ミニバンは大人数を乗せるため、空間ユーティリティーにはこだわった作りとなっています。そのため車体はボックス型で、駆動方式はFF。セミボンネットにエンジン類を搭載するのがセオリーです。しかしこのセオリーをガン無視したのが、初代トヨタ エスティマ。果たして、どんな車だったのでしょうか。
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初代トヨタ エスティマ誕生の背景
初代トヨタ エスティマが誕生したのは、1990年のことでした。
当時のミニバンはトラックベースであったり、同じボディに商用バンがラインナップされているなど、ミニバン専用に開発された車種はありませんでした。
トヨタではライトエース、タウンエース、マスターエース、ハイエースと1BOX車のフルラインナップが完成しており、多人数乗用車の次なる一手を模索する流れに。
また北米市場で安全基準が厳しくなり、従来の1BOX車では対応が困難となります。
そんな状況の中で開発されたのが、初代エスティマでした。
初代エスティマのデザインを担当したのは、カリフォルニアにあるトヨタのデザインスタジオ「CALTY」で、タマゴを思わせる流麗で未来的なワンフォルムデザインを提案。
このデザインを実現するために、従来の1BOX車とは異なるアプローチで開発されたのです。
初代トヨタ エスティマが名車たる理由
初代エスティマが『名車』と呼ばれる理由は、3点あります。
1点目は、爆発的かつ持続的に高い販売ペースであったこと。
2点目はベースとなる商用車を持たず、最初からミニバンとして開発された独立モデルであったこと。
3点目はミニバンなのに、エンジンレイアウトにミッドシップを採用したことです。
爆発的かつ持続的に高い販売ペースを維持
初代エスティマは日本では大人気で、目標販売台数は月間2,000台でしたが、受注台数は予定を大幅に上回りました。
さらに日本専用ナローボディとして、初代エスティマの開発段階から予定されていたエスティマ エミーナ/エスティマ ルシーダが投入されると、シリーズ月間受注が1万台のペースに!
初代エスティマは10年間生産されましたが、モデル末期でもシリーズ月間1万台の受注ペースは落ちませんでした。
ベースとなる商用車がない独立モデル
ミニバンの独立モデルは、日本初の試みでした。
従来の1BOXカーがどこか商用車っぽい雰囲気を醸し出す中、初代エスティマは新幹線のグリーン車の雰囲気でした。
というのも初代エスティマのコンセプトは「高性能ニューコンセプトサルーン」で、あくまでセダンとして開発されたからです。
初代エスティマの価格は296万5,000円~335万円だったので、車格的には当時のマークII ツアラーVやクラウンの2.5リッター車並みでした。
また、2-2-3の座席配置で、キャプテンシートを採用した2列目シートの快適さは、当時の1BOX車の比ではありませんでした。
さらに、ベースの商用車を持たないことから初代エスティマは、当時ミニバンのスペシャルティーカーだと騒がれる事態に。
そんな背景もあった為か、エスティマは2度のモデルチェンジを行いましたが、シリーズを通じて1度も商用車バージョンは設定されませんでした。
ミニバンなのにミッドシップ!
ミニバンでミッドシップを採用しているのは、おそらく世界中で初代エスティマが唯一ではないでしょうか。
タマゴ型フォルムにこだわったこと、初代エスティマはあくまで高級セダンとして開発されたことから、従来の1BOXカーレイアウトのエンジン配置(前輪の上にエンジンがある)は採用できません。
また前輪上に運転席を配置すると運転感覚がトラックそのものになってしまうため、セダンの運転感覚を生み出すには前輪を運転席より前方に配置する必要がありました。
そうなるとノーズ部分はほぼないデザインのため、エンジンの配置場所がないということで、運転席後方のホイールベース内のフロア下にエンジンを搭載したのです。
とは言っても、実は最初からミッドシップは企画されていましたが、当初搭載が予定されていたエンジンは、新開発の小型2ストロークエンジンでした。
しかし排ガス規制をクリアできず、2ストロークエンジンの開発を断念。
代わりにハイエース用のエンジンを低床フロア下に搭載するために、75度傾斜させて搭載したという、離れ業をやってのけたのです。
初代トヨタ エスティマ主要スペックと中古車価格
トヨタ エスティマ 2WD 1990年式
全長×全幅×全高(mm):4,750×1,800×1,780
ホイールベース(mm):2,860
車両重量(kg):1,730
エンジン仕様・型式:2TZ-FE 水冷直列4気筒ハイメカツインカム16バルブ
総排気量(cc):2,438
最高出力:135ps/5,000rpm
最大トルク:21.0kgm/4,000rpm
トランスミッション:4AT
駆動方式:MR
中古車相場:25~108万円(2019年11月現在)
まとめ
トヨタ エスティマは2代目以降、FFベースのセミボンネットバンになりました。
製造技術の進化でタマゴ型フォルムの実現に、初代モデルで用いた様々な新技術を使用しなくても対応できるようになったのです。
そして2019年10月、3代目モデルをもって、エスティマの29年の歴史に幕が下ろされました。
これは、初代モデルの持つセンセーショナルさが、モデルチェンジを重ねるごとに薄れた結果なのかもしれません。
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