今回は、1967年公開の映画『007は二度死ぬ』のコマーシャルの為に作られた、トヨタ 2000GTのオープンモデルをご紹介します!!ただでさえ貴重な2000GTですが、オープントップは世界に2台しか存在しない超激レアモデルです!
Text & Photo :Yusuke MAEDA
掲載日:2019.8/28
2台作られたうちの1台!本物のボンドカー!!
1967年に公開された映画『007は二度死ぬ』は、シリーズで唯一、日本が舞台となった作品です。
日本が舞台ということで、トヨタ自動車は同作品へのプロダクトプレイスメントの独占契約を結びます(劇中には3代目コロナや2代目クラウンも登場)。
そして同じく1967年にデビューした高級スポーツカー『トヨタ2000GT』は、ボンドカーとして劇中に登場する事となったのです。
日本が舞台の「007は2度死ぬ」ではトヨタ2000GTがボンドカーだったそうだ。でも残念ながら映画の中でジェームス・ボンドがこの車を運転するシーンは無かったそう。それと身長が189cmのショーン・コネリーにはちょっと窮屈で、急遽コンパーチブル仕様が製作されたらしい。確かに車が小さく見える^^; pic.twitter.com/kHFAF1ctjK
— Green Pepper (@r2d2c3poacco) March 16, 2019
しかし、主役であるジェームズ・ボンド役のショーン・コネリー氏が188cmの長身だった為、ルーフの低い2000GTに乗り込むとチグハグで不恰好とのことで、急遽2台のオープンモデルが制作されることになりました。
劇中でも使用された1号車は、愛知県のトヨタ博物館に所蔵されていますが、プロモーションとスペアカーを兼ねたもう1台が、今回ご紹介する2000GTなのです!
随所にこだわりを感じる、奇跡のレストア
現在、こちらのボンドカーを所有しているのはエムズバンテック代表の諸井さん。
エムズバンテックは精密板金などを得意とする金属加工のスペシャリストで、そのノウハウを活かして、数多くのトヨタ2000GTのレストアやメンテナンスを行なっているのです。
そんな2000GTにも詳しい諸井さんが、仲間内のネットワークなどを通じ、しばらく行方知れずとなっていたこの”2号車”を発見し、復活させました。
写真を見ても、ノーマルに比べてかなりフロントスクリーンが寝ているのが分かると思います。
まず、外見上での大きな特徴が、大きく湾曲し寝かされたフロントスクリーンです。
「2000GTのルーフをそのまま切り落とすのでは、不恰好だったのでしょう。あくまでも試作モデルなので、機能面よりも佇まいの問題でこのような形になってるはずです。」
と、諸井さんは語ります。
また、量産型ではマグネシウム製となっていたホイールが、ショーモデルや試作段階で装備されていたワイヤーホイールとなっている点もポイントです。
バッジや給油口の位置など、ルーフが取り払われたが故の細かい変更点はいくつかありますが、最も注目したいのは内装です。
苦労に苦労を重ねた、インパネ
トヨタ2000GTが、トヨタとヤマハの共同開発の末に生まれた名車であることは有名な話ですが、その際にヤマハの楽器でのノウハウがインパネ周りの木材に注ぎ込まれました。
2000GTにはインドネシア産のローズウッドが使われていたそうですが、ローズウッドは現在入手が困難な木材です。
そのため、この味のある当時物のローズウッドの質感を再現するのが、2000GTをレストアする上での最難関であると諸井さんは語ります。
今では希少となったローズウッド自体は、なんとか手に入っても、なかなか2000GTに使われていたものと近しいものは手に入らなかったそうで、ローズウッドにこだわらず、似たような木材を探すことに。
貴重な1台なので、なるべく当時の雰囲気を残したまま復活させたいという想いで様々な木材を探し回る中で、なんと奇跡的に当時の2000GTに使われていたのと全く同じ木材が、当時ヤマハに木材を卸していた材木問屋さんの倉庫の隅に眠っていたそうです。
ちなみに2000GTは前期型と後期型をインパネの木材のスライス方向でも判別可能で、柾目(まさめ)が前期型、後期型は板目(いため)となっています。
ちなみに、このボンドカーは1967年の映画にあわせて発売前から作られていた試作車なので、車体は前期型ですが、インパネには後期型の板目が装着されています。
エンジンもスペシャル仕様
こちらのボンドカーに搭載されているエンジンは、実は試作エンジンだそう。
市販モデルにはソレックスのツインキャブレターが装着されていますが、こちらはウェーバーの3連スロットルになっています。
また、発見当時はエンジンの状態もヒドかったそうなのですが、なんとかオリジナルの物を復活させました。
『MF10』のプレートが装着されていますが、あくまでもこの車両は試作車なので、本来このプレートはありません。
実はこの車両、レストア完了後に1年間、アメリカのロサンゼルスにある『ピーターソン自動車博物館』へと貸し出され、展示されていたそうです。
その際に、税関を通すためにプレートをつける必要があったとのことで、仮で装着したそうです。
ちなみに車体番号はフレームに刻印されており、その番号を元に、本物のボンドカーで間違いないと鑑定されています。
まとめ
ただでさえ貴重なトヨタ 2000GTの、更に稀少なオープンモデル、本物のボンドカーをご紹介いたしました!!
現在は機関類も絶好調とのことで、実際に私もエンジン音などを聞かせて頂いたのですが、1発始動でアイドリングも安定しており、まさに極上のコンディション。
ちなみに、この2000GTは劇中でジェームズ・ボンドが運転するシーンは無いため、正確にはボンドカーとは呼べないそうです。
英語圏では『ボンド・ヴィークル』と呼ばれていますが、現在6代目ジェームズ・ボンド役を演じている俳優ダニエル・クレイグ氏が最も好きな”ボンドカー”が、この2000GTなのだとか。
いつか、彼がこのステアリングを握る日はやって来るのでしょうか。
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