21世紀初頭は、自動車業界にとって新しい時代に相応しい『スーパースポーツ』というジャンルのクルマたちの誕生ラッシュで始まったと言っても過言ではありません。2002年のパリ・サロンで発表された6リッター V12エンジンを搭載して660馬力の出力を誇る名馬エンツォ フェラーリ、そして2003年にVW傘下でデビューを果たしたブガッティ ヴェイロン16.4は出力1000馬力以上で最高速度は実に406km/hを達成。そんな時代にあわせたかのように、2003年9月にドイツの自動車メーカーの雄 ポルシェが世界に向けて放ったスーパースポーツが『ポルシェ カレラGT』でした。
CONTENTS
ポルシェが放ったスーパースポーツ!!
ド派手な黄色いボディに低く構えたルーフにGTウイング!
画像のクルマがすぐにポルシェだと解る人は、かなりのマニアと言えるのではないでしょうか?
2000年のパリ・サロンでミレ二アム発表された『ポルシェ カレラGT』は、スタディモデルからアップデートに数年の歳月を費やして、2003年9月に市販モデルを発表。
全長4,613mm、全幅1,921mmというボディサイズは、同時期のカレラ血統である996モデルが全長4,430mm、全幅1,765mmである事と比べても、決してコンパクトでは無くポルシェの中でも異質な存在であることが明らかでした。
限定販売台数1,500台を謳い文句に販売が開始されたスーパースポーツの心臓部には、新開発のプレミアムなV型10気筒エンジンを搭載。
この新型V10はル・マン24時間への出場を見据えて開発が行なわれていたエンジンユニットなのですが、諸事情によりルマンの出場計画が実現出来ず、だったら市販スーパースポーツに搭載してしまおうという形でカレラGTに搭載が決まった、曰く付きのエンジンです。
スーパー・ポルシェの歴史
プレミアムスーパースポーツカーである『ポルシェ カレラGT』。
ポルシェの長い歴史の中では、そんなスペシャリティーモデルが数台存在しています。
そんなカレラGTのルーツともいえる特別なポルシェをピックアップしてみました。
ポルシェ917『Porsche 917K Road Car』(1969年)
1969年3月に、ワールドプレミアを果たしたポルシェ917。
ヘッドライトのデザインを、今回紹介する『ポルシェ・カレラGT』が引き継いでいることは有名です。
2座席オープンレーシングカーであるポルシェ908の車体をベースに水平対向12気筒4.5リッターエンジンを搭載し、レーシングユースを意識したコンペティションモデルで、フェラーリ512SやフォードGT40といった名車と肩を並べる存在ですが、レーシングカーとしての完成にはかなりの時間を費やしました。
そして1969年10月10日に富士スピードウェイで開催された日本グランプリにもTAKIレーシングから出場し、ニッサンR382とトヨタ7勢に次いで総合6位の結果を残しています。
ポルシェ959(1987年)
グループB規定のレース参戦の為、911の車体をベースに開発されたのがポルシェ959。
見た目は911のシルエットを大柄にしたイメージですが、中身は別物。
シーケンシャルターボで武装した2.85リッター水平対向6気筒エンジンは、450馬力を発生するモンスターマシンと化しています。
また、フルタイム4WDシステムに加え、FRPやアルミを使用した軽量ボディは当時の最先端技術の結晶ともいえる仕上がりで、420,000ドイツマルク(当時レートで日本円に換算して約4000万円)で292台のみ限定生産されましたが、発売後すぐに完売する人気ぶりをみせました。
ポルシェGT1(1996年)
これぞまさにポルシェのフラッグシップ スーパーカーといえるのがレースカーとして華々しい成功を収めた『911GT1』をベースとする公道仕様のホモロゲーション スペシャル『911GT1 Strassenversion(ストリートバージョン)』です。
フロント部分に993型カレラの面影があるものの、CFRP製のカウリングを含めてボディの殆どをGT1モデル専用部品で構成。
1,100kgという軽量ボディに、3164cc水冷水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、このエンジンユニットは公道仕様にデチューンされているものの最高出力は実に544psを発揮。
0-100km/hに要する加速時間は3.7秒で最高時速は308km/hをマーク。
当時のスーパースポーツモデルとしては圧倒的なスペックを誇る、究極のポルシェでした。
ミレニアムスーパースポーツ・ポルシェカレラGTを紹介
