1980年代、ハイソカーブーム全盛期。トヨタが『世界に通用する高級パーソナルクーペ』として発売し、大ヒットとなったのが初代ソアラです。現在ではレクサス LCに相当するモデルですが、高級

2ドア

クーペでありながら飛ぶように売れた初代ソアラは、今で言う高級SUVに相当する万能モデルだったのかもしれません。

 

初代トヨタ ソアラ / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

厳しい排ガス規制を乗り越え、高級車がもてはやされる時代に生まれたソアラ

 

初代トヨタ ソアラ / Photo by Iwao

 

1981年2月にトヨタから、1台の高級パーソナルクーペが発売されました。

その名は英語で『急速に上昇するもの』、最上級グライダーを意味する『ソアラ(SOARER)』。

1970年代中盤以降、自動車メーカー各社は、アメリカのマスキー法に端を発する厳しい排ガス規制と、オイルショックによるガソリン価格の高騰による燃費対策に追われていました。

そのため国産・輸入を問わず、カタログスペックはともかくモッサリとしたエンジンフィーリングは避けられず、牙を抜かれた我慢の時代が続いたのです。

それでも1980年を迎える頃には触媒や電子制御燃料噴射技術などに一定のメドがつき、環境技術と性能を両立した改良型、あるいは新世代のエンジンを積んだ車が続々と登場するようになります。

また、ハイソカーと呼ばれるアッパーミドルクラス以上の高級感あふれる4ドアセダンやハードトップの流行が始まったのもその頃で、国産高級モデルが一気に飛躍した時代でもありました。

 

初代トヨタ ソアラ / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60010493/index.html

 

そこでトヨタは、ハイソカーの高性能高級パーソナルカー版と言えるソアラをラインナップに加え、かつての2000GTに近いイメージリーダーの創出を目論みます。

そしてヨーロッパの高級GTを目標に開発されたソアラは極端な廉価グレードを設定せず、高級志向に徹して数々の先進装備を採用したことでブランディングに成功。

発売されるや、ステータスシンボルとして飛ぶように売れる大ヒット作になったのです。

 

メカニズム面で共通性の高い、2代目セリカXXの高級GT版とも

 

初代トヨタ ソアラ / Photo by Vasconium

 

トヨタの最上級スペシャリティカーとしては既に、1978年にセリカXX(初代)が登場していましたが、これは直列6気筒エンジンを搭載できるよう40系セリカのフロントを延長した、北米向け大排気量車(日本国外では初代スープラでもある)でした。

また、その後継となる2代目セリカXXと並行するように開発され、7ヶ月早くデビューした初代ソアラは、ホイールベースこそ異なるものの、エンジンラインナップやサスペンション形式、4輪ディスクブレーキ、内装の最新装備などメカニズム面で共通性が高くなっています。

とはいえ両車のキャラクターは明確に異なっていたため、日本市場においてはスポーツ性を求めるユーザーがカローラ店で2代目セリカXXを買い、ラグジュアリー性を求めるユーザーがトヨタ店やトヨペット店で初代ソアラを買うという傾向に二分化されました。

そしてメカニズムの面で目玉となっていたのは、クラウンやマークII3兄弟に採用されていた5M-EUに2バルブのままながらDOHCヘッドを載せた日本初の市販車用2リッターオーバーDOHCエンジン、5M-GEUの搭載。

最高出力はグロス値で170馬力(ネット換算では145馬力程度)と控えめですが、5M-EUがグロス145馬力だったので、当時の国産車としてはそれはもうハイパワーなエンジンだったわけです。

とは言っても、リトラクタブルライトの採用で空気抵抗の少なかったセリカXXのように、最高速200km/hオーバーとはいきませんでしたが、ラグジュアリー性を重視したソアラにとっては大きな問題ではありません。

なお、モデル末期には2.8リッターエンジン搭載の2800GTから、グロス190馬力を誇る3リッターDOHCの6M-GEUに換装した『3.0GT』がトップグレードになりました。

エンジンラインナップは他にSOHCターボのM-TEU、1G系がDOHC、SOHCとあり、いずれも直列6気筒2リッターエンジン。

初代は排気量に関わらず全長4.655mm、全幅1,695~1,690mmと5ナンバー枠に収められているため、現在の視点で見ると意外に小さく見えるかもしれません。

 

初代トヨタ ソアラ /  出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60010493/index.html

 

また、比較的小さく軽いボディーに余裕あるエンジンを搭載した2800GTなどは、ホールド性の高いスポーティなバケットタイプのシートと合わせ、快適な高速長距離クルージングを約束してくれたことでしょう。

 

最先端の高級パーソナルクーペの名に恥じない、数々の新装備

 

初代トヨタ ソアラ  / Photo by Iwao

 

その他、初代ソアラが初採用となったものも含め、魅力的な装備を羅列すると以下のようになります(大抵は上級グレードのみ)。

・タッチパネル採用のマイコン式オートエアコン

・走行可能距離や目的地到着時刻を自動演算するドライブコンピューター

・オーバードライブでもロックアップを行う2ウェイオーバードライブつき4速フルオートマチックミッション

・ライトの消し忘れなどを知らせる音声警告機能、エレクトロニックスピークモニター

・車速維持が可能な初期のクルーズコントロール

回転数感応型パワーステアリング

4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ

・「白よりも白いボディカラー」、スーパーホワイト

・電子制御4速AT「ECT」および、エンジンとの統合マネージメントシステム「TCCS」

デジタルメーター

・後輪のみのABSでアンチスピンの役割を果たす「ESC」

・電子制御サスペンション「TEMS」

・小型ブラウン管によるマルチファンクションディスプレイ「トヨタ エレクトロ マルチビジョン」

 

黎明期のJSSでは土屋 圭一も激走!最高速トライアルではトラストが大台突破!

