アルファロメオといえばかつては走行性能といい品質といい『情熱的な楽天家』というイメージが良くも悪くも当てはまる自動車メーカーでした。そして、その評価を不動のものにしたのが同社初の量産FF車、アルファスッドです。初期モデルは長生きできない個体が多かったのは事実のようですが、決して駄作ではなかったことは、ベルリーナ(セダン)やジャルディネッタ(ワゴン)系だけでも1984年までの10年以上も販売されていた事が証明しています。

 

アルファロメオ アルファスッド / 出典 :https://www.autoweek.nl/forum/read.php?18,5282640,page=41

 

『南部のアルファ』アルファスッド

 

アルファロメオ アルファスッド / 出典:https://www.mad4wheels.com/alfa-romeo/alfasud-1971

 

アルファスッドという車を語る上で、まずは当時のイタリアが抱えていたいささか複雑な背景を知る必要があります。

その起源から説明すると長くなるので割愛しますが、イタリア半島では古くから農業が盛んだった南部と工業化で発達した北部との貧富の格差が激しい『南部問題』が第2次世界大戦後まで続いていました。

アルファロメオは北部の街ミラノに本社を置きながらも、その社歴はイタリア南部同様に常に赤字の連続で、1933年の経営不振以来、IRI(イタリア産業復興公社)の傘下でした。

1960年代にいよいよ南部問題の解消を狙ったイタリア政府は、IRIを通して事実上の国有企業だった当時のアルファロメオの工場を南部に作るという雇用政策を計画。

それに応えた同社は、どうせ新工場を作るなら思い切ったFFの新型車を製造しようと考えたようです。

そして、かのフェルディナント・ポルシェ博士の愛弟子ルドルフ・ルスカが設計したアルファスッドは、1971年のトリノショーでデビュー。

そのスタイリングはメディアから絶賛を浴び、ナポリ近郊へ新たに建設されたポミリャーノ ダルコ工場から続々と出荷されました。

しかし、アルファスッド(以下『スッド』)が納車されたユーザーはしばらくして、すぐに車体がサビ始めた事に気づきます。

とはいえ「何だ、やはり車なんか作った事の無い南部の作りはダメじゃないか」とも言い切れない理由があり、ソ連製の鋼板の品質不良であるとか、車体を塗装前に工場の外へ一度移動するなど工場の動線にも問題がありました。

このことでアルファロメオのブランドに大きな傷がついたのは事実で、やがてスッドの品質は安定し世界各地の工場で作られて1984年まで販売されたとはいうものの、新旧取り混ぜたアルファロメオに関する数々の『逸話』は、後の156の頃までよく耳にする事となりました。

 

ボディのアレコレはさておき、走りは活発でハンドリングも良好という評価

 

アルファロメオ アルファスッド  / Photo by Tony Harrison

 

ボディについてはさておき、スバル1000にもよく似た水平対向エンジン縦置きFFレイアウトや4輪ディスクブレーキ(フロントはインボード式なのもスバル1000と同じ)による走りの良さ、そしてその信頼性は高く評価されました。

特にハンドリングは当時のFF車としてはなかなか良好だったようで、既にアウトビアンキ プリムラ(1964年)などで実用化されていたジアコーサ式や、ミニのようなイシゴニス式の横置きFFレイアウトにしなかったのは正解だったようです。

低重心かつ左右対称レイアウト、パワフルとまでは言えないがよく回るエンジンで俊敏に走るスッドは、走りの面ではかなり好評で、後に直線的なデザインを持つ派生モデルのアルファスッド スプリント(アルファロメオ スプリントと改称し1989年まで販売)も追加されました。

そんなスッドそのものは一見ハッチバックに見えるものの、独立トランクを持つ2/4ドアセダンの『ベルリーナ』と3ドアステーションワゴンの『ジャルディネッタ』が販売され、モデル末期の1981年には3/5ドアハッチバックも追加。

このハッチバック版とジャルディネッタは後継の『33』へ受け継がれます。

また、エンジンは1.2リッターシングルキャブ水平対向4気筒SOHCでしたが、暫時ボア、ストロークともに拡大していき、最終的には1.5リッターへ排気量アップされました。

 

アルファらしく!ラリーやワンメイクレースで活躍

 

アルファロメオ アルファスッド / Photot by Lav Ulv

 

スバル1000と共通項の多いFF車という事で期待されるラリー参戦は、モンテカルロやツール・ド・コルスへ何度か投入されたようですが、グループ2やグループAでの参戦だった事から派手な成績は残していないようです。

よりアルファらしい一面としては1975年からイタリア国内で、翌年からはオーストリア、さらにその後フランスやドイツでもスッドのワンメイクレースが盛んに開催されました。

そして1977年から開催された『トロフェオ・ヨーロッパ・アルファスッド』では、アルファロメオのレース部門『アウトデルタ』のトロフェオ仕様キットを装着したスッドで、各国選りすぐりのドライバー達が激しく競い合ったと言われています。

 

主なスペックと中古車相場

 

アルファロメオ アルファスッド ti  / COPYRIGHT© TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

アルファロメオ アルファスッド ti 1973年式

 

全長×全幅×全高(mm):3,926×1,590×1,370

ホイールベース(mm):2,455

車両重量(kg):810

エンジン仕様・型式:水冷水平対向4気筒SOHC8バルブ

総排気量(cc):1,186

最高出力:50kw(68ps)/6,000rpm

最大トルク:90N・m(9.2kgm)/3,200rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

アルファロメオ アルファスッド  / Photo by Tony Harrison

 

オールド アルファの中でも1950年代のジュリエッタや1960年代のジュリアほどには知られておらず、エンスージアスト向け漫画でも三枚目の脇役的なポジションにあったアルファスッド。

「アルファスッドっていうくらいだからスッドはあくまで南部(ナポリ)で、北部(ミラノ)のアルファロメオとは別なんだよ。」

などと散々な書かれようだった事すらありましたが、サーキットを走る姿などを見ると「さすがスッドもアルファの一族よ」と頬が緩むアルフィスタの方もいるのではないでしょうか?

近年FRの8Cやジュリア、ミッドシップの4Cで後輪駆動が復活するまでの一時期、FFのみのラインナップだったアルファロメオにおいて、それでもスポーツイメージを崩さずやってこれたのは、このスッドの経験があったからかもしれません。

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