自動車に限らず自分で行うDIYメンテナンスで出番が多いKURE 5-56。DIYメンテナンスを行う方なら1缶は必ず家にあると言っても過言ではないのではないでしょうか?この商品の自動車やバイクでの用途は、ちょっと硬いネジなどを緩めるための潤滑やサビ、汚れ落としなどで、安くて入手しやすい常備薬のような存在なのです。
掲載日:2017/07/26
CONTENTS
ちょっと一吹き、5-56とは何か?
実家で家庭用の工具箱などに生まれた時から入っているし、ホームセンターでも安く売っているし…と、日常の中に溶け込みすぎていて深く考えたことの無い赤い缶、KURE-5-56。
元々はアメリカのCRCインダストリー社が開発した浸透潤滑剤「CRC5-56」で、1962年、2年前に設立されたばかりの呉工業がCRC社と提携、輸入・販売権を得て販売を始めました。
そのため日本ではKURE5-56として知られており、「ゴーゴーロク塗っておいて!」などと言われますが、コダワリのある人だと「シーアールシー」と言う人もいます。
一般的にはネジやボルト、ナットなどが硬くて緩めにくい時にスプレーして、叩いたりしながら少し待つと内部に染み込み緩めやすくなる浸透潤滑剤、あるいは錆止め、キーキー異音のする金属製可動部の鳴き止めがその用途です。
ただ、この種の製品としてはホームセンターでかなり安く買えるので、とにかく何にでも5-56を吹きまくる人もいるのではないでしょうか。
5-56の主な効果
日本で5-56を販売している呉工業のホームページでは、以下の5つの効果が紹介されています。
・潤滑効果:金属表面に薄い潤滑被膜を形成
・防錆効果:被膜で空気を遮断するので金属が錆びにくい
・浸透効果:ミクロン単位の隙間にも浸透
・水置換効果:電気系統の防湿や接点復活に効果を発揮
・清浄効果:可動部の油汚れや錆取り
通常の「5-56」の他に、「SUPER 5-56」や「5-56 DX」という製品があり、それぞれ5-56の強力版となっています。
素早く浸透、すぐに蒸発するメリットを活かす
5-56の特徴は「粒子が細かいので浸透しやすく、短時間で揮発するのでいつまでも油が残らず、浸透潤滑剤の中では手軽で安価」ということで、この特徴を活かせばそれなりに使い勝手のいい製品です。
細かい粒子がネジ部や蝶番になど隙間の少ない可動部へも容易に浸透し、こびりついた油を溶かすことで固着を緩和、潤滑させるのがその最大の効果です。
そこで5-56の評価の分かれ目となるのが「揮発性」で、気化するのが非常に早いため、短時間のみ潤滑させたい、という用途には向いています。
一方、効果を持続させたい場合はすぐに気化する5-56は「すぐ油切れを起こす」のと同じで、それほど効果は長続きしません。
特に高速回転する部分や高熱にさらされるなど「高温」になる部分は気化も早まるので、よほど頻繁に使用しないと潤滑効果も錆止め効果も維持できないのです。
日本における5-56のメーカー、呉工業でも長期間の潤滑効果が必要な場所にはシリコングリースなど別製品を販売しているので、用途によって使い分けるのが肝心となっています。
「とにかく何でも5-56」という万能潤滑剤では無いため、プロの作業場に行くと潤滑や錆止めに何種類もの製品が使われており、5-56は「一応あるという程度」な事が分かって頂けると思います。
自動車やバイク向きなのは「5-56 無香性」
5-56は油を溶かす性質があるため「プラスチックやゴムなど石油製品を劣化させてしまう」というデメリットがありますが、自動車やバイクには、金属のみしか使われていない部分はあまりありません。
そのため、そうした部分にスプレーすることも可能な「5-56 無香性」が存在します。
呉工業でも仮に5-56を使う場合、ゴムやスプレーにかからないよう注意を促しているため5-56はあくまで家庭用、自動車に使うとしても5-56 無香性というケースが多いのではないでしょうか。
ただ、塗装面への使用は悪影響を起こす可能性から使用不可と呉工業のQ&Aにも記載してあり、そうなると使用できる部分はかなり限られてしまいます。
グリース切れ、油切れには特に注意!
ゴムやプラスチック部はもちろんですが、5-56はグリースや潤滑剤も溶かしてしまうため、それらが使われている部分に使用した場合は、やはり5-56を落とした上で正規のグリースや潤滑剤を塗り直すメンテナンスが必要です。
密閉性の高いケースやチューブ内のワイヤーなどには5-56でも十分ですが、一番危険なのが高速で動く駆動用チェーンやベアリング類で、スプレーした直後は潤滑してもすぐに気化して潤滑効果が失われ、最悪の場合は焼き付いたり破損してしまいます。
チェーン駆動の自転車やバイクなど、それが切れるだけではなく後輪に絡まって走行中にタイヤロックという最悪の事態まで起こり得るので、絶対に使ってはいけません。
何に使うのが一番無難で役に立つ?
自動車用としては使える部分がかなり限られる5-56ですが、それでも無難に使えて役に立つ部分というとどんなケースがあるのでしょうか?
・配線類のコネクター金属端子をティッシュなどに5-56を吹いて磨く接点復活。
・シートレールやスライドドアレールなど、負担が強い部分の動きが鈍くなった時の潤滑。
・緩みにくくなったホイールナットの潤滑(※ただし締め込む時は絶対にパーツクリーナーなどで5-56を落とすこと!)。
・外した金属製パーツや、金属製タイヤチェーンを保管する際、洗った後にたっぷり吹いて防錆。
・エンジンルームの金属がむき出しになった部分の錆や油分を落とす。
タイヤチェーンだけは通常の5-56でも、それ以外は5-56無香性を使うことで効果が期待できます。
ただし、気化が早く効果の持続性までは期待できないので、呉工業でも例えば防錆効果の期間は屋内使用で3ヶ月程度と短期間としています。
この事からも、あくまで「安くて手軽な浸透潤滑剤」と割り切って、重要な部分には専用の製品を使うのがオススメです。
まとめ
何となく万能潤滑剤・防錆剤のように考えていると、意外にそれほどの効果が見込めませんが、安くて入手しやすいのが5-56最大の利点です。
呉工業をはじめ、潤滑剤各メーカーではそれぞれの用途により適合した製品を数多く販売しているので、5-56は「使っても問題の無い部分のため」または「急場をしのぐための常備製品」と考えて使用して頂きたいと思います。
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