レーシングカーがなぜ速いのか?その答えは、市販車に比べ軽い車両重量であること。しかし、車が軽ければ軽いほど地面とタイヤの摩擦力は低下してしまいます。そのため、レーシングカーは空気の力(空力)によって車両を地面に押し付け、タイヤのグリップ力を最大限発揮できるように設計され、この空力も市販車と大きく違うポイントです。
そこで今回は、ARTA 55号車であるNSX-GT3の空力について、今シーズンからARTA 55号車を担当する岡島エンジニアに話を聞きました。
Photo : Kiyoshi WADA Text : Shingo MASUDA

ドラッグの少なさこそNSX-GT3のストロングポイント

ホンダ NSXをベースとし、ミッドシップレイアウトのNSX-GT3。その見た目はいかにも“速そう”な印象です。
岡島エンジニア曰く、NSXは他車に比べドラッグ(空気抵抗)が少なく、最高速が出やすい富士スピードウェイでは有利とのこと。確かに、約1.5kmと長い富士スピードウェイのストレートでは、NSX-GT3の速さが際立っています。

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後方に向かって大きく広がった大型のリアディフューザー

また、車体下部の空気をスムーズに抜く役目を持つリアディフューザーも、NSX-GT3の特徴的なポイントなのだそう。市販車も含め、多くの車に装備されているリアディフューザーは、車両に対して真っすぐ後ろに伸びているものがほとんど。しかし、NSX-GT3のリアディフューザーは、後ろに向かって大きく広がっています。
2019年から投入されている“Evoモデル”では、フロントスプリッターとリアディフューザーの形状が見直されており、NSX-GT3のドラッグを減らす上で大きな役割を担っているのは間違いありません。

データに裏打ちされたNSX-GT3の空力

以前HPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)のエアロ開発エンジニアに直接話を聞く機会があったという岡島エンジニア。その際には風洞試験のデータも見せてもらい、データをもとにしっかりと仕上げられているということを実感したそうです。

制約のある中での戦い方に注目!

ARTA 55号車のNSX-GT3は、FIA-GT3に分類され、同じくGT300クラスを走るGT300(旧JAF-GT300)やGT300MC(旧マザーシャーシ)に比べ、改造範囲がかなり限られています。さらに、FIA-GT3はシーズン中にエアロパーツを変更することができず、“つるし”の状態がそのまま戦闘力に反映されます。
つまり、得意なサーキットと苦手なサーキットが車の空力特性によって異なり、許された調整範囲の中で、いかにネガティブな要素を潰しポジティブな要素を伸ばすか。また、チームやドライバーによってセッティングは異なります。そのあたりを比較してみるのも、スーパーGTを楽しむ見どころポイントです。

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