かつて、1970年代の日本で巻き起こったスーパーカーブーム。その勢いを支えた一台が、今回ご紹介するランチア・ストラトスです。ランチア・ストラトスを開発したのは、今やフィアットグループの一員となっているランチア。その開発目的は、「WRCを制覇するため」でした。
WRCを制覇せよ ランチア・ストラトスの誕生
ランチア・ストラトスを開発したのは、チェザーレ・フィオリオ率いるランチアのラリーチーム。後にフェラーリF1チームの監督となる彼は、「ラリー界で頂点を極めるための絶対的な強さを誇るマシン」を求め、開発プロジェクトを仕掛けます。
このプロジェクトには同じ自動車メーカーのベルトーネも参加しており、ランチアがコンセプトを定め、ベルトーネがランチアのエンジニアのアドバイスを受けつつ設計・生産を担当しました。
スタイルのベースとなったのは、1970年にベルトーネがトリノショーに出展したストラトス HFゼロです。
この時点でのシャシーレイアウトはMR(ミッドシップ)として完成していたものの、実際のラリーを制覇できる性能ではなく、ランチア側にとってはあまり興味の持てない車でした。
しかしベルトーネ側はHFゼロの量産化を望んでおり、実際の競技ではMRのほうが有利だという点を活かしてランチアと交渉。この車のスタイルを活かしつつ、「絶対的王者」たるマシンの開発を承諾させたのです。
そして「高い整備性」と「過酷なコースに耐えられる頑強な機構」、「高い運動性能」を条件としたランチアは、ベルトーネに設計と生産を依頼。その結果、モノコック構造のコクピットとその前後に備わったスチールフレーム、軽量な前後カウルが特徴的なボディが製造されました。
このボディ剛性によって、ラリー投入時も大きな補強をせずに戦うことができ、「過酷なコースに耐えられる頑強な機構」を達成。「高い整備性」を実現するためには、エンジンやトランスミッションを搭載する車体後部の骨格を作り込み、「高い運動性能」のために、フィアット X1/9と同様の高剛性サスペンションが採用されています。
これらは全てマルチェロ・ガンディーニがデザインしたボディに収められ、1973年のプロトタイプを経て完成。1974年にはグループ4の公認を得て、ストラダーレ量産期へと突入し、ついにラリーへと足を踏み入れることになりました。
ランチア・ストラトスの栄光
ランチア・ストラトスに搭載されたエンジンは、ディーノ246GTの2.4リッター V6エンジンです。
ストラトスのエンジンは、もともと高回転よりだったこのユニットの最高出力をラリー用に5ps落とし、回転数を200rpm下げた中低速寄りのものとなります。
さらにディーノ246GTからカムシャフトとクランクシャフト、ヘッドが変更され、最高出力は190ps/7,000rpmを発揮。MRのレイアウトにした影響で、全幅が1750mmもありながらホイールベースは2180mmと非常に短く、直進時の安定性を得にくい仕様となります。
ホイールベースは長ければ長いほど直進時の安定性を得られるため、ストラトスは直進時の安定性を犠牲にしてコーナリング性能に特化したマシンだと言えるでしょう。
ただ、あまりにも極端な挙動は多くのプロドライバーの課題となり、乗りこなすだけでも一苦労だったようです。
実際に挙動については、ミシェル・ムートンやビヨン・ワルデガルドなどのプロドライバーが、「全てのコースがコーナーであれば」と思ったほどだと明かしており、コーナーよりも直進時の方が気が抜けないマシンとなっていました。
その結果、ストラトスはWRCのタイトルを3年連続で獲得し、ターマックやグラベルを問わず、他の車を一切寄せ付けないほどの強さを誇ったのです。
ランチア・ストラトスのスペックと中古車価格
ランチア・ストラトスのスペック
ランチア ストラトス 主要諸元
●全長×全幅×全高:3710×1750×1110mm
●ホイールベース:2180mm
●重量:888kg
●エンジン種類:60度V6 DOHC
●排気量:2418cc
●最高出力:190ps/7000rpm
●最大トルク:23.0kgm/4000rpm
●駆動方式:横置きミッドシップRWD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/70VR14出典:【スーパーカー年代記 020】ランチア ストラトスはラリー制覇を目論んだ実戦向けスーパーカーだった|Webモーターマガジン
ランチア・ストラトスの中古車価格
ランチア ストラトスの中古車相場は、数は少ないもののレプリカが販売されており、価格は応相談となっています。
まとめ
ラリーで圧倒的な強さを誇ったランチア・ストラトス。
その栄光は日本のスーパーカーブームの礎を築き、今も語り継がれています。
異色のスーパーカーとも言えるランチア・ストラトスの記憶は、今も多くの人達に焼き付いているのです。
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