 

1984年のJSSで土屋 圭一が駆った、グレーザージャパンオートソアラ  / 出典:https://www.youtube.com/watch?v=d_yMcMJJzYE

 

既に説明したように、メカニズム面での共通項が多いセリカXXの方がスポーツイメージは高く、実際に『スープラ』の名で販売されていた海外ではラリーやツーリングレースでの実績もあるようですが、日本国内では少々事情が異なります。

やはり人気車種ということもあってか、あるいはロングホイールベースでの高速安定性寄与が評価されたのか、レースや最高速トライアルで主に使用されたのは初代ソアラでした。

中でも活躍したメジャーイベントが、主に富士で開催されたJSS(ジャパン・スーパースポーツ・セダンレース)で、グループ5仕様スーパーシルエットレースの後継として、グループAより内外装、メカニズムともに格段に改造範囲の広かったカテゴリーです。

レース名とは裏腹にセダン以外でも参加できたため、初代ソアラも参戦。

まず1984年には、坂東商会の『グレーザージャパンオートソアラ』が土屋 圭一のドライブで4戦出場し、完走2回、最高位8位を記録します。

そして、続く1985年には『ヒロスーパーシルエットソアラ(または「ヒロモーター・ソアラ」)』で下岸 史典が8戦出場、完走4回で最高位は6位でした。

そんな1984年から1994年まで開催されたJSSの歴史の中で初代ソアラが参戦したのはこの2年のみで、上位に入るほどでの戦闘力は持ちませんでしたが、当時大人気のトヨタ・ハイソカーとしての出走で、ある意味では『花形の1台』だったと思われます。

 

 

そして実はJAFが公開している公式リザルトに掲載されている歴代ソアラの実績はこれがほとんどで、唯一の例外が1981年の西日本フレッシュマンレース後期、第2戦の予選に細川 文生が『オートウェストソアラ』を走らせたケースです。

以降、4代目ソアラが2006年からSUPER GTに参戦した時には、既にレクサス SC430と改名していたので、ソアラの名が公式レースのリザルトに刻まれた期間は、ごく短期間に終わりました。

ただし、それとは別に谷田部(日本自動車研究所旧テストコース周回路)で頻繁に行われていたチューニング系自動車誌などの最高速トライアル企画では、チューニングベースとしてうってつけな直6大排気量マシンとして活躍。

中でもMZ11(初代ソアラ2800GT)をベースにトラストがフルチューンしたマシンは最高速312km/hオーバーを記録。

空力的に不利なソアラで300km/hの大台を突破したことから、トラストの名声を一気に高めることになりました。

 

主要スペックと中古車相場

 

初代トヨタ ソアラ / Photo by Mark van Seeters

 

トヨタ MZ11 ソアラ 2800GT-EXTRA 1981年式

全長×全幅×全高(mm):4,655×1,695×1,360

ホイールベース(mm):2,660

車両重量(kg):1,300

エンジン仕様・型式:水冷直列6気筒DOHC12バルブ

総排気量(cc):2,759cc

最高出力:170ps/5,600rpm(グロス値)

最大トルク:24.0kgm/4,400rpm(同上)

トランスミッション:4AT

駆動方式:FR

中古車相場:110万~269万円(各型含む)

 

まとめ

 

初代トヨタ ソアラ / Photo by Moto “Club4AG” Miwa

 

高級車といえばSUVやミニバンが全盛期を謳歌する現在とは全く価値観の異なる時代で『カッコ良くてパワフルで豪華』というだけで、高級パーソナル2ドアクーペが売れてしまう、それが1980年代という時代でした。

その後1990年代以降は価値観の多様化も進み、自動車のブームも目まぐるしく変わっていきますが、初代ソアラの頃は『トヨタが1960年代に確立した、豪華装備でユーザー満足度を引き出すデラックス路線』の集大成だったと言えます。

2代目でキープコンセプト、3代目から実質的にレクサス車となり旧世代のソアラは2代目までで終わってしまいますが、2017年にデビューしたレクサス LCを見ていると、『大排気量2ドア高級ラグジュアリークーペ』という意味では、初代ソアラの再来と言っても過言ではありません。

高級車をレクサスに譲ったトヨタブランドで、ソアラのような車が発売されることが無くなってしまった現在。

それだけに初代ソアラは今でも遭遇した者の目を惹きつけ、魅了し続けるモデルなのです。

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