せっかく複数の販売チャネルがある事だし、エンブレムやフロントグリルを変えて、ちょっとお化粧直しした程度では芸がないので、少し違う路線も狙ってみようというのは、販売店が異なる姉妹車では割と「あるある」話なのですが、時には失敗して販売不振になる事もあります。そんなモデル達のなかで、素早く路線転換し、当時の三菱カープラザ店で販売不振だったエテルナを見事にフォローしてみせた救世主が、エテルナSAVA(サヴァ)でした。

三菱 エテルナSAVA / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

三菱カープラザ店向け「エテルナ」の、5ドアセダンへの挑戦と挫折

三菱 エテルナ(4代目) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

1978年の初代ミラージュ販売とともに創設された三菱第2の、そしてちょっと若者向けの販売チャネル「カープラザ店」では、従来からの「ギャラン店」で販売していたギャランΣ(ギャランシグマ 3代目ギャラン)を「ギャランΣエテルナ」の名で、モデルチェンジした2代目・3代目は「エテルナΣ」として販売します。

ギャランΣとエテルナΣは、ヘッドランプやフロントグリルなど細かい部分のデザインが異なる以外は基本的に「販売店が異なるだけの同じ車」でしたが、4代目エテルナへのモデルチェンジに当たっては、「せっかく別チャネルで売ってるのだから、同系統でも違うボディで新しい需要を掘り起こしてみよう」と、三菱はちょっと張り切ります。

そして、1980年代中盤という、バブルで少し景気のいい時代背景もあったのか、ヨーロッパ仕様の5ドアハッチバック版ギャランを、4代目「エテルナ」へ仕立てました。

ただし、正直それまでの日本では5ドアハッチバック車に「ライトバンとか商用車をオフでも使い倒す貧乏くさいイメージ」があり、それは三菱も理解していたようで、5ドアハッチバックではなく、「トランクゲート付4ドアセダン」として、1988年10月に発売します。

しかし名目はどうあれ5ドアは5ドア。

2020年代の今からは信じられない話ですが、1980年代に「便利な5ドアですよ!」と言ったところで、ナウなヤングには「ダサい!イモじゃん!」と言われるのが関の山です。

ギャランVR-4と同じ4G63ターボを積んだ4WDスポーツモデル、「エテルナZR-4」まで設定されていましたが見向きもされず、たちまち販売不振に陥ります。

三菱 ギャラン(6代目) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

一方、4代目エテルナ発売に1年先だって、1987年10月に登場した6代目ギャランは至極好調。

この代から設定されたギャランVR-4も、ラリーなどのモータースポーツで活躍し、4WDターボのスポーツセダンをイメージリーダーに持つ、走行性能の高いFF/4WDセダンとしてヒット作になりました。

ギャラン店の活況をヨソにカープラザ店では売れない4代目エテルナが悲嘆に暮れており、それどころか保険の意味合いも兼ねて継続販売していた先代 3代目エテルナΣセダンの方が売れているのでは?と言われるに至っては、もはやむせび泣くしかありません。

三菱 エテルナSAVA) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

よし!ギャランΣセダンはタクシー仕様を継続販売するからともかく、カープラザ店にはちゃんと新しく「今度こそ4ドアセダン」を準備しようじゃないか!と三菱も一念発起。

6代目ギャラン/4代目エテルナのマイナーチェンジに合わせ、エテルナの独立トランクつき4ドアセダン版「エテルナSAVA(サヴァ)」を1989年10月に発売したのです。

これでカープラザ店も古いエテルナΣセダンを更新できるし(※4ドアハードトップはディアマンテが発売される1990年まで継続)、もう何の問題もないだろう!と何とか解決してみせました。

ギャランのカープラザ版ではなく、4代目エテルナの4ドア版?!