このモデルの特徴のひとつは、なんといっても軽量なカーボンファイバー製ボディでしょう。
イタリアの『ATR』というメーカー製モノコックタブ&サポートフレームは高次元のボディ剛性に加え、適度な”ねじれやたわみ”を発生してレーシングカー並のトラクションの良さを実現。
更に、ポルシェが目指す安全性なども備えています。
そしてサポートフレームを介して搭載されるパワーユニットは、前筆したル・マン仕様5.5リッターレーシングカー用エンジンをベースに開発されており、最終的には5,733ccまでボアアップされました。
バンク角68度という珍しい構造でクランクシャフト位置が極限に低くなっているこのDOHC・V10ユニットは、最高出力612馬力を発生し、最高速度は330km/hを実現します。
その他にも燃料噴射装置を『モトロニックME.7.1.1』で制御し、パワーユニットと仲介するクラッチには世界初となるセラミック コンポジット クラッチを採用。
新開発のV10ユニットが発生する600馬力以上を、惜しみなく後輪に伝達することに成功しています。
また、スーパースポーツにとっての要であるブレーキシステムには、ディスク径380mmのセラミック コンポジット ブレーキを採用するとともに、強力な6ポッドピストンキャリパーを装着。
ブレーキフェード現象の対策と強力なストッピングパワーを手に入れました。
そしてエクステリアに目を向けると、どことなくポルシェ917を連想させるフロントフェイスに、歴代スーパーモデルと同じくワイド&ロースタイルで空力を意識したエアロダイナミクスデザインであることは一目瞭然。
リヤスポイラーは120km/hに達すると自動で16㎝せり上がってくる仕組みで、それによりダウンフォースが30%高くなる効果を発生します。(80km/h以下で元の位置に戻る。)
ちなみにエンジンシステムでサーキットモードと判断するとスポイラーはせり上がったままの状態が保たれる仕様となっています。
インテリアデザインの特徴は、何と言っても独特な位置にシフトノブが存在しているカーボンファイバー製センターコンソール。
シフトノブのデザインは、前筆スーパーポルシェで紹介させていただいた『ポルシェ917』を思わせるアッシュ材などを層状に造形したものが採用されています。
また、カーボンファイバー、マグネシウム素材を多用して徹底的に軽量化を意識した室内で特筆すべきはバケットシート。
ドライバーに最も近い存在のこのドライビングシートの重量は約10kg。
カーボンファイバーに特殊な繊維を併せて造形し、万が一の際に破片が飛散しないように配慮されているところからも、ポルシェの安全哲学が感じられました。
ポルシェ・カレラGTスペック
エンジン形式 | 水冷V型10気筒 |
ボア×ストローク | 98.0mm×76.0mm |
排気量 | 5,733cc |
燃料噴射装置 | 電子制御式燃料噴射 |
最高出力 | 612ps/8,000rpm |
最大トルク | 60.2kgm/5,750rpm |
サスペンション形式 | F.ダブルトラックコントロールアーム |
R.ダブルトラックコントロールアーム | |
ブレーキ | ベンチレーテッドディスク・6ピストン |
全長×全幅×全高(mm) | 4,613×1,921×1,166 |
車両重量 | 1,380kg |
ホイール | 鍛造マグネシウム製センターロック式 |
まとめ
『スーパースポーツ』というジャンルから、あなたはどのようなクルマを思い浮かべますか?
一般的にはフェラーリF40、エンツォやランボルギーニなどイタリア発の原色が似合うマシンを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、コレクターズアイテム的な要素の強いこれらのスーパースポーツは、ドライビングテクニックを要したりメンテナンス面でも非日常的な性格のものが多く、もはやロードゴーイングカーの領域を飛び越しているといえるでしょう。
そこにポルシェが放ったスーパースポーツ『ポルシェ カレラGT』は、華やかさこそ一歩引けをとるものの、安全性を意識してまとめられたパッケージングデザインは街の景色にも溶け込んで、日常的に使い込むことでその価値が増していくこだわりの一台に仕上がっています。
[amazonjs asin=”B00ABW5J0I” locale=”JP” title=”タミヤ 1/12 ビッグスケールシリーズ No.50 ポルシェ カレラ GT プラモデル 12050″]
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!