フェラーリ創設50周年を記念し、40周年記念車F40に続いて開発されたのがF50でした。基本的には「F1のエンジンを積んだロードカーを作ろう」というシンプルなコンセプトで、デビュー当時はやや型遅れになっていたとはいえ、本物のF1用エンジンをデチューンしたものが搭載、実戦投入こそされなかったものの、F40後継のレーシングカーF50GTも制作されました。
スーパーカーの皮をかぶったF1マシン、F50
1947年に公道走行用の一般向けロードゴーイングカー部門が設立されたフェラーリは、1997年に創立50周年を迎えようとしていました。
40周年記念車F40は「創立者エンツォ・フェラーリの最後の仕事であり遺産」的な存在として、その理想を追求したマシンとして開発、40周年となる1987年にデビューしましたが、F50はその成り立ちやコンセプト、販売時期などがだいぶ異なります。
まずそのコンセプトは、それまでフェラーリの存在理由であったスクーデリア・フェラーリでのF1参戦で培ったテクノロジーを導入し、そのエンジンを搭載したロードゴーイングカーである、というシンプルなもの。
デチューンするとはいえ基本的に公道向けのエンジンでないことは確実で、EU圏内で段階的に強化されつつあった排ガス規制が、さらに強化される以前に販売しないと車そのものが成り立りません。
そのため、創立40周年に合わせて販売されたF40とは異なり、創立50周年に販売終了となるスケジュールが組まれ、2年前の1995年から発売されました。
構造的にはまさにF1並
F50最大の特徴と言えるTipo040改は1992年シーズンを戦ったスクーデリア・フェラーリのF1マシン、フェラーリ F92A用の3.5リッターV12エンジン、Tipo040がベースです。
これを4.7リッターに排気量アップして、レーシングエンジンのように常時高回転を要してアクセルへの反応に敏感、ミッションも最終的に7速セミAT(改良型F92AT)を要するほどピーキーな性格だったのを、公道での使用に耐えうるようにセッティングしたのです。
それをカーボンコンポジット製のセンターモノコックに、エンジンマウントを介さずボルトで直付けするというF1同様の手法で搭載しました。
ウレタンやジュラコン素材を使った強化エンジンマウントに換装した車をドライブした経験のある人なら想像がつくと思いますが、これによる振動や騒音は非常にエキサイティングなもので、とてもスパルタン。
それでいてF40とは異なり立派な豪華内装やエアコンなど快適装備も充実していたので、ある意味では「GTの皮を被ったF1」とも言えました。
前後サスペンションがF1と同じくプッシュロッド式で、ルーフは取り外し可能なタルガトップなのでオープンにしていればまさに並列複座式のF1です。
もっとも、F40がその末期にレースでライバルとしたマクラーレン F1を直接ライバルとして意識したわけではなく、F40のように強引な速さを狙ったわけでもないところから、やはりGT的性格が強いのかもしれません。
3台が試作されたレース用F50GT
F50には開発段階でF40後継としてFIA GT選手権やル・マン24時間レースのGT1カテゴリーで参戦する予定もあったので、3台のレーシングカー仕様F50GTが製作されました。
マクラーレン F1に直接対抗しうることを目指さなかったというコンセプトゆえか、実際にレースへ出走することこそ無かったものの、ダラーラで製作されたF50GTはタルガトップを完全なクローズドボディへ変更するなどのモディファイが施されています。
スポイラーやリアウイングといったGT1規定に沿った空力パーツも専用設計で取り付けられており、レースに参戦していればF40LMなどと同様、市販バージョンの登場も期待されましたが、それが実現しなかったのは残念なことでした。
結局、製作された3台は「モータースポーツに使用しない」という誓約書にサインをしたコレクターへ売却され、レースにこそ出なかったもののイベントでサーキットを走る姿を見せています。
主要スペックと中古車価格
フェラーリ F50 1995年式
全長×全幅×全高(mm):4,480×1,986×1,120
ホイールベース(mm):2,580
車両重量(kg):1,230
エンジン仕様・型式:Tipo 040改 水冷V型12気筒DOHC60バルブ
総排気量(cc):4,698cc
最高出力:520ps/8,500rpm
最大トルク:48.0kgm/4,500rpm
トランスミッション:6MT
駆動方式:MR
中古車相場:ASK
まとめ
野蛮の極致と言えたF40に比べると、F50はエレガントさすら漂わせるほど落ち着いた雰囲気をその内外装から漂わせていますが、構造的にはF1に近く、F1由来のエンジンを搭載するなど、ある意味ではF40よりよほど過激な一面を持っています。
ブーストが立ち上がると制御困難なジャジャ馬と化したF40よりおとなしそうな印象も受けますが、並以上の腕を持たないドライバーが乗れば、いくらピーキーさを抑えたとはいえF1用エンジンがベース、乗りこなすのは容易ではありません。
レースに参戦しなかったことは残念でしたが、これもまたフェラーリ創立50周年を記念するにふさわしい車だったと言える1台ではないでしょうか。
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