今やMTどころかATにすらほとんどないのでは?!というコラムシフト。ステアリングコラムの奥からニュキッと生えたシフトレバーでガコガコとシフトチェンジするコラムMTなど、昔あったのは知っているけど、実際に触った事も見た事もない人も多いかと思います。それでも2000年代くらいまでは割と見かけたもので、実際にハイエースなどのコラムMT車でバイトしていた事もある筆者が、コラム式MTの概要や操作方法を説明します。
今やインパネシフトへ切り替わって絶滅寸前?なコラムシフト
ステアリングコラムからワイパーレバーやウインカーレバーなどに混じり、シレっと生えているコラムシフト、それもMTとなると、1974年生まれの筆者でも物心ついた時からあまり身近な存在ではありませんでした。
フロアシフトに比べて足元広々、ベンチシートなら「ベンコラ(ベンチシート&コラムシフトの略)」と呼ばれて前列3名乗車でも左右ウォークスルーでも自在で、左右独立のセパレートシートなら、センターコンソールの代わりに通路を設け、2列目や3列目へのウォークスルーも可能。
それゆえ昔なら2列シートセダンでも前後で6人乗り(1列のトラックでも3人乗り)が可能ですし、アメ車でブームになった影響もあって国産車でも1960年代までは盛んに用いられ、その後は様々な事情で乗用車ではフロアシフトが主流になったものの、1990年代のミニバンやトールワゴンブームの到来で、コラムAT車が急増しました。
しかし、基本的にMTでもATでも正確なシフトポジション(どこを選択しているか)がわかりにくく、AT車ですらポジションランプなしには把握しにくい、フロアシフトに慣れているユーザーが未体験の操作を迫られての操作ミスといった問題は、いつの時代でも変わりません。
結局、2000年代半ば以降は足元空間の余裕や左右(あるいは前後も)ウォークスルーを確保しつつ、はるかに操作しやすいインパネシフトへ急激に取って代わられていき、今では一部の車で小さなシフトセレクタースイッチとして残っている以外、現行モデルではほぼなくなったと思われます。
慣れれば扱いやすい「はじめてのコラムMT」
昔のハイエース。コラムシフトMT(水中花!)、パワステ無し、握って実感ハンドル細い~! pic.twitter.com/2QKrNBcZ
— ロスレガ (@Rothlega) January 20, 2013
物心ついた頃にはコラムシフト車なんてあまり見かけなかった、という筆者ですが、1970年代末から1990年頃までの一般的な乗用車はほとんどフロアシフトで、RVブームの前ですからミニバンはおろか、1BOX車やトラックに乗る機会もそうそうありませんでしたし、裕福な家庭ではなかったため、タクシーにも乗らなかったので、当然です。
むしろコラムシフト車に縁が出るのは1993年に運転免許を取得してからで、人材派遣のバイト、いわば需要に応じた「なんでも屋」をしていた事から、時にはハイエースなど1BOX車、ライトエーストラックなど小型トラックの運転を任されると、必然的にコラムMTのシフトレバーがニョキッと生えています。
当時始まったばかりのAT限定ではなく、MTも運転できた筆者ですが、教習車は80系マークIIでしたから当然フロアシフトで、「コラムシフトのMT車もある…らしい」という知識はあったものの、それでいきなり運転しろと言われた時にはさすがに面食らいました。
しかし仕事ですから車が何であれ、運転できる免許を持っている以上は何とかせねばなりません。
とりあえずシフトパターンは…と探すとシフトレバーの脇に貼り付けてあり、初めてのコラムMT車の車種は忘れましたが、左上が1速、右下がR(バック)という、フロアシフト同様のHパターンで安心しました。
あとはとにかくクラッチを切って1速に入れ、クラッチをつないで走り出し、クラッチを切ってはシフトチェンジ…というのはフロアシフトと全く同じです。
最初のうちは「こうやってシフトレバーを下げれば2速、ニュートラルを通って上げれば3速」と考えながら操作していましたが、慣れてしまえばただのMT、気がつけばさしたる苦労もなく乗りこなしていました。
コラムMTの操作でポイントは3つ
運転免許を取って早30年過ぎ、コラムMTの430を手に入れるも勝手に真四角にされたり、部品が揃わなかったり…昨年やっと足車として手にしたY31がコラムMTです!#コラムMT車に乗ろう2021#Y31#高速有鉛 pic.twitter.com/w7pAtJWYIg
— ハイヤーサンバ (@shogyo_nabeshin) January 20, 2021
慣れれば簡単、ステアリングからあまり手を離さずシフトチェンジできるので、むしろフロアMTより楽ですらあるコラムMTですが、慣れるまでのポイントは3つほどあります。
まず1つは「シフトパターンの確認」で、筆者はたまたま一般的なフロアMTと同じHパターンシフトの車に乗りましたが、車種によっては「右上が1速、右下がR」など別パターンもあるため、まずそれを把握しなければなりません。
次にドラポジ(ドライビングポジション)で、免許取り立てな頃の筆者は愛車がオートマのマークII(GX61セダンのグランデ)だった事もあり、カッコつけてシートは足がペダルに届く限界まで下げ、背もたれは手がステアリングに届く限界まで寝かせるという「オラついたドラポジ」でした。
当然そんなドラポジでは、ステアリングの奥にあるコラムシフトのレバー操作など無理ですし、そもそも商用1BOX車やトラックでそんなドラポジはできません(特にリクライニング)。
そこで背もたれは可能な限り起こし、シートも前進させて、コラムシフトのレバーを一番奥(通常Hパターンの場合は1速)まで叩き込んでもヒジが伸び切らないよう調整しましたが、これがわかるまではシフトチェンジのたびに体を起こし、かえって疲れたような覚えがあります。
最後に、ドラポジがある程度決まったらその状態でシフトレバーを何度か全てのギアに入れ、「どのくらい動かしたらどのギアに入っているか」を、しっかり把握しておくのが肝要です。
何しろフロアMTと違い、「あれ今何速だっけ?」と横から覗き込むわけにはいきませんから、とっさの操作に備えて感覚で覚えておくしかありません。
2000年代まで販売していたようなコラムMTだと、タウンエース/ライトエーストラックのようにシフトレバーが運転手の方へ曲がり、先端の握りやすいシフトノブにHパターンが記載されているから楽なものです。
しかし1990年代前半のコラムMTはそこまで親切ではなく、手のひらを上にした逆手で味も素っ気もないロングストロークの「棒」をガチャガチャやっていたので、バイトで初めて乗る車に早く慣れるためには、この3つのポイントが肝心でした。
今でも運転できるかな?たぶんできます
その後、大学を出て社会人になると、会社の車はカローラバンやらタウンエースバンやらで全部フロアMTかATでしたし、ミニバンやトールワゴンの類はコラムATが多かったので、たまに倉庫からアレコレ引っ張り出すためレンタカーで借りるトラックを除き、コラムMTには全く縁がなくなり、やがて全く見かけなくなりました。
最後に見たのは2000年代も終わろうとする頃、当時勤めていた会社の後輩が、旧車のS130クラウンを買ったというので見に行ったところ、ハードトップではなくセダンで「ベンコラ」のMTという、なかなかシブいチョイス(もちろんシャコタン)。
久々にコラムMTを運転させてもらいましたが、それを最後にコラムMT車を運転することはなく、レンタカーで借りた軽トラまでインパネシフトATになっていて面食らうほどでしたが、今でもコラムMT車を運転できるかというと…そこは「昔取った杵柄」というやつで、感覚は覚えているので大丈夫でしょう。
むしろこの記事を書いていたら、たまにはコラムMT車を運転したくなってきました。