三菱 エテルナSAVA) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

6代目ギャランから実に2年遅れ、4代目エテルナからも1年遅れで登場した「エテルナSAVA」でしたが、左右2分割デザインなフロントグリルの上、ボンネット先端に三菱マークが貼られたギャランに対し、フロントグリル内へ三菱マークを貼るなど、フロント周りのデザインが若干違う程度の、カープラザ店向けギャラン姉妹車にしか見えません。

全体をよく見ると、「確かにギャランに似ているけど、じゃあギャランかと言われると絶対に違うのだが、大きな違いがすぐ思いつかなくてもどかしい」という車になりました。

エテルナSAVAは、フロント周りこそ「スッキリスマートなギャラン」ですが、実はボディ後半が大きく異なり、むしろ4代目エテルナ寄りだったのです。

前項のギャランとエテルナSAVAのボディ後半を見ると、後席ドアの後ろ、リヤクォーターウィンドーの面積はエテルナSAVAの方が広く、Cピラーの角度も若干寝かせて根元は給油口の上にあり、トランクリッドの長さも少し短くなっています。

見た目ではわからないものの、ルーフ高もエテルナSAVAがギャランより15mm低く、「低く長く、ルーミーで後ろ斜め視界もよいキャビン」でした。

三菱 エテルナ(4代目) / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

テール周りなど、形状こそ異なるものの、ナンバープレート上のリヤガーニッシュやウィンカーなど灯火類のレイアウトも、4代目エテルナと酷似しており、斜め後方から見比べれば、エテルナSAVAはギャランと全く別物、むしろエテルナに近いと考えた方が良さそうです。

つまり、後のアスパイアのごとく「単純にギャランの前後パーツを組み換えることで安く作る」事もできたのを、わざわざボディ後半を作り変えており、ギャランと全く異なるデザインになった次世代の5代目エテルナ同様、バブル時代ならではのかなり贅沢な作りとなっていました。

後に三菱は4代目ランサー/ミラージュセダンでも、「4ライトウィンドウのランサーと6ライトウィンドウのミラージュセダン」でわざわざ別ボディにしており、トヨタが1980年代にカローラ/スプリンターでやったような「別デザイン姉妹車」を、三菱でも果敢に挑戦してみた、という事なのかもしれません。

しかし、エテルナZR-4のような4WDターボ車は設定されず、基本は1.8L車/1.8Lディーゼル車で、4WDのLX-4も2L自然吸気版4G63エンジン。

後にFFにも2L自然吸気のLXが加わった程度でしたが、それでも「当時の日本では常識的な車」として、4代目エテルナより好調なセールスを記録したと言われています。

おかげで1992年にモデルチェンジされた5代目エテルナは4ドアセダンへ統一、エテルナSAVAは約2年半のみの販売に留まったとはいえ、次世代までの中継ぎという役割は十分に果たしての廃止でした。

主要スペックと中古車価格

三菱 エテルナSAVA / 出典:http://www.webcarstory.com/voiture.php?id=15399&width=1440

三菱 E39A エテルナ・サヴァ LX-4 1989年式
全長×全幅×全高(mm):4,530×1,695×1,415
ホイールベース(mm):2,600
車重(kg):1,340
エンジン:4G63 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1,997cc
最高出力:107kw(145ps)/6,000rpm
最大トルク:175N・m(17.8kgm)/5,000rpm
燃費:-
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)ダブルウィッシュボーン

(中古車相場とタマ数)
※2021年3月現在
流通皆無

時代を先取りしすぎたエテルナの救世主

三菱 エテルナSAVA(ニュージーランドのオークランドにて) / 出典:http://mitsubishi.csmd.cz/auto/mitsubishi-eterna-sava/99170.mitsubishi-eterna-sava-2009.html

そもそもエテルナSAVAはなぜ登場したのか?登場するにしても、6代目ギャランから2年遅れだったのはなぜなのか?

理由は「4代目エテルナによって、日本市場でも5ドアハッチバックセダンを当てて、ギャランとのツートップ体制を狙ったから」ですが失敗に終わり、エテルナSAVAが、見事な中継ぎ役を果たしてくれます。

それで三菱もこりたかと思いきや、1994年にはステーションワゴン不在に焦り、またもや欧州仕様ギャランを「ギャランスポーツ」として発売して大不振。全く同じ轍を踏む事になったのは、面白いところです。

おかげで「保守的でマイナーだけど、実は隠れた名車」にも活躍の余地があり、その後のセダン不振で忘れ去られたとはいえ、エテルナSAVAは今でもマイナー車好き、レア車好きにとっては格好のネタとなっています。

いずれ、この時代の自動車史を研究していくうちに、存在意義を議論するだけの価値が十分にある車として、高い評価を得る日が来るのかもしれません。