1991年に発表され、伝説のスーパーカーとされているマクラーレン F1。3人乗りレイアウトとセンターにある運転席が特徴で、最高速391km/hを記録し、世界中のスーパーカーファンを虜にしたクルマです。そんなF1の後継モデル『スピードテール』が発売されました。もちろんシートは真ん中に運転席の3人乗り。エンジンとモーターを搭載したハイブリッドモデルで、時速400キロオーバーを発揮するハイパーマシンです!
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ハイブリッドで400km/hオーバー!マクラーレン・スピードテール発表
スーパーカーや、さらに上をゆくハイパーカーはガソリンエンジンだけに頼る時代ではなくなりつつあります。
クロアチアの電動スーパーカーメーカー リマック(RIMAC)は、1,888PS、最高速度412km/hにも達する『RIMAC C_Two』を発表。
フェラーリも自社初のハイブリッドカーである『ラ・フェラーリ』を限定499台発売し、さらにBMWのPHV(プラグインハイブリッド)スポーツ『i8』も、BMWを代表するスポーツカーとして認知されつつあります。
このように、パワートレインにモーターを搭載するスーパーカーやハイパーカーは珍しくなくなりつつある中、マクラーレンも新たなハイブリッドカー『スピードテール』を発表。
最高速度はマクラーレンF1よりも速い、時速400km/hにも達するハイパーカーです。
それもそのはずで、伝説のスーパーカー マクラーレンF1のセンタードライビングシートの3人乗りを採用し、F1の後継モデルとされる1台。
気になる価格は約2億5,000万円!
限定106台の発売でしたが、すでに完売しており、いくらお金を持っていても、特定のお得意様しか乗ることを許されないハイパーカーなのです。
マクラーレン・スピードテールとは
マクラーレンは、2018年3月に行われたスイス ジュネーブモーターショーで、コードネーム『BP23』と呼ばれるモデルの開発を明かし、同年7月にモデル名が『スピードテール』である事を発表。
1993年に登場した、F1の後継モデルであることを示唆しています。
また、V8ツインターボのハイブリッドシステムを搭載し、マクラーレン史上、最速かつ最も華麗なモデルとしてハイパーカー市場で注目を集めました。
スペックは、搭載されるパワーユニットに関するアナウンスはされていないもの、最高出力1050PSを発揮。
予想では、マクラーレンの最上級ロードモデル『P1』と同じ3.8リッターV8ツインターボにモーターを搭載し、P1よりさらにパワーアップを目指したチューニングが施されていると考えられます。
車両の乾燥重量は1430kgで、同じく400km/hオーバーを達成するブガッティ シロンが1,996kg。
これほどまでパワフルなパワートレインを搭載しておきながら1.5トン以下におさまっているのは、オールカーボンボディのなせる業。
最高速度は403km/h、0~300km/h加速12.8秒を実現し、0~300km/h加速ではP1の16.5秒より3.7秒速い加速力を誇ります。
マクラーレン・F1とは
ここで簡単にマクラーレンF1について解説したいと思います。
F1は1993~1998年にマクラーレン オートモーティブ(McLaren Automotive)が製造・販売したスポーツカーです。
室内には前方真ん中に運転席が配置され、後方には運転席を挟むよう後部座席が2つの3シートを採用。
誰もが初めて目にした3シート構造が話題を呼び、さらにレーシング仕様のGTRは、世界中のビッグレースで連戦連勝の速さを見せつけ、注目を集めました。
F1の車体にはBMW製6.1リッターV12エンジンをリアミッドシップに配置し、最高出力626PS、最大トルク66.40kgf・mを発揮。
1998年には現在ブガッティのテストドライバーを務めるアンディ・ウォレス氏が389km/hの最高速度を記録しています。
また、F1の総生産台数は64台のロードモデルと、5つのプロトタイプ(XP1, XP2, XP3, XP4, XP5)、28台のレーシングカー(GTR)、1台のチューンドプロトタイプ(XP1LM)、5台のチューンドモデル(LM)、1台のロングテールプロトタイプ(XPGT)、2台のロングテールモデル(GT)の合計106台とされており、今回のロングテールモデルが限定106台なのもF1の製造台数にちなんでいます。
時速400キロを発揮するハイパーカーと思えないほど美しいデザイン
時速400km/hを超えるスピードを実現させるには、空力面の考慮が重要です。
高速になればなるほど空気抵抗が増していき、クルマを安定させるために地面に押さえつける力が必要になるため、大きなエアロパーツやウィングを装着するのが一般的。
しかしマクラーレン スピードテールのボディサイズは詳細に公表はされていませんが、わかっている範囲で全長5,137mmと、全高がデフォルト値1,135mm。
マシン全体がエレガントな流線型となっており、フロントのスポイラー以外に目立つウィングやカナードは見当たりません。
驚くべきことに、速さに加えてロードカーとしての美しさも兼ね備えているのです。
サイドミラーは、『デジタル リア ビュー』と呼ばれるレクサスESにも採用されたカメラ式で、ミラーがサイドドアに埋め込まれる構造。
公道を走行するときは法的なところを考慮してミラーは出てきますが、『ヴェロシティ(Velocity)』という走行モードを選択すれば、ミラーが格納されロードクリアランスを35mm下げて車高を1120mmまで抑えるなど、最高速を意識した車両状態を生み出して時速400キロオーバーを実現させます。
また、前タイヤは20インチで10本スポークの鍛造アロイホイールが装着され、ホイールに装着されたカーボン製の『スタティック エアロカバー』はハブの中に固定されているため、タイヤと一緒に回転せず、フェンダー周りの空気抵抗をなくす役割を果たす構造に!
さらに、スピードテールの外装で最も注目して欲しいのは『アクティブ エア エルロン』と呼ばれるウィングの役割をする可変空力システムです。
一枚のカーボンファイバーボディでありながら、継ぎ目なしでリアパネルのスリットが最大26度めくれ上がり、空気抵抗の低減やスタビリティの向上に貢献。
減速時の空気抵抗を生み出すこともできます。
これはマクラーレンが特許を取得した技術で、一枚板のカーボンでありながら、柔軟にまげることが可能です。
とはいえ、頻繁に曲げることによる疲労破損が心配されますが、マクラーレンによる長期テストで耐久性も確認されています。
まさに現代に蘇ったマクラーレンF1を感じさせる内装
スピードテールのフロントガラスは屋根まで伸びており、グレイジングスイッチにより、屋根部分を黒くすることが可能です。
ちなみに、外側から見たガラス部分を全て黒くすることもできますが、法的なことを考慮すれば、公道走行時に黒くできるのは屋根とリアガラス部分だけになります。
室内は、スイスの時計ブランド『リシャール・ミル』とのコラボレーションで設計された時計製造法で用いられる新素材、『シンプライ テクノロジー カーボンファイバー』を自動車で世界初採用。
オーバーヘッドコンソール、パドルシフト、ステアリングホイールにこの素材が使われています。
また、ドライブインストゥルパネルは3つの液晶パネルがセンタードライビングシートを囲むように設置されており、Aピラーの付け根にはデジタル リア ビューモニターを装着。
まさに現代に蘇ったF1を感じさせる内装は、2億越えも納得の内容です。
まとめ
3シーターマクラーレンの復活は、あるひとりの顧客の要望からスタートしました。
そして、すべてのスピードテールがマクラーレン スペシャル オペレーションズによりオーナーひとりひとりに合わせて作られ、2020年をめどに各オーナーへデリバリーされます。
驚くべきは、プロトタイプBP23がジュネーブモーターショーで発表されたかなり前の段階で新型のマクラーレン アルティメットモデルの開発に着手することがマクラーレンのお得意様へアナウンスされ、2016年11月には106台の買い手が全て決まっていたということ。
おそらく、マクラーレンは特定のVIPカスタマーにのみ極秘でF1の後継モデルの3シーターハイパーカーを開発する事を伝え、2億円以上するクルマの全貌を見る事なく、購入が決められました。
それほどマクラーレンF1の復活を望むファンが一定数存在した上に、復活の話だけで購入を決定するほどマクラーレンと顧客の間には、強い信頼関係があるのでしょう。
特定のVIPカスタマーしか乗ることを許されないスピードテールですが、走行するシーンを見る事を想像するだけでも今からワクワクが止まりません。
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