前作『75』後継として1992年に登場したアルファロメオのミドルクラスセダン『155』は、台所事情の苦しかった同社がフィアット傘下に入ってから初めて開発されたモデルで、後輪駆動と決別してFF化していたものの、鋭いウェッジシェイプボディに5速MTのみの組み合わせという、何ともアルファロメオらしいスポーツセダンでした。

 

アルファロメオ155  / Photo by peterolthof

 

フィアット ティーポをベースとした多数の兄弟車のアルファロメオ版

 

アルファロメオ155  / Photo by Tony Harrison

 

1970年代に販売したアルファスッドの破滅的な品質低下でブランドイメージ凋落が激しく、1980年代に至っても困難だった品質や生産効率の向上、技術的に凝りすぎた高コスト体質によって極度の経営不振に陥っていたイタリアのアルファロメオ。

1986年にはついにフィアット傘下となって立て直しを図ることになり、フィアット ティーポをベースとしたフィアットグループ各社のプラットフォーム共通化計画の一翼を担う、新型セダンを開発することになりました。

しかし、トランスアクスルの採用などで高い評価を受けていたもののやはり高コスト体質で、基本設計も古かった後輪駆動の小型セダン『75』後継となる新型セダンは、前輪駆動の小型セダン開発プロジェクト『ティーポ3』に組み込まれ、1992年に『155』としてデビューします。

それは、共通化されたプラットフォームでブランド違いの兄弟車(フィアット テムプラやランチア デドラ)が存在したとはいえ、アルファロメオはフィアットグループにとってスポーツイメージを高めるブランドと位置づけられており、スポーツセダン色が非常に強いモデルでした。

ちなみに日本でも兄弟車ともども正規輸入販売が行われ、テムプラやデドラより広く支持を受けてアルファロメオのブランドイメージを高め、後継の『156』がヒットする基礎を作ったモデルです。

 

何と一貫して5速MTのみ!デルタHFインテグラーレの中身を移植した4WDターボもあり!

 

アルファロメオ155  / Photo by Niels de Wit

 

『155』が凄まじかったのはスポーツセダンとしての潔い割り切りっぷりで、何とAT車が存在せずトランスミッションは全て5速MTでした。

ちなみにテムプラやデドラには普通にAT車があったので、構造的に問題は無く設定の予定もあったものの、レース車両開発のため余力が無く断念したなどと囁かれる尾ひれが付くのが、いかにもアルファロメオらしいところ。

当初は日本の5ナンバーサイズに収まるボディへ、2リッター直列4気筒DOHC8バルブ、スパークプラグを1気筒あたり2本持つ『ツインスパーク』エンジンが基本でしたが、後にツインスパークの16バルブ化、2.5リッターV6エンジンが追加されています。

同じタイミングでワイドボディ化されて3ナンバーボディとなり、ボリュームのあるテールからフロントへ向け直線的に絞り込まれた、極端かつ見た目にわかりやすいウェッジシェイプ(クサビ型)ボディはさらにロー&ワイドになって迫力を増しました。

なお、ランチア デルタHFインテグラーレの2リッター直列4気筒DOHC16バルブターボエンジンを搭載した4WDターボモデル『155Q4』もモデル末期に廃止されるまでラインナップされており、まさに大活躍したラリーマシンの4ドアスポーツセダン版です。

 

イタリアからドイツへ、そして日本でもツーリングカーレースで活躍

 

DTMに出場したアルファロメオ155 2.5 V6 TI / 出典:https://www.fcaheritage.com/en-uk/heritage/stories/alfa-romeo-155v6

 

前述したように、アルファロメオはレース車両制作に忙しくてAT車を設定しなかったらしいと言われていますが、そのレース車両とは『155Q4』をベースとした2リッター4WDターボのレーサー『155GTA』です。

そんな155GTAはCIVT(イタリアツーリングカー選手権)でそれまで3年連続の王者だったBMW M3を退け20戦中17勝という圧倒的な強さで王者を奪還。

1993年以降は戦いの場を、DTM(ドイツツーリングカー選手権)にも求めます。

DTM仕様は2.5リッターV6自然吸気エンジンへ換装。

パイプフレーム化など純レーシングカーとしての性格をより強めた『155 V6 TI』となり、ITC(国際ツーリングカー選手権)時代も含めて1996年まで参戦。

1994年以降こそ振るわなかったものの、参戦初年度の1993年には最大のライバル メルセデス・ベンツ190E2.5-16EvoIIに競り勝って、20戦中12勝でメイクスおよびドライバー(10勝したニコラ・ラリーニ)のダブルタイトルを獲得しました。

 

DTMに出場したアルファロメオ155 2.5 V6 TI  / Photo by crazylenny2

 

なお、日本でも1994年に始まったJTCC(全日本ツーリングカー選手権)に、プライベートチームが持ち込んだ(1993年以降の)CIVT仕様『155TS』が参戦。

ジャンバティスタ・ブージがドライブした1994年第16戦(仙台ハイランド)で4位につけたのが最高位で、各チーム体制の整わなかった初期のJTCCを盛り上げるのにひと役買いましたが、やがてワークス体制が整うと相対的に戦闘力を失い、1995年限りで撤退しています。

 

主なスペックと中古車相場

 

アルファロメオ155  / Photo by peterolthof

アルファロメオ 155 V6 2.5 1996年式

 

全長×全幅×全高(mm):4,445×1,730×1,425

ホイールベース(mm):2,540

車両重量(kg):1,370

エンジン仕様・型式:水冷V型6気筒SOHC12バルブ

総排気量(cc):2,492

最高出力:118kw(160ps)/5,800rpm

最大トルク:216N・m(22.0kgm)/4,500rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:24.8万~398万円

 

まとめ

 

アルファロメオ155  / Photo by Neil

 

フィアット ティーポ系のプラットフォームを使ったことで、アルファロメオの純血を失ったなどネガティブな印象を持たれる一方、FF化してもこれぞアルファと新たな価値観へ適応していったユーザーには熱い歓迎を受けた『155』。

もしレースに出場していなければ『単なるアルファの盾をつけたフィアット車』になりかねないところでしたが、しっかりとレースに参戦するのみならず、DTMで強敵を打ち破りシリーズタイトルを獲得する活躍ぶりで、むしろブランドイメージの向上に貢献しています。

とはいえイタリア本国や世界的なセールスは期待したほどでは無かったようですが、日本ではアルファロメオの品質面に起因するネガティブイメージを打ち消すほどの人気ぶり。

後継の『156』のように、街のあちこちで見かけるほどのヒットではありませんでしたが、無骨さや迫力すら感じさせる直線的なデザインに『硬派なアルファ』をイメージする人は多いかもしれません。

 

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