なんと初代サンバーも既に同じメカニズムを採用していました。

ちなみに1958年のスバル360発売後に開発が開始されたため、コストダウンや生産性の意味合いもあって極力パーツの共用化が図られた結果、商用車としてやや強化はされたものの、パワートレーンやサスペンションはスバル360から流用でしたが、リアにエンジンがあるメリットはスバル360以上で、荷物を積んだ時は元より、空車時でも駆動輪にトラクションがかかるため、未舗装路の登坂能力にも優れています。

ただし、RRレイアウトそのものは、くろがね ベビーが既に『ボンネットを持たない先進のキャブオーバー型ボディ軽商用車』として数前年に発売済み。

しかし、同車は東急くろがね工業の前身、オオタ自動車時代から改良されつつ使われてきた旧式の水冷4サイクルOHVエンジンが重い上に出力面や振動面でライバルの一般的な空冷2サイクルエンジンと同等に留まり、販売網も貧弱という弱点がありました。

それに比べてサンバーには既にスバル360での実績があり、振動面でも乗用車用として満足のいくレベルに留まる上に、トラックなら乗員はエンジンからもっとも遠いボディ前端に配置されていたので、振動も騒音もベビーどころか大抵のライバルより優れていたのです。

さらに、スバル360から応用された4輪独立懸架のサスペンションは乗り心地にも優れていた上に荷物にも優しく、ガラスなど傷みやすい荷物を運ぶユーザーからは大いに喜ばれました。

 

初期のボディタイプはやや試行錯誤

 

スバル K161 サンバーライトバン4ドア  / 出典:https://revheadblog.com/2014/09/20/dos-ceus-para-todos-os-terrenos-as-origens-da-subaru/

 

パワーユニットやサスペンションはスバル360の技術をほぼそのまま転用できましたが、さすがにボディとなるとそうはいきません。

モノコックのスバル360とは異なり、ラダーフレーム上に架装したボディは基本的にトラック(1961年2月発売)と1BOXバン(同9月発売)の2種類があり、フロントバンパー形状から『クチビルサンバー』『あかんべぇサンバー』などと呼ばれるフロントマスクは共通でしたが、いずれも初期はスバルにとって初挑戦の純商用車であり、先行して登場した360派生車のスバル360コマーシャルとはまた違った試行錯誤が行われ、完成度を高めています。

また、トラックの方は当初エンジンを除く部分が低床の左右2方開き荷台のみでしたが、後に低床部分は鍵付きロッカーとしてエンジン上面に荷台の床を合わせた二段式高床荷台(上部荷台周囲は手すり)が登場。

一方、バンの方も最初はテールゲートを持たず、後席は折り畳み式の2人乗り補助席へボディ左側の前ヒンジドアから乗り降りする『サンバーライトバン』のみで、今でいうミニバン的に使うには便利でしたが、もちろん商用としては後ろに荷物を積みにくいので、テールゲートのついた4ドア(1962年3月発売)を追加。

ただし、テールゲートがついたとはいえトラック同様リアエンジンの宿命でエンジン部の床は高く、倒した後席背面を使って高床フラットフロアを実現するのは、もっと後の時代のサンバーになります。

 

主要スペックと中古車相場

 

スバル K151 サンバートラック / 出典:https://motor-car.net/subaru/item/11692-sambar-1st-to-6th-gen-1961-09

 

スバル K151 サンバートラック 1961年式

全長×全幅×全高(mm):2,990×1,300×1,520

ホイールベース(mm):1,670

車両重量(kg):395

エンジン仕様・型式:EK31 空冷2サイクル直列2気筒

総排気量(cc):356

最高出力:18ps/4,700rpm

最大トルク:3.2kgm/3,200rpm

トランスミッション:3MT

駆動方式:RR

中古車相場:流通無し

 

まとめ

 

スバル K151 サンバートラック / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/545-subaru-sambar-1961-i.html

 

スバルが2012年に軽自動車の自社生産から撤退して今年で6年経ちますが、「サンバーだけでも生産再開を!」という声が今でも絶えません。

しかし生産されていた太田の本社工場は今やトヨタ 86 / スバル BRZなどの本格量産のため、もはや軽自動車の生産を再開することはなく、サンバーの名もダイハツ ハイゼットOEM車に残るのみです。

そんなスバルオリジナル・サンバーの初代モデルを振り返ると、51年もの長きに渡り、よくもここまで基本設計を変えずに作り続けたものだと感心するとともに、それだけ初代サンバーが当時としては画期的な車だったことがわかります。

オリジナル・サンバー亡き後のライバル達も実は基本設計は相当古く、むしろヘタに変えないからこそ成り立っているジャンルの車とも言えますが、いずれ軽トラ / 軽1BOXにもEV化の波が押し寄せた時、また思い切ってサンバーのような車が登場すれば面白いかもしれません。

 

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