GT500とGT300という、性能差のある2つのクラスが同時にレースを行うことで、常にエキサイティングなレース展開が繰り広げられているスーパーGT。今回はGT500とGT300の違いを改めてご紹介しつつ、GT300を戦うARTA 55号車に携わる現役メカニックに、GT300クラスならではの難しさと面白さを聞いてみました。
Photo : Takanori ARIMA Text : Shingo MASUDA

GT500とGT300の大きな性能差

ARTAでは、GT500を戦う8号車と、GT300を戦う55号車という2台のNSXを走らせていますが、見た目は同じNSXでも中身は全くの別物。誰が見てもNSXと分かる見た目ではあるものの、GT500を走るNSX GTは純然たるレーシングカーで、GRスープラやGT-Rと共通のモノコックが使われています。

GT300を戦うARTA 55号車の画像をもっと見たい方はARTA公式サイトもチェック!

対してGT300の55号車は、FIA GT3車両であるNSX GT3を使用。FIA GT3車両は、簡単に言えば市販されているレーシングカーで、エンジンやブレーキ、モノコックなどは市販車がベースとなっており、改造範囲が限られています。

つまり、レースをするために1から開発されたGT500と、あくまで市販車をベースにしたGT300。両者の性能差はエンジンの馬力以上に大きく、サーキットによっては1周10秒以上タイムが違うことも珍しくありません。
それほどの性能差を持つマシンが同時に走っていれば、GT500はレース中に何度もGT300を抜き、GT300は何度もGT500に抜かれます。

その結果、レースが膠着状態にならず、常にエキサイティングなレースが展開されるのです。

より市販車に近いGT300のマシン

クラスの違う車が混走する以外に、スーパーGTが面白いと言われる要因は、チームや車両によって差がほぼないということです。

特にFIA GT3車両であるARTA 55号車は、空力パーツやエンジンなど、ほとんどのパーツの改造が認められていないため、同じNSX GT3同士では、ほとんど性能の差はありません。

性能差が無いからこそ“仕事”で差が付くことも

では、何が勝敗に関わってくるのかと言えば、ドライバーのドライビング技術や戦略もさることながら、レース前のメンテナンスやピット作業といった、メカニックの仕事が大きく影響します。

「同じ車(NSX GT3)でもストレートスピードが違うんです」と話すのは、ARTA 55号車を担当する大木チーフメカニック。

もちろん、セッティングや戦略による差はありますが、ストレートでライバルよりも前に出られた要因の一つに、メカニックたちの“仕事の差”が大きく関わってくるのです。

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