スーパーGTのGT300クラスに出場するマシンは、FIA-GT3、JAF-GT300、そして2015年からデビューしたマザーシャシーの3種類です。見た目はもちろん、特性の異なる3種類のマシンが競う点も、GT300を面白くするポイント。今回はGT300を戦う3種類のマシンを紹介しつつ、ARTA 55号車のメンテナンスを行うメカニックに、NSX GT3の特徴を聞いてみました。
Photo : Takanori ARIMA Text : Shingo MASUDA
スーパーGT GT300を戦う3種類のレーシングカー
まずは、ヘッドライトとゼッケンが黄色で統一されたGT300に参戦する「FIA-GT3」「JAF-GT300」「マザーシャシー」それぞれの特徴を紹介しておきましょう。
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FIA-GT3
まず紹介するのは、今回話を聞かせていただいたARTA 55号車 NSX GT3が属するFIA-GT3です。
FIA(国際自動車連盟)が規定するカテゴリーの一つで、スーパーGT以外でも世界中のさまざまなレースで使用されています。
その大きな特徴と言えるのが、市販されているということ。
価格は都内の分譲マンションが買えるほど高額ですが、レースに挑戦してみたい方は購入することが可能です。
JAF-GT300
スーパーGT独自の規定で開発されるのが、JAF-GT300(またはJAF-GT)です。
市販車をベースにしているという点はFIA-GT3と同様ですが、実態は純然たるレーシングカーで、市販はされていません。
エンジンパワーはFIA-GT3に劣るものの、改造できる範囲が広く、燃費やコーナリング性能では有利と言われています。
マザーシャシー
マザーシャシーは、上記のJAF-GT300に準じたレーシングカーですが、スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA)がエンジンやモノコックなどを開発し、販売しています。
一から開発しなければならないJAF-GT300と違い、初期投資額を抑えることを目的に導入されました。
特性はJAF-GT300と同様で、車両の最低重量が軽く、燃費やコーナリング性能に優れています。
過去のGT300には国産スーパーカーガライヤも走っていた!
現在はFIA-GT3であるNSX GT3でGT300を戦うARTA。過去には夢の国産スーパーカーとして大きな話題を呼んだASLガライヤをベースに、JAF-GT規定で制作された「ARTA Garaiya」で参戦していました。
2003年から2005年、そして2007年から2012年まで戦ったARTA Garaiyaは、何度も表彰台に上がる活躍を見せます。FIA-GT3である輸入車勢の攻勢が強くなる中、国産レーシングカーとして多くのファンを沸かせました。
ARTA 55号車 NSX GT3はこんなマシン
今回話を聞かせていいただいたARTAが、GT300で使用するのはFIA-GT3マシンであるNSX GTです。
FIA-GT3マシンは改造範囲がかなり限られているため、タイヤやブレーキパッド以外は、他チームのNSX GT3と大きな差はありません。
そのため、レースで勝つためには性能調整(BoP)やサーキットに合わせたセッティングはもちろん、より正確で確実な整備作業が求められます。
MR(ミッドシップ)のNSX GT3はエンジンを交換する際、車両の下からエンジンを抜かなければならず、サーキットのピット内でエンジンを交換するのは大変です。
実際に、2020年の最終戦では急遽エンジンを交換することになり、チーム総出で夜中まで作業を行うことで、決勝に間に合わせたそうです。
そんな状態でも、きっちりと決勝に間に合わせることができるレーシングメカニックには、頭が下がります。
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