日本でRVブームの中心となったクロカン4WD車の大ブームは、1990年代に最高潮を迎えましたが、1982年に登場するや盛り上がり始めていたRV観を一変させ、後のRVブームへの道筋を立てたのが初代三菱 パジェロでした。そしてパリ~ダカールラリーでの活躍から『砂漠の王者』の異名を得たパジェロは、ランドクルーザーやジムニーと並んで世界に誇れる国産オフローダーの最重要ブランドへ成長しています。
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1970年代からのRV熱へ対応すべく登場した本格4WDオフローダー
1950年代、後に陸上自衛隊となる警察予備隊創設時にアメリカのウイリス社からライセンスを得て、日本におけるジープの製造・販売権を獲得した三菱は、トヨタや日産との競争入札に勝利し、以後陸上自衛隊に至るまで同クラスの小型トラックを独占します。
そして民間市場でもトヨタ ランドクルーザーや日産 パトロール(後のサファリ)と並ぶ『本格オフロード4WD御三家』とでもいうべきポジションにありましたが、ライバルとは異なりライセンス契約がネックとなって、海外への輸出販売ができない問題がありました。
その後1970年代から本格オフローダーを特殊用途のみならず個人のレジャーでも活用しようという文化が現れ、三菱も1973年の東京モーターショーにはジープをオープンバギー風にカスタマイズしたジープパジェロを出展します(後にパジェロ1とも呼ばれる)。
しかし、ジープのままでは輸出できないという問題に変わりは無かったため、ジープとは別にRV市場への参入と輸出可能な国際戦略車を開発する事になりますが、ベースとなったのは1978年に発売、1980年に4WDが追加された小型ボンネットトラック『フォルテ』でした。
そんなフォルテ4WDの発売に先駆けて、東京モーターショーに出展されたコンセプトカー『パジェロII』はタルガトップの軽快なオフローダーでしたが、デザインは既に後の初代パジェロに近い完成度。
そして1982年5月、ついに初代パジェロが発売されました。
当時、既に『RV』というジャンル名は定着しつつあった頃で、トヨタの40系ランドクルーザーや初代日産 サファリ、初代いすゞ ビッグホーン、さらに小型RVでもダイハツ タフトやトヨタ ブリザードといったライバルがラインナップ。
結果的にクラス最後発となった初代パジェロですが、それだけに当時のユーザーがRVに求めた『乗用車クラスの操縦性・快適性・オンロード性能を持つ本格オフローダー』がピシャリとハマってヒット作となります。
そして、後述するパリ~ダカールラリーでの活躍もあってパジェロへの信頼性やブランドイメージは大いに高まり、バブル景気で絶好調だった時代の日本では大学生や若い社会人が初代末期や2代目パジェロにスキー板を積み、ウインターレジャーへ殺到する文化を作り出しました。
ライバルよりはるかに高かったRVとしての完成度
発売当初のパジェロはショートボディにメタルトップとキャンバストップの2種類がラインナップされ、エンジンをフロントミッドシップに搭載したためリアのみならずフロントオーバーハングも短いオフローダーとしては理想的な配置。
フロントのアプローチアングルは45度、リアのデパーチャーアングルは40度とジープ並になっており、最低地上高も230mmとタップリ確保されて高い悪路走破性を誇るだけでなく、ショートボディは小回りも効いて本格オフローダーとして優秀な性能を誇りました。
しかし初代パジェロの真骨頂は快適性にあり、ホールド性に優れたシートやサッシュつきで密閉性が高いマトモなドア、視認性や操作性に優れるレンジローバー風の内装などで、商用車風内装に毛が生えた程度だったライバルに内外装・快適性ともに差をつけます。
そしてリアサスペンションこそ3リンク車軸懸架+リーフスプリング(後にワゴン系などはコイルスプリング化)なものの、フロントはフォルテ譲りのダブルウィッシュボーン+コイルスプリング独立懸架で、4輪リーフリジッドが多かったライバル車のスパルタンな乗り味とは一線を画す仕上がり。
当初は商用登録のみで折り畳み式の後席までには至らなかった居住性も、乗用登録のメタルトップワゴンやロングボディのハイルーフワゴン、ミッドルーフワゴンも追加。
エンジンは当初から経済性とパワーを両立させた2.3リッターディーゼルターボをラインナップするなど充実した動力性能を誇り、後に2.5リッターディーゼルICターボや3リッターV6ガソリンエンジンも追加されています。
後の『砂漠の王者』の片鱗を見せた初代パジェロ
パジェロと言えばパリダカ、というくらいパリ~ダカールラリー(現在のダカールラリー)での活躍は代名詞のようになっており、RVブーム全盛期にパジェロを買おうかなどと話をすると、「パリダカでも行くのか?」と言われたほど。
ライバルメーカーも挑戦しなかったわけでは無いのですが、総合優勝を狙う三菱の存在は大きく、いつしか車好きの日本国民にとって「今年のパジェロはパリダカで勝てるか?」という年末年始の楽しみができたほど、まさに『パリダカ=パジェロ』でした。
なお、当時のパリダカが日本にどのように紹介されていたかは、1985年の日清カップヌードル『ハングリアン民族』編のCMが象徴的です。
あいにく初代パジェロは登場しませんが、人間の限界を極限まで試し、ハングリー精神の塊で突っ走るようなサバイバルラリーとして映像化されたパリダカは、まさに悲喜こもごものロマンあふれるモータースポーツイベント。
そこに日本を代表するかのように総合優勝を狙ったパジェロは、初代から大偉業を打ち立て、「あのパリダカで勝ったのか!」と注目を集めていきました。
そんな初代パジェロのパリダカへの挑戦は、1983年に市販車無改造クラスに初参戦していきなりクラス優勝を果たしたのが始まりで、翌1984年には市販車改造クラスでも優勝して総合成績も3位表彰台へ。
1985年には最高峰のプロトタイプクラスで総合優勝どころか1-2フィニッシュを決め、一気にパジェロの名声は高まりました。
その後総合優勝からはしばらく遠ざかりますが、表彰台や最低でも総合上位は確保しており、さらに市販車無改造部門や改造部門では常にどこかのクラスで優勝を続けています。
もっとも、当時総合優勝できないと言っても相手は、WRCのグループB消滅後に流れてきたポルシェ959やプジョー205T16で、いかに海外版スタリオンターボ用のエンジンをフルチューンして積んだプロトタイプカーとはいえ、総合で表彰台に上がっているだけでも大したものでした。
そして、ここで積み上げた実績が『砂漠の王者』2代目パジェロの超絶快進撃へつながるとともに、バブル時代のパジェロ大ヒットへも結びついていく事になります。
主なスペックと中古車相場
三菱 L043GV パジェロ メタルトップ2300ディーゼルターボ(ショートボディ) 1982年式
全長×全幅×全高(mm):3,930×1,680×1,865
ホイールベース(mm):2,350
車両重量(kg):1,450
エンジン仕様・型式:4D55 水冷直列4気筒ディーゼルSOHC8バルブ ターボ
総排気量(cc):2,346
最高出力:70kw(95ps)/4,200rpm(※グロス値)
最大トルク:181N・m(18.5kgm)/3,000rpm(同上)
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:25万~198万円
まとめ
一般的には1990年代のRVブーム全盛期を象徴する存在として2代目の伝説的大ヒットが話題になる事が多いパジェロですが、無骨で特殊な本格オフローダーにちょっと内装を整えた程度だった日本のRV市場へ『喝!』を入れた初代パジェロも、重要な1台でした。
2代目ほどではないものの当時のRVとしてはヒット作となった初代パジェロは、街中でやたらと本格オフローダーが走り回っていた時代にはランドクルーザーよりスマートで、ジムニーよりたくましくてカッコイイ憧れの車だったのです。
それはちょうど日本がバブル景気の頂点へ向けた大狂乱の坂を駆け上がっていた頃で、初代パジェロもまた、先頭グループでパリダカのごとく砂煙を上げながら砂丘を駆け上がっていきました。